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14:天使が舞い降りた日〜バイスルーク〜

バイスルーク視点です。

いよいよ(というほどのものではない)次話はベリエットが目覚めます。

私がベリエットに出会ったのは3歳の時。父親である公爵に「ここで待っていなさい」と言われたところにジッと座っている姿を見かけた。何をしているのか問いかけると私を見てニコッと笑いながら雲を見ていた、と言う。それから名前を名乗ってくれたのだが、あの笑顔を見た時は天使が舞い降りたのだろう。と本気で思った。名前を聞いて違う事に気付いたが。

私は兄であるハルトリッヒより早くから活発に動き回り話せたし記憶力も良かった。それに気付いた私付きの乳母や侍女や侍従が私を王太子に据える動きを察した父上が、王位継承争いなどというくだらない上に面倒くさい状況にさせないために宰相や他の重鎮が居る前で「第一王子のハルトリッヒが王太子だ」と宣言してくれたので、面倒な事に巻き込まれなくて済んだ。もちろん文書にも記して教会と王家が保管している。宣言だけでなく文書にも残されている以上、私の周りの者達は国王に発言撤回を求めるのが難しい状況だと知り、私を王太子に据える事を諦めた。何しろ教会に保管される文書は特殊な魔法で管理されるため、その魔法を解除出来ない限り文書を傷つける事など一切出来ないのだから。身の安全を確保した私は、けれど生きている事そのものがつまらなかった。勉強も教養もマナーもダンスも王族としての心得なども全て1度見てしまえば覚えられたから。


齢3歳にして私の思考は人生を達観した老人並みになっていた。そんな時に出会ったのが天使……ベリエットだった。あの時から私は興味深いものに視線を向ける事が出来るようになった。その中で一番興味が持てたのはベリエットの事だった。ベリエットが登城してくる度に私はベリエットの側に居た。ベリエットも私のことを厭わしく思って居なかった。そんな日々を過ごしていたのだから、私とベリエットの婚約話が提案された。

私は一も二もなく頷いた。

もう天使だとは思っていないけれど。ベリエットが私にとって可愛い女の子なのは間違いなくて結婚出来るなら幸せだと思って。

それなのに。


私は別の令嬢を紹介されて婚約者だと言われた。どういうことか分からず父上に抗議すれば異母弟のランスベルトの母親である現王妃が泣き落としたらしい。巫山戯るなっ! と言いたかったが文書にはされていないものの宣言をされてしまったならどうしようもなかった。

私に出来るのは友人として未来の義兄としてベリエットを慈しむ事と婚約者となった少女を愛さなくても誠意を持って接して関係を良好に保つ事だった。


そんな日々を過ごして10年以上の月日が流れた。その間も私の気持ちは変わらなかったし、婚約者の女性にも密かに想う相手が居ると聞いて互いを慰め合ったものだ。彼女とは愛し合う夫婦にはなれずとも穏やかな家庭を築けそうだと思った。それからベリエットと弟のヒュルトユウリの秘密も聞いた。それには驚かされたけれど、だからと言ってベリエットの美しさや聡明さや優しさは変わらないからそれ以上は何も思わなかった。


そして。ベリエットが異母弟に恋しているのも知ってしまい、その日の夜は一睡も出来なかったが、それでもベリエットが幸せならば良いと思い込もうとしていた。


それなのに、あのバカ異母弟はベリエットの気持ちを蔑ろにした。正妃を迎えるより先に側妃を迎えるとはどういう事だ! 更には愛し合う2人が夫婦になるのは当然だ、と臆面もなく現王妃は言い放ったそうだ。政略結婚をバカにしているのか? 私や兄上も実の子であるランスベルトと同じように接している、とか言う能天気な現王妃に言ってやりたい。


「私の婚約に無理やり割り込んで来た挙句、この状況とは……現王妃もランスベルトも覚えておけよ!」


誰もいない自室で叫んだ私の耳にベリエットが自殺を図ったという報告が入った途端に私は殺気を放たずにはいられなかった。兄上からベリエットの様子を見に行くように、と言われたために私は一も二もなくベリエットの元へ向かった。そうして怪我自体は軽かったもののベリエットの意識が戻らないと知って王妃と異母弟はますます許し難い存在になっていた。

次話はヒュルトユウリ視点に戻る予定です。


ベリエットも成長させるつもりですが、暫くはメンタルが弱いままです。……多分。夏月が書く女の子って結構メンタル強い子が多いので、いきなりメンタルが強くなってる!


なんて事が無いように気をつけます。

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