38:前世からのオヤと決着
王妃への仕返し最終話です。
明日以降は王妃は出て来ません。仕返しが終わるまではバイスルークの執務室に居ますけど、口を挟む事すら有りません。(あくまでも予定)
正直、あの母オヤが素直に罰を受け入れた事が驚きだ。前世は気分で俺たちを可愛がって気分で俺たちを怒鳴った。オヤジとの結婚生活ーーそして離婚の影響なのか元々の資質か。今となっては尋ねたいとも思わない。ただ俺たちに会いたかったはずなのに記憶が無かったからとはいえ探す事もせずに同じ事を繰り返すその愚かさは、憐れにも思えた。人は過ちを繰り返すとは良く言ったものだ。今更親子の情が沸いたわけでは無いが一つ思ったのは、親子だった時にもう少しだけ歩み寄って話し合ってみるべきだったのかな、と。それだけは悔やまれる。それがやれていれば何か変わる事があった……かもしれない。
「それにしても陛下も甘いよな」
姉ちゃんの隣でポツリ呟いた俺の言語は日本語で。あの母オヤには聞こえなかっただろうから姉ちゃんだけが聞こえたはずだが。姉ちゃんはチラリと俺を見た後、王妃サマに近づいてその耳元に何かを囁いていた。
「そんな」
「本当です」
「だっていつも通り何も変わっていなかったわ。それにどうしてあなたがそんな事を」
「……酷く後悔しているのです、あの方は」
姉ちゃんは痛ましげに目を伏せてから更に何かを囁いてそれで終わらせた。姉ちゃんから後で聞いた説明によれば。
「毒杯を与える事にしたのは陛下の恩情なのよ。そう言ったの」
「そりゃそうだろうけど甘いな、とは思ったけどなんでそれをわざわざ伝えた?」
「陛下は後悔されているから。自分に油断があったから前王妃殿下を死なせてしまった、と。だからこそ幽閉でも受牢でもなく毒杯を与える事にした」
「でも、それはあの女の所為で陛下の所為では無いだろう」
「薬を盛られてそれに気付かなかった。それは陛下の中ではご自分の失態なのよ。まぁまさか毒味役が買収されているとも思わなかったとは仰っていたけれど。それでも結局自分の油断が招いた事だから……と恩情をかけた事を話したの」
それと……と付け加えられた事実に俺は言葉を失った。姉ちゃんは「だからこそ、の退位だと伺っているわ」と悲しげに呟いた。それが真の理由なら……と俺はこの話を聞いた時、何も言葉が出てこなかった。
俺ですらそうだったのだから姉ちゃんから聞かされた王妃の心情はどうだったのか。
俺に分かるのはこの仕返しが終わった後、あの女自らが毒杯を断り城内の中にある牢のうち凶悪な輩だけが入る独房を望んだ事にその後悔を見たような気がした。
そしてその望みは退位された陛下ではなく新しく国王陛下に即位する直前のハルトリッヒが承諾した、と後に聞かされた。国王に即位する前に良いのか? とは思ったが、逆に即位をしてしまうと恩赦が発令されてしまうから……とのことだった。余談だが、ハルトリッヒは即位と同時に婚約者であるマリアンヌ様と結婚した。それが近年の国を挙げての慶事と言えた。ランスベルトの側妃の輿入れは国全体の慶事とは言い難かったから。
そんなわけで二転三転しましたが、最終的に王妃自らが毒杯を断り牢に入ることになりました。
ベリエットとヒュルトユウリが望んだ仕返しが幽閉。
国王陛下が望んだ罰が毒杯。
反省はしていないだろうけど(何しろ気分次第で気持ちがコロコロ変わる女性なので)後悔は少しだけしていたので、その反省から王妃が望んだのが凶悪犯が入る牢。そしてそれを認めたのがハルトリッヒ。
牢で反省するかどうかはともかく。人生を省みるのでは無いかなぁ。一生を牢で過ごす……と思われ。多分。
次話はランスベルト視点の予定。モールナはまだまだ脳内花畑なので言い聞かせるのが大変だと思われ。




