13:王太子がやっと来た
ハルトリッヒ登場です。年の差があってもなんだかんだ仲良しな3人です。
「ヒュルトユウリ」
「ルーク。怖いから普通にしてくれ」
お茶を飲んでいるのに何を飲んでいるのか分からない感覚に陥るからヤメロ。
「ヒュルト。ベリエは……そんなにアイツが好きだったのか?」
「まぁバカの事をそれなりに好きだったとは思うけれど。んー、ハルトとルークなら話しても良いかなぁ」
「まだ何か隠しているのか?」
第三者の声がしてようやく待ち人が来た事を俺は知った。来るの遅いぞ、と視線を向ければサッと視線を逸らす。これが完璧王太子と呼ばれるハルトリッヒの姿だ。……いや、確かに完璧に近いヤツだがバイスルークのことを割と甘やかした挙げ句バイスルークに冷たい視線を向けられる弟バカだ。
「ハルト。国王陛下はなんだって?」
「挨拶も無くそれか」
「当家にようこそ、ハルトリッヒ王太子殿下」
慇懃に頭を下げて挨拶をすれば、ハルトが苦虫を噛み潰したようなカオで俺を見た。挨拶をしろ、と言ったのはそっちだ。
「まぁいい。父上は婚約解消を保留と言い切った。王妃と異母弟にはベリエの話はしていない。するだけムダだからな」
チッ。
王子が2人居ようと関係ない。俺は俺のやりたいようにやる。
「それで? 何を隠しているんだ?」
気を取り直したハルトが俺に先を促した。やれやれ。誤魔化されたか。
「俺と姉上が異世界から来た転生者って事は覚えているか?」
2人が同時に頷く。俺も頷いて溜め息を吐き出した。2人には軽く転生者で前世の記憶がある、という事だけ話してあった。そして今、詳しい事を俺は2人に打ち明けた。
「ベリエの前世がそんな酷い事になっていたなんて」
顔を青褪めさせてルークが言う。ホントお前、姉ちゃんが好きだね。前世だよ?
「成る程。だからヒュルトとベリエはそれ程までに仲が良いんだな」
それはそうだが、今ココで言うべき事じゃない。そして話の論点に気付け。俺が言いたいのはそうじゃない。
「だからさぁ。あのバカを好きだった気持ち以上に、前世での出来事を思い出したから、ここまでの状態になってしまった、と俺は考えている」
ハルトがハッとした表情になり、納得したように大きく頷いた。
「そうかもしれないな。こう言ってはなんだが前世で酷い目に遭い男にも酷い扱いをされ、そして今、ランスベルトに捨てられてしまい前世の記憶が蘇って発作的に自殺を図ったのかもしれない」
それなら分かる、とハルトは言っているが理解したならとっととあのバカとの婚約を解消出来るようにしろよ! 前世であんな目に遭わされて現世でもこんな目に遭わされて。俺達はただ普通に暮らしたいだけなんだぞ!
「とにかく姉ちゃんが目覚めた時にまた泣かれるのは勘弁だからな」
「……何語だ?」
俺が口を尖らせてハルトに言えばハルトが首を傾げた。おっと。日本語で文句を言ってしまったらしい。
「また泣かれると嫌だから早くあのバカを何とかしろって言ったんだ」
この国の言葉で言い直すが、ハルトが目を輝かせている。……あー。めんどくせぇ。絶対日本語に興味持ったな。
「さっきの言葉を教えてくれ」
「知りたいなら姉ちゃんを泣かせたバカをなんとかしろって言ってるんだよ!」
「ねえちゃん?」
ハルトが案の定食いついて来たから面倒くさくてつい大声で喚く。ハルトは更に姉ちゃんという単語に食いついた。……はー。しまった。
「姉ちゃんって言うのは、前世で俺が姉上を呼びかける時の呼び方だよ。お姉さんって言葉が丁寧な言い方。だけど前世じゃ男がお姉さんとかお姉様とかって丁寧な言い方はしなかった。姉上も昔は言ったみたいだがそれも何百年前も昔だからな。大抵は砕けた言い方で、男は姉ちゃんや姉貴って呼び方が多かったよ」
ハルトの知りたがりな性格は、とっとと説明しておく方がこちらのダメージが少なくて済む。昔、面倒がって説明を拒否したら説明するまでしつこく絡まれた。ハルトは俺の4歳上だというのに、幼児を見ている感覚になって本気で嫌だった。以来、とっとと説明する事にしている。
「特別な呼び方……。いいな。ズルイぞ」
ルークはルークでアホな事を言い出した。なんでコイツは姉ちゃんが絡むとポンコツな事を言い出すんだ?
「姉ちゃんが許してくれたらルークだけの呼び方でもすれば良いだろ」
「確かに!」
「言っておくが、姉ちゃんの意思を尊重するからな! 俺は姉ちゃんが嫌がる事は誰にもやらせないからな! あのバカくらいだ。姉ちゃんが嫌がる事をしたのは。本当痛い目に遭えば良い」
俺がブツブツ呟いたところへ、使用人からトホルスが来た事を知らされた。今日もトホルスは姉ちゃんの診察に来てくれたらしい。忙しいのに有り難い。
医師・トホルス再び。
次話はバイスルーク視点の予定です。
そろそろベリエットは目覚める……かもしれません。分かりません。でもそろそろ目覚めないとヒュルトユウリが報われないし、話も進まない……よね。




