4:転生直後の俺と姉ちゃん・1
転生した、と気付いた主人公と姉。
ヒュルトユウリは3歳。
姉・ベリエットは5歳。
ちなみに、これから先で2人の前世の名前が出るかどうかは分からないので、2人の名前をここで書いておきます。覚えておかなくても大丈夫です。
ヒュルトユウリ→前世・雄介。(享年15歳)だから転生しても「ゆうちゃん」
ベリエット→前世・里江子。(享年17歳)
3歳の時に俺はふと気づいた。アレ? 俺、小さくなってねぇ?
「ここどこ?」
そんな甲高い声が聞こえてそっちを見れば、白い髪と藍色の目の幼女。……えっ、誰コレ。と思ったが目が合った瞬間、解った。
「姉ちゃん」
「ゆうちゃん?」
同時に互いを呼びかけて記憶が雪崩れ込んできた。色々情報が脳内を駆け巡って衝撃をやり過ごすので精一杯だったが、衝撃が去った後には素直に受け入れられた。
「姉ちゃん、異世界転生しちゃったね」
舌っ足らずに俺が言えば、姉ちゃんもコクリと頷く。3歳児の発言では無いがこの際其処はどうでもいい。姉ちゃんと色々話し合って、姉ちゃんは5歳。また2歳違いの姉弟として生まれ変わったようだ。それからかなり良いとこの子どもらしくて、日本語で話していた俺達の周りに使用人が何人もいる。ちなみに不気味に思われる……事が無いように、姉ちゃんとはコソコソ内緒話をしていたので、日本語には気付かれていない。
記憶を取り戻して直ぐに内緒話で日本語に切り替えた。他人の気配には気づいたからな。その対応で正解だったらしく、俺達は仲の良い姉弟と思われていた。実際仲良しだけど。
そこから俺はまず姉ちゃんを守るために、出来る事はなんでもやった。勉強嫌いだった俺が率先して勉強をするのを姉ちゃんは、哀しげに見ていた。
俺が誰の為に勉強を頑張っているのか解ったのだろう。転生してまで姉ちゃんを泣かせるような状況に陥らせたくないのだ、俺は。
俺がここまで姉ちゃんに尽くす気になるのは、当然前世の記憶がある。
俺達の親父が浮気していた頃。俺はちっともそんな事には気付かずに姉ちゃんに虫を見せては泣かせまくっていたのだが、その裏では旦那に浮気されてイライラしていた妻……つまり俺達の母親が物に当たっていた。良く物が壊れていたのだ。幼い俺は分からなかったが、それは姉ちゃんが俺に母親のそんな姿を見せなかったからだった。
俺が中学に入学する直前で離婚した母親がストレスを解消したから、物が壊れる事は無くなった。その時になってようやく俺は、良く物が壊れるなんて不良品だなぁ……と呑気に考えていたのが、母親が物に当たっていた事に気付いた。同時に不自然なくらいに俺を抱きしめる姉ちゃんを思い出す。
アレは物に当たっている母親を俺に気付かれないように守ってくれていたのだ、と。何故なら姉ちゃんは俺に「私に抱きしめられる時は必ず耳を両手で抑えてね」と小さい頃に教えたからだ。小学校卒業まで姉ちゃんのその教えを守っていた俺には、母親が物に当たる音が聞こえて来なかったから。
母親が離婚してストレスから物に当たる行為をしなくなって初めて、姉ちゃんは俺に「もう耳を抑えなくて良いからね」と安心したように笑っていた。
中学生になって色々な事が解った頃、俺は揶揄い続けて泣かせて来た姉ちゃんに守られていた事に気付いた。あれだけ俺に泣かされてもその小さな身体で俺を守ってくれていた姉ちゃんを、今度は俺が守ると決めた。転生したってその気持ちは変わらない。
そんなわけで手始めに勉強を頑張った結果、跡取りとして優秀になり剣の稽古も実践で戦っても大丈夫なレベルにまで腕が上がり、ついでに魔法もかなりの実力を伴ってしまったので、使えるヤツと判断されてしまった。空気もちゃんと読める上に相手が何を考えて求めているのかを考えられるようになったから余計なのかもしれない。
おかげで現在の俺は王太子の側近になれ、とお願い……もとい脅迫される日々を送っていた。
えっ? 婚約者? んなもん、姉ちゃんが結婚して子どもを何人か産んで、その子を引き取るつもりの俺に必要無い。もちろん、今の両親は小さな頃から俺に婚約者を宛てがおうと必死になっていたが、悉く断り続けてきた。何しろ令嬢に会う前に回避してきたからな。
「姉上より美しく優しく賢く私を思ってくれるご令嬢など居るとは思えませんので、私に婚約者は不要です。姉上の子を引き取って養子にすれば跡取りも問題無いでしょう」
の一点張りだ。おかげで両親や使用人は元より社交界でも有名な姉大好き人間である。別に不名誉だとは思っていないので気にならない。そんなわけで俺は跡取りだが婚約者がいないという一点に限り身軽である。
だが、あのバカヤロウは。ランスベルトは婚約者が居るというのに、正妃より先に愛妾を迎えるって何を考えているんだ、バカとしか言えない。婚約者が居なければまだ良かった。せめて姉ちゃんとの婚約を解消してから迎えろよ! と拳丸めて殴り付けたい。姉ちゃんを泣かせるヤツは誰であっても痛い目に遭うべきだ。
どうでもいい裏話。
前世の2人の父親は雄介が5歳くらいの頃から時々浮気をしていた。相手は別。
付き合って別れてを繰り返した挙げ句、雄介が高学年になった頃に年単位で付き合う恋人が出来て、その女と一緒になるために離婚に応じた。(それまでは母親が子どものため、と離婚しなかったが、段々別れる方に気持ちが傾いて離婚した)
次話は転生した事に気付いてから現在までのベリエットを弟視点で。




