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ラ部でぃーじぇー

執筆中の一つが煮詰まって長いので、抜粋編集して投稿。

『……お〇〇〇〇! ……ふぅ、いやいや真面目な話するところだったー。危ない危ない。唐突に下ネタに走らないと真面目なコメンテーター化するところだった』

「っぷ、くくくく……」

 家族が寝静まった深夜二時過ぎ。

 私は布団の中で、大好きな深夜ラジオを聞きながら声を押し殺しながら笑ってます。

 普段は下ネタとか好きじゃないですけど、深夜のラジオで聞くのはどうしてこんなに面白いんでしょう。

 ラジオはそのまま曲が流れ、ちょうどCMに入ったところでした。


 ――ガチャッ!

 唐突に部屋の扉が開き、誰かが入ってきたのです。


 恐る恐るイヤホンを外してドアを見ると――


「いつまで起きてるつもり?」

 ――お母さんでした。

「明日入学式でしょ。さっさと寝な」

 そう、明日は高校の入学式。

 当然、遅刻するわけにはいかないので、この時間は寝ていて然るべきな訳で。


「……でも……」

 私が大好きなこの番組は深夜一時から三時までに二時間番組。

 少し前に二時の時報が流れたので、まだ大体三十分は残っているわけです。


 私はそれがとても聞きたい。

 もっと言うとそろそろコーナーが始まる時間でもあるわけで。


「………………うん、もう寝るよ?」

 と言ったところで、お母さんはジト目で私を見て来るだけ。

 私が何しようとしてるかはバレてしまっている。


「……も、もう少しだけ……」

「寝ろ」

「あ、ははは……お母さんってば、昔懐かしガ〇ーさんみたいだね……」

「はよ寝ろ」

「〇オーさん、でもこの後コーナーが「寝ろ」はい」


 ガオ〇さん……もとい、お母さんが蝋燭とか持ってこないうちに、いそいそとラジオの電源を切り、布団にもぐります。



 ――……うぅ……聞きたかった。





 ~~~~~~~~~





「さーかえろー」

 入学式はつつがなく終わった。

 本当に寝坊して、初日から遅刻しかけたけど、無事に終わった。

 ――ほんとによかった……。


 流れ作業的にオリエンテーションが終了し、途中まで一緒に帰った友達と別れたところ。

 ――ちなみに帰りながら、二組の担任教師が某デュエ〇スト世界に出てくる人造人間サイ〇ショッカーにそっくりだったことをネタに大いに盛り上がりました。


 帰り道、ちょうど公園のそばに差し掛かったところで、何の気なしに携帯で時間を確認する。


「……………………」

 そのまま少し携帯を眺めて考える。


「家まで待てないなぁ……」


 この時、私の頭の中を昨日のラジオ番組が占めていた。

 ――せっかくのスマホアプリなんだし、どこでも聞けるという利点を使わない手はないんじゃないだろうか。

「でもイヤホンはない……」


 いくらなんでも平日の昼間に公園のベンチで、ド深夜ラジオを聞くのは流石に気が引ける。

 結構な下ネタ祭りの日もあるのだ。

 しかしここから家まで歩いて後、十分弱。

 今の所、どうしようもなくすぐ聞きたい欲求に襲われている。


「…………あ、後ほとんどコーナーだったし……いけるっ」

 私は公園に入り、ベンチに腰掛けた。

 軽く周りに人が居ないか確認し、ラジオアプリを開いた。




 約三十分後。

 途中流れる曲と広告を飛ばしながらラジオを聞き終えた私は、大声で笑わないよう口を押えながら、ベンチに突っ伏してました。

「くっふふふふ、今回神回……っ!」

 本当に昨日の夜に聞けなかったことが惜しまれる。

 昼間に聞いてもここまで面白いなら、深夜のテンションならもっとすごかったであろう。


「いやー……それにしても、ラジオパーソナリティはすごい」

 私はつい、気分が乗ってしまってそのまま勢いで独り言を呟いてみる。


「……コホン……まだ、少し涼しげな四月の風が吹く中、皆さんいかがお過ごしでしょうか。私は今日、日ごろの疲れを癒そうと、公園のベンチで座りながら、風に当たっていました。すると、ふと、遠くから子供たちの楽しげな声が聞こえてきました。少し気になって覗いてみると、まだまだ咲き始めの桜の木の下で、子供たちが楽しそうに遊んでいました。偶々かもしれませんが、その少し早いお花見に、私もつられて笑ってしまいました。――少しだけ、元気を貰えた気がします。…………………………なんて」


