28:気弱ってなんだっけ?〜ハルトリッヒ〜
ハルトリッヒのみの視点です。
今度は王妃をどうするか、という話です。
ランスベルトへの仕返しを嬉々として語っているベリエを見て私は「気弱」ってなんだっけ? と内心首を捻っている。……いや、間違ってはいない。ベリエの仕返しは客観的に見ても常識の範囲内。イシャリョウなんて分かりやすいし公平だ。おまけに執務はベリエが代わりに行っている、と噂されていたのが真実だと分かったのだからそれをやらずにランスベルトに行わせるのも間違っていない。寧ろベリエに任せっきりというのは未だ“婚約者”でしかないベリエに何をさせているんだ、あのバカ異母弟は! と怒りが増した。
それでも。
「気弱」の意味を考えてしまう程、ベリエは変わってしまった。……いや変わってしまったというのは語弊のようで、元々はこういう性格だ、とヒュルトは言った。まぁベリエがこんな性格なのは面白いと思うし、良い方に変わったのだから文句も無い。だがその一方でルークはこの変化に馴染み切れるのか心配だった。
私の弟がベリエを好きなのは側から見ても分かりやすかったのであまりの違いに嫌悪してもおかしくないはず。……だと思っていたけれど変わらずに熱い視線を向けている時点で杞憂に過ぎない、と判断した。それが判ったので思考を切り替える事にした。
「とりあえず、父上には早い所ベリエとバカ異母弟の婚約白紙を公表させるよ。もちろん理由は正妃より先に側妃を迎えたという事で」
私の発言にベリエは晴れやかに微笑んで次の話をしましょう、と言った。……気弱ってなんだっけ?
「モールナという娘と王妃だな」
ルークが言えばヒュルトがすかさず口を出した。
「王妃が先だな。もし本当にあれが前世のババァなら俺と姉ちゃんを言い包めようと必死になってくるからな。前世を引き合いに出して親子の愛情とやらを全面的に推してくる。ハルトとルークにも義理とはいえ親子の情に訴えてくるぞ。いや、母親違いとはいえ弟なのだから、とそっちの情にも訴えてくるな」
と断言してくる。そんな情に流される程王族は甘くないのだが。だが確かにあの王妃はそういう性格だ。だから全員の認識を共有することが大切だと私も理解した。
「では、王妃は」
俺が切り出せばルークが冷たく応じた。
「あの女は一応政略結婚。簡単に離縁するわけにはいかないので離宮に幽閉にでもしておけばいいと思う」
「そうね。それに加えて国政にも外交にも王家についても一切口を挟めない事を罰とすればいいわね」
ねぇユウちゃん、とベリエはにこっと弟を見た。
「そうだなぁ。あのババァは世間体を気にする人だったから幽閉なんて絶対嫌だ、と文句を言うだろうし、一応自分は有能だって思っているところがあったから仕事が出来ないのはかなり痛手だろうな」
ヒュルトがアッサリと頷く。性格が変わっていないなら、表向きを取り繕うのは得意らしい。そして子どものため、と言いながら仕事に打ち込んでいるのが好きなのだ、と言っている。実際仕事は出来ていたようで有能だと自負しているのは、嘘ではないらしい。だから、王妃という仕事もきちんと務めているのだろう、とベリエもヒュルトも言った。
……まぁ確かに王妃の務めは果たしているのだから文句は言えないが。我が子可愛さに王家自らしきたりや法に伝統などを破るわけにはいかないのに暗黙の了解を得ている慣習を破っている時点で有能とはいえない。
そんな事を鑑みて幽閉は妥当と判断。
「じゃあ王妃は幽閉にするよう父上に進言しておく。国政にも外交にも王家のことにも口を出せないように添えて、な」
ベリエの笑顔に背筋が寒くなりながらも決断した。
お読み頂きありがとうございます。
そんなわけで王妃を幽閉にするよう、ハルトは国王に働きかける予定です。
明日はバイスルーク視点の予定です。
そろそろ他作品も更新再開したいと思いますので他作品を読んで下さっている方がいらっしゃいましたら、宜しくお願いします。
また短編【元の世界に帰るため子どもを産みます。】が日間1位になってました。ありがとうございます。面白い作品をランキングから探そうと思ったら気づきました。こちらの男性視点を読みたい方がいらっしゃるようなら活動報告にご連絡下さい。需要があるか分からないので……。
では、また明日。




