22:怒らせてはいけない……〜ハルト&ルーク〜
ハルトとルーク視点です。
怒ったベリエ襲来。
急ぎの手紙がヒュルトユウリから届いた。またベリエットに何かあったのか、とルークを呼ぶように侍従に伝えて急ぎやって来たルークと手紙を読む。そこにはベリエットが怒ったのでランスベルトとその側妃と王妃はどんな目に遭っても仕方ないと思うように書かれていた。
「何、コレ」
私が首を捻れば相向いに座る弟も珍しく不可解だ、と表情にありありと出ていた。
「同じ意見です。というかベリエが怒ったって知らせが来るのが分かりません」
それは私も同意見だ。ベリエットが今回の件で怒るのは当然の権利で知らせて来る意味が分からない。あれか? ベリエットは大人しくて泣き虫で怒る事が滅多にないから珍しく怒った事に驚くなよ。ってことか? とりあえずあまりにも素っ気ない内容の手紙だから首を捻る以外何も出来なかった。
***
兄上から急ぎの手紙が届いたと知って慌てて駆け付ける。愛するベリエに何かあったのかと思ったがベリエが「怒った事」が書かれていた。今回の件はベリエが怒って当然だと思うし、わざわざ書いて来た意味が分からない。結局怒ったところを見せた事が無いベリエが怒ったから驚くな、という忠告かと思った。
数日後。
私と兄上は手紙の内容を身をもって知る事になる。一体誰が思うだろう。ベリエが怒りのあまり、生死の境を彷徨って立ち上がる気力も無かったはずが、今まで以上に生き生きとした表情になっているなんて……。
***
「ハルトリッヒ様。バイスルーク様。ご面会したい、と言伝てがございます」
またヒュルトユウリから手紙が来るかもしれない、とここのところルークと共に私の執務室で仕事をしていると、侍従からそんな事を言われた。
は? 面会希望の先触れも無ければ私達2人って誰だ? もしやヒュルトユウリか?
「誰だ?」
「私ですわ」
勝手知ったる、と言わんばかりに侍従に問いかけた答えが執務室のドアを勢いよく開けて来た。……ベリエットだった。
「べ、ベリエ⁉︎」
叫んだのはルークで私は声も出なかった。確かに弱っていて立ち上がる気力すら無さそうだったベリエットがそこにいた。正直に言おう。えっ⁉︎ どうやってそこまで回復を? というか、礼儀やマナーに煩い公爵令嬢で気弱なベリエットが先触れも無く、許可無しに私の執務室に乗り込んで来た⁉︎ は? えっ? どういうことだ⁉︎
「あなたは下がっていいわ。私が話しておくから」
と、私の許可無しで私の侍従に命じている。この女性は誰だ? ベリエット、だよな? ベリエットに似た誰かじゃないんだよな?
***
兄上の侍従が兄上の許可無しに下がった。有り得ない。でも今のベリエを見てしまえば、ベリエの言う事に逆らえない気がするのは解る。正直驚いたけど、こんなベリエも良い。素敵だ。可愛い。と思ってしまう私の頭は多分もうベリエの言う事は絶対、なのだろう。
これで良いのか? と言われたら多分ダメなのだろうけど。第二王子ではなくバイスルークとしての私は、ベリエを只管に全面的に受け入れてしまうのだ。
驚いて声が出ない兄上とベリエの名前を呼んだ以外、何も尋ねられない私はにっこりと輝く笑みを浮かべたベリエに引き込まれてしまう。マリアンヌ様に一途な兄上でさえそうなのだから私がベリエに見惚れて視線を外せないのは、もうどうしようもないだろう。
そして、私と兄上はここで同時に悟った。ヒュルトが寄越したベリエが怒ったという内容の手紙の意味を。
「「ベリエが怒るってこんなにも怖いのか……」」
にっこり笑ったベリエのその目は笑っておらず、怒りを湛えていた。こんな目を初めて見たが、確かにこれではランスベルトもその側妃も義母にあたる王妃もどんな目に遭っても仕方ない、としか思えないものだった。
私と兄上はそっと目を見交わして2人同時に頷いた。
こんなベリエを見るのは、一度でいい。
これからベリエが何を言い出すのか私たちは知りたいような知りたくないような心持ちでベリエの言葉を待ったーー。
そんなわけで、ベリエが怒っているけれど、これからの話し合いは……ベリエがランスベルト・モールナ・王妃にどんな仕返しをするのか。というところです。そのうちヒュルトユウリも加わって4人で仕返し内容を話し合う事でしょう。
次話は誰視点かまだ考えてません。