 ――今、私顔真っ赤です。

 今目の前にある光景をちょっとアレンジしてそれっぽく独り言を言ってみただけなんだけど、ふと我に返ってすごく恥ずかしくなった。


 子供たち普通に遊んでて、こっち見てなくてよかった。


 ほんと、何をしてるんだろうか私は。


「しかも普段はたまにしか聞かないような、綺麗なイメージのクリーン系のラジオ風にしてしまった。何故深夜ラジオ聞いた直後にこの独り言をチョイスしたか私」

 照れと後悔で顔を覆っていると、後ろの草むらからガサガサ聞こえた。

 何事かと目を向けると。


「お見事っ!!」


「うわぁ!」

 ポケモ……じゃない、女子高生がとびだしてきた!

 驚く私をしり目に、その女子高生は何やら感動した目をして、語りだした。


「ご無礼! 私は豊草高校三年、つつみみやこというもの。それはさておき、先ほどのラジオ風語り、聞かせてもらった!」

「え」


 ――聞か、れた……。


「というかその前の深夜番組を聞いてるところから見てました!!」

「げ」

 最悪の所から見られていた。

 というか、聞き始めたの三十分以上前なんですけど、そんな前から草むらに隠れて何してたのこの先輩は。


「先程のスムーズに文を口にできる才能! そして白昼堂々ド深夜番組を聞くほどのラジオ愛!! ぜひ! 我が『ラ部』に入部を!」

「ら、ラブ?」


「そう! ラ部! 『ラジオ部』通称ラ部! あ、裸の部でラ部じゃないから、そこは間違えないでね?」

「そんな間違いは決してしませんけど、なんでラ部なんですか?」


「ん? だからラジオ部、略してラ部」

「なんでですか!? 略すなら『ラジ部』かせめて『ジオ部』でいいじゃないですか!」


「うーん、ラジ部はラジコン部のが代表的だし、ジオ部は何年か前からジオラマ部が使ってるから……」

「ラジコン部!? ジオラマ部!? うちの高校って結構部活自由なんですね!!」


「ね。でもラジコン部は学校創立当初からあるかなり伝統的な部活で有名なんだよ?」

「ラジ部すごいっ!! ……と言いますか、普通に『ラジオ部』でいいのでは? 長い名前じゃないですし」


「ラジオ部は『ラジオドラマ愛好会』が略称として使い始めてから長いから、結構浸透してるの」

「元媒体を差し置いてっ!! そもそも部じゃない!!」

「まあ、ラジオドラマを制作する部じゃなくて、聞くのが好きな人が集まっただけだからね」

「どうして部をつけて浸透させたんですか!!」


「なんか、部を名乗れば、間違って部費を支給されるかもしれないってのを試みたみたい」

「詐欺目的!?」

「でもやっぱり貰えなかったみたい」

「部で浸透させた意味!!」


「というか、この部も結構な歴史があるの。なにせ初代部長が大々的に「私はラジオ部を愛しているわ! ラジオ部ラブよ! ラジオ部ラブ!!」と広めていたのよ。だからこそ、今もその伝統はうけつがれているわ!」

「違うと思います! 初代部長はまっとうな意味でラブって言ってたんだと思います! 決して略称でラ部って言ってたわけじゃないと思います!」


「……ふぅ……お嬢さん、そんなに軽々しく愛を語るものじゃないわ……」

「この話の流れでどうして!!」



「とーにーかーくっ。私達ラ部は――私は! あなたみたいな人材を探していたの!」

 そう言うと、先輩は一つ大きく深呼吸をし、改めて私の目を見て言った。




「私たちと最高のラジオ番組を作りましょう。パーソナリティは、あなたよ」




 先輩がそう言った瞬間、つむじ風が舞い上がり、咲き始めの桜の花を揺らした。

 舞い降りる桜の花びらが、一瞬だけ幻想的な雰囲気を作り出す中、私は口を開く。






「ごめんなさ「待って! 答えは待って! 明日新入生に向けた部活紹介があるから、それを聞いてからにして! おねがい! お願いします!」……はぁ」


 結局、私の返事は聞いてもらうことは出来なかった。


煮詰まった理由としては

オチが変動してとっちらかった。

恋愛要素が入っていたが、まるで進展しねぇ。

面白いラジオとは何ぞや……という思考の沼にはまった。


と言った所で。


この話は続きを書きたい。というかかなり中盤まで書いてるので頑張りたい……と思いつつ一年は経ってしまった。

このままでは黒いとりさんのようになりかねないので、短編として投稿。


……ちょっと未練。

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