23:聞いてはいけなかった〜テルナル〜
テルナルって誰⁉︎
って思いましたよね。王妃の名前です。
ああ。私の可愛いランスベルトが可愛いお嫁さんを連れて来てくれたわ! ベリエットには悪いけどランスベルトが好きになった子と結婚するのがランスベルトの幸せなのよ。まぁあんな気弱な子が王子妃なんて務まるとは思えなかったし、丁度良いわ。でも光の魔力は大切よね。だからランスベルトもベリエットと婚約破棄しなかったわけだし。ベリエットも大好きなランスベルトと結婚出来て嬉しいでしょ。私もランスベルトに光の魔力を持つ娘とランスベルトが好きな娘を妻に迎えさせてあげられるし、丸く収まったわ!
これこそがランスベルトの幸せで私の幸せなのよ!
「……は……だけど」
ランスベルトがモールナと一緒にいる離宮へ行く前に寄り道をする。第一王子と第二王子の様子を見るためにね。私とあの子達は血が繋がっていないけれど、2人共私の子どもだもの。様子を見るのは当然だわ。でも話し声が聞こえて来たわね。ハルトリッヒの執務室だわ。
「だけど、婚約解消は陛下もお許しになっていないよ」
あら? バイスルークの声だわ。婚約解消なんて聞こえたけれど、バイスルークってばニルナーレと結婚したくないのかしら。それなら私が協力するわよ! そう言おうと思ったところで別の声が聞こえて足を止める。護衛は中にいるのかドアの外には誰も居ないから近づけた。
「あら大丈夫よ。ハルトもルークも解っているのでしょう? 陛下が私とランスの婚約を解消したくないのは、私が他国に行く事を恐れているから。希少な光の魔法を使える私を他国に行かせたくないのだもの」
これは、ベリエット。えっ? 何故ベリエットはランスベルトと婚約を解消するなんて言っているのかしら? あなたはランスを好きでしょう? もしかしてモールナがいるから? まぁ、なんて狭量なのかしら! 王子に側妃が居るのは当然なのに!
「それは俺も解ってる。だが父上は手強いぞ」
ハルトリッヒの溜め息が聞こえるわ。
「だから。交渉次第よ。ねぇユウちゃん」
ゆうちゃん……? あら? ゆう、ちゃん? 何かしら酷く懐かしいわ。
「姉ちゃんの言う通りだよ。俺の闇の魔法と姉ちゃんの光の魔法が陛下は欲しいんだからさ。俺たち姉弟が出て行かない代わりに姉ちゃんとランスベルトの婚約を解消すれば良い」
姉ちゃん? ああ、なんだか懐かしく聞くわね。どうしてかしら。
「まぁ陛下も本当は婚約解消を許したいはずだからなぁ」
ハルトリッヒの言葉に私は息を呑む。懐かしさなんて吹き飛んだ。えっ。今、なんて? 陛下も婚約解消を許したい……? 何故? どういうこと?
「まぁ兄上の仰る通りだね。いくら王子でも兄上に子が生まれたら臣下に降る男に側妃なんて有り得ないからね。ランスベルトが臣下になればあの娘はただの愛妾って分かっているのかな」
モールナがただの愛妾……。愛妾? そんなバカな! いくら王子が臣下に降っても側妃は側室になるだけで愛妾なんていう生まれた子が嫡子にならない日陰者の身になるわけがないじゃない!
「分かってないだろ。だからあの母親は勝手に結婚させたんだろうな。男爵家の娘じゃ身分差が有るって知らないだろうよ」
辛辣なハルトリッヒの声を聞いて私は息を呑んだ。……忘れてたっ。王子の側妃も臣下に降った側室も伯爵家以上で無いなら、愛妾と呼ばれる身だという事を!
「そうでしょうね。だからモールナ様を側妃だ、なんて言えるのよね。ランスベルト様も覚えていないのではないかしら。まぁ仮に思い出したからといって、さすがに我が公爵家の養女にして欲しいなんて恥知らずなお願いなんてしてこないとは思うけれど」
冷めた声のベリエット。この子、こんな声を出せたのかしら……。ああそれにしてもモールナをどこかの上位貴族の家の養女にしなくては!
「その点はもう手を打った。姉ちゃんを泣かせるようなバカに容赦はしない。ウチと第一・第二王子とその婚約者達を敵に回したくないなら絶対にモールナ嬢を養女にするなって言ってある。それでも養女にする度胸のある家なんかないだろ」
なんですって⁉︎ そんなバカな! 可愛いランスとモールナの将来を閉ざすなんて、いくら公爵家の嫡男でも許さないわよ!
「さすがヒュルトユウリだな。手回しが良い」
「当然だろ。前世からの姉を蔑ろにしてくれたんだ。きっちり落とし前はつけてもらうさ」
前世からの姉……。前世。ぜんせ。
ーーあ、ああっ! 私は何故忘れていたのかしら!
あの子達は里江子と雄介じゃないの!
という事で、王妃は前世の2人の母親です。予想していた方もいたでしょうかね。これから母親は痛い目を見ます。多分。
次話は多分ヒュルトユウリ視点です。
あ。愛を貫きたい……そうです。を読んでくださっている方がいらっしゃいましたら、後ほど今後の更新について活動報告にあげますので、そちらにお目を通していただけるとありがたいです。




