37:王妃の座に就けたのは……〜テルナル〜
前世から上昇志向の強い王妃サマは、転生して記憶が無くても根本的な部分は変わらなかったよ、という余談。
まさかまさかまさか! あの事を持ち出して来るなんて陛下が許可されるなんて思わなかったのよっ。だってこれが公になったら陛下は……
「陛下は引き換えにハルトリッヒに王位を譲る事を了承している。そのための引き継ぎもかなり進んでいるようだからな」
雄介……。あなたと里江子が2人がかりで私を責めるというのね。
「さぁ。前世からの親子関係に決着をつけましょう、お母さん」
……日本語で里江子が言う。もう言い逃れは出来ないらしい。どこで間違えてしまったのかしら。前世でこの子達を失った時? 生まれ変わって陛下に王妃の座を強請った時? ランスベルトとベリエットの婚約を取り付けた時? ランスベルトとモールナの結婚を認めた時? それとも……
「全てが間違いだったのかしら」
呟いた言葉に「ええ、そうよ」と里江子は、ベリエットはアッサリと肯定した。
「母上が父上を脅したって何のことだ!」
ランスベルトの声が聞こえてくるけれど私はもう何も言わなかった。
「ランスベルト。現王妃は前王妃……つまり私とハルトリッヒ兄上の母にあたる方だな……がご存命中に父上を酔わせてそこに媚薬を混入して父上の意識が混濁しているところで無理やり父上と関係を持った。それを盾に側妃に迎えるように父上に迫ったが、父上は我らの母上を愛していたから跳ね除けようとした。だがお前の母は自分が清らかな身体だったのに責任を取らないつもりか! と俺達の母上の前で詰ったそうだ。母上はそれを聞いて父上を責める事なく、それどころか自分が居れば父上の立場が辛くなる、と自ら死を選ばれた。父上はそんな母上の姿を見て母上の死を無駄にしないために、お前の母を王妃に迎えたんだ。私とベリエの婚約に割り込んだのも、今回お前がその愛妾と結婚出来たのも、全てお前の母が陛下を脅したからだ」
ああ……私の罪が暴かれた。ランスベルトにだけは知られたくなかったのに。バイスルーク。何故ランスベルトに真実を話したの……。ランスベルトに知られないためならおとなしく罰を受け入れたのに……。
「そんな……母上、嘘ですよね? そんな母上が卑怯な真似をなさらないですよね?」
ランスベルトの必死な様子が胸に痛い。だからこそ私は何も否定出来なかった……。
「王妃・テルナル。あなたの罰は陛下にご裁可をもらっています。王妃の称号剥奪。実家である侯爵家も此度の一件に胸を痛めているので勘当処分。よってあなたは平民の身分ということになります。平民が王族を陥れて脅した罪は晒し者にした後首を刎ねる事が通例なれど、陛下の温情により減刑され杯を与える事にすると決定されました」
淡々とした声の里江子。告げられた内容に陛下が本当に私を捨てる決意を固めた、と知った。杯を賜わる……つまり毒を呷るのね。私は全身から力が抜けていくのを感じた。
「最後に言いたい事はあるか」
ハルトリッヒの素っ気ない口調だけど私はこれだけは……と口にした。
「手段は間違ったけれど。私はただ陛下をお慕いしていただけでした」
だから公務も貴族達の足の引っ張り合いも何もかもをがむしゃらに頑張ってきたのですよ、と伝えたかった。ランスベルト。さようなら。里江子・雄介さようなら。
そんなわけでテルナルの処罰が決定しました。上昇志向が強い所為で重めの罰に変更となりました。
さて次話は多分ヒュルトユウリ視点の予定です。




