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燐火の響き  作者: 壊れ始めたラジオ
えー、「愛」という字は、心がいろいろな感情に押し潰されそうになる気持ちのことを言います。
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後日談/セイなる夜、僕らは百合の話に花を咲かせる

前回は主役の最終回。今回は主人公の最終回。

「「「かんはーい!」」」

「あれ、二人ともお酒飲まないんですか?」

「私、未成年なんすよ……」

「私も……」

「あー」

「むしろ、シーカーさんが成人している事実に驚いたっすよ」

「私、ブラックアウトさんと同じくらいだと思っていました」

「いやいや、僕とブラックアウトさんは……あれ、いくつ離れているんだ?」

「そういえば、そうっすね……」

「僕は二十一歳です」

「ああ言っちゃうんすね。……私は、十七歳っす」

「……私は、十三歳です」

「「……え!?」」

「フォッグさん若っ!」

「ブラックアウトさんも充分若いよ……。二人に比べたら、僕なんてもうオバサン……」


 ゴールデンウィークのとある日、僕達三人は「華伊瀬(かいせ)亭」という旅館でまったりと作戦会議を行っていた。今後、第三者に追いかけられて、組織に迷惑をかけないように。

 ……ただ、その実態は単なる女子会。今も懐石料理をつつきながら、年齢の話で盛り上がっていた。そういえば、この二人について、ほとんどなにも知らないんだよなぁ……。僕も含め、みんな犯罪者だっていうのは知ってるけど。


「あぁ、ぴっちぴちの十代の裸が恋しい……。僕も二年前までは……」

「裸じゃなくて下着なら、今見せられるっすよ。はい」

「ちょっとそれ私が着けてたはずのものですよ! いつ!? いつ盗ったんですか!?」

「隙だらけっすよぉー。くんかくんか。いい香りっすねー」

「ひぃー!」

「なーんかいいねこの感じ。よし、撮ろう」


 ◆◆◆


「はぁー、極楽極楽」

「そうですね」


 懐石料理を堪能したあとは、露天風呂を楽しむ。僕もフォッグさんもすっかり腑抜けになってしまう。湯けむりを鼻から吸い込み、体の芯から浄化する。

 ……きっと犯罪に手を染めたこの心だけは、綺麗にならないけど。


「あれ、そういえばブラックアウトさんは?」

「脱衣所で女の子の下着を物色してますよ」

「お風呂入ったあとでもいいと思うんだけどな、それ……」

「大変っすよ二人とも!」

「あ、やっと来た」

「そんなことよりっ! なんと、今日ここに、赤石燐(あかいしりん)と夜ノ森響(よのもりひびき)の二人が泊まっているみたいっすよ!」

「どうして、わかるんですか?」

「フッフッフ……聞いて驚くことなかれっす。実は、脱衣所の空の籠から、その二人の残り香が香ったんすよ! これはもう、つい最近大浴場を出ていったとしか思えないんすよ!」

「よーし上がろうすぐに上がろう」


 ◆◆◆


「いた」

「いたっすね」

「いましたね」


 旅館の廊下で、客室へと入っていく二人を見つけた。


「どうしますか?」

「よし、ここはひとつ」

「なにをするんすか?」

「まあ任せといてって」


 僕は急いで一階の売店で缶ビールを買い、エレベーターに乗り込んでそれを飲みつつ、もといた四階に戻ってきた。


「お酒、飲んだんすか?」

「うん。じゃあいってきます」


 僕は空の缶ビール片手に、二人の入った客室の扉を乱暴に叩いた。


「ねぇねぇ開けれよぉ~! 僕が悪かった、悪かったからさ、もう許してよぉ~! ねえったらさぁ~!」


 呂律が回っていない風を装って叫びながら扉を叩いていると、勢いよく扉が僕を押した。


「ちょっと! ふざけないでよ! うるさいでしょ!」


 出てきたのは、夜ノ森響(よのもりひびき)だった。


「……うん? あれ、ユーリどこ?」


 酔っぱらいを演じる僕。


「……この人、酔ってるの?」

「酔って~……まへん!」


 敬礼のポーズで、なおもシラを切る。


「どうしたの、(ひびき)


 すると、部屋の奥から赤石燐(あかいしりん)がやってきた。二人とも、湯浴衣がよく似合っている。


「なんか、酔っぱらいが……」

「ん~……。ん? ……あ、部屋間違えちゃった。てへっ!」


 二人が部屋にいることを確認した僕は、手早く用事を済ませ、適当に離脱した。もちろん、千鳥足で。

 すぐ近くの角で曲がり、ブラックアウトさんとフォッグさんと合流。


「お待たせしました。さあ、僕達も部屋に戻りましょう」

「「……?」」


 ◆◆◆


「実は、二人の部屋にちょっと入って、こっそり小型カメラとマイクを放り込んできたんですよ」

「「おぉ~!」」

「さっそく、持参してきたこのモニターで見てみましょう!」


 僕にかかれば、ブライベートなんて言葉はあって無いようなものだ。


「これから、なにをするんですかね?」

「それはもう、熱く激しいピーでピー的ピーな感じの行為に決まってるじゃないっすか!」

「おぉ!」


 すると、一瞬画面に砂嵐が現れて、完全に暗転してしまった。


「「「……え?」」」


 僕ら、停止。

 再活動。


「ちょっちょっと待って、なにこれ!?」

「映らない。映らないっすよ!?」

「ど、どうしましょう!?」

「どうしましょうって言ったってなにがどうなってるのか……。電波状況悪いのかな~。ここ山の中だし。いやでもこれ結構いい値段した高性能のやつなのにぃぃ~!」

「……もう、いいです」

「「へ?」」


 先ほどのあわてふためいた声から一変して落ち着いたものになったフォッグさんの気配に、僕とブラックアウトさんが反応する。


「せっかく期待していたのに……。この落とし前は、お二人のカラダで……」


 それ以上は言葉にせず、僕らに手を伸ばすフォッグさん。


「「そ、そんなのって……」」

「ないよぉぉぉっ!!」

「ないっすよぉぉぉっ!!」


 そして、僕の意識は真っ白な霧に包まれた……。





















 おわり

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