36:何故かこの場に呼ばれてしまった〜トホルス〜
何故かトホルス視点です。
いや、トホルスが仲間外れなのがちょっと可哀想かな……って思ったので。
仕返し開始。
それは一通の手紙から始まった。
寄越した相手はヒュルトユウリ。
内容は簡単に仕返し始めるから立ち会うか? というもの。ベリエをあんな目に遭わせたヤツらだからもちろんだ、と立ち会う事にした。久しぶりに会ったベリエが笑顔なのに目が笑っていなくて少し怖かったが、でも生き生きとしたベリエが可愛くて何より生きようとしているのが嬉しかった。
「トホルス」
「ん?」
「きちんと言ってなかったわ。私を治してくれてありがとう」
〜〜〜っ。こんな時にそんな可愛くお礼を言われてしまえば熱くなる頬を隠しきれない。
「……ああ」
そう返すのが精一杯だ。クスリと笑い声が聞こえてベリエが俺を可愛く微笑んで見ている。ああ、諦めたくないな、と思ってしまった。
だが今はそれどころじゃない。
改めて気を引き締めたと同時にハルトリッヒの侍従に連れて来られた3人がやって来た。此処は城内のバイスルークの執務室。他の場では誰の目に止まるか分からないし、普段あまり立ち入らない場所に王子3人と王妃が立て続けに行けば何かある、と言っているようなものという事でバイスルークの執務室に決まったらしい。
バイスルークの執務室なら王子が集まろうが王妃が居ようが違和感など無いし、ハルトリッヒほど人の往来は無い。成る程ベストな場であった。
「ハルトリッヒ兄上。バイスルーク兄上。何故私と母上とモールナが此処に呼び出されたのですか? しかもベリエとヒュルトとトホルスまで……」
少々困惑しているランスベルトの声にハルトリッヒがチラリとヒュルトユウリを見た。その視線を受けたヒュルトユウリが低い声音と温度の無い視線でランスベルトを責め立てる。
「それは、ベリエ姉上に対する侮辱行為への制裁だな」
「侮辱行為⁉︎」
「言っておくが陛下に助けは求められないからな」
ランスベルトは怪訝そうな表情だが王妃はブルリと身体を震わせ「そんな……」と呟いた。モールナとかいう娘は何の話か全く分かっていないようだ。
「ランスベルト。お前は正妃を迎える前に愛妾を迎えた。それは婚約者であるベリエット嬢への裏切りだ。そして侮辱行為だ」
ハルトリッヒが静かな声で宣告する。ランスベルトは言っている意味が分からないのか「は?」と目を瞬かせた。それを無視してベリエが王妃に笑いかけた。
「さぁ、あなたから仕返しをさせてもらいましょうか。ねぇ? 王妃殿下?」
ふふふ、と可愛らしく笑うベリエだが放った言葉は王妃を震え上がらせる程度には恐ろしいらしい。
「あなたの罪は、先ずは私とルークの婚約に横槍を入れた事ね。私達の間に恋愛感情は無かったけれど、本来国王陛下が決定された事に対して王妃であっても口出しする権利など無いの。それを口出しした挙げ句自分が産んだランスベルト可愛さに強引に婚約を締結させた。陛下はあなたの剣幕に面倒くさくなって婚約を締結した、と言ってらっしゃったからずっとそうだって思っていたけど。真の理由を口にする事は陛下にとって屈辱だったでしょうね」
ベリエの言っている事が真実なのか、王妃は真っ青な顔色が白く変わりつつある。ベリエとバイスルークが本来なら婚約する予定だった事は知っていたが、真の理由? なんだそれは。
「お父様が陛下の名誉に関わる事だから……と長い間黙っていて下さったけれど、今回の私に対する王妃サマの仕打ちに陛下の許可を得た上でお話し下さったわ。……王妃、あなた陛下を脅したのね」
一段と低くなったベリエの声。まるで氷で出来た部屋にいるかのようにこの執務室が冷えた。……俺、この場に立ち会って良かったのかな。部外者感があるんだが。
仕返しするにあたり、先ずは何故仕返しをされるのか明らかにしなくてはならないので王妃から仕返し理由を述べてます。
話が進まなくてすみません……。
次話は王妃かヒュルトユウリの予定。多分。




