表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
人でなしと最強少女のサディスティックなハーレム生活  作者: たかまち ゆう


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

33/82

第33話 障害物の消滅

「ドロシー、迂回しろ」

「先生、無理です。あの魔物は、魔法を放つタイプですよ」

「チッ。だったら、お前の魔法で消し去ってしまえ」

「分かりました」


 ドロシーは、馬車を停めて御者台から降り、巨大な魔物を見据えました。

 魔物は、こちらのことは気にする様子もなく、のんびりと歩いています。


「待って、ドロシー! あの魔物には、こちらを攻撃するつもりがなさそうよ? 気を付けて迂回すれば大丈夫よ!」


 私はそう言いましたが、ドロシーは首を振ります。


「駄目ですよ、スピーシャさん。あの魔物が放つ魔法の有効射程距離は、かなりのものです。安全に迂回しようとすれば、かなりの時間が必要です」

「でも、むやみに生き物を殺すのは良くないわ! それに、短期間に何度も戦えないことは、貴方だって同じでしょう?」

「そうですが……」

「何を話し込んでいるんだ? 俺がやれと言ったんだ!」


 彼は、苛立った様子で言いました。

 自分の命令がすぐに実行されなかったことが、気に入らないようです。


「はい! すいません、先生!」


 そう言って、ドロシーは両手を伸ばし、魔物に向けます。

 彼女の両手から、黒い霧のようなものが放たれました。


 ドロシーが放った霧は、地平線まで伸びて行き、全てを覆い尽くします。

 その霧が、地面に流れ落ちるように吸い込まれると、霧が広がっていた場所には、何も残っていませんでした。


 まるで、全てを洗い流したかのような、不自然に平たい地面。

 それが、目の前に広がっています。


 草木が残っていないことは、レミの魔法の時も同じでした。

 しかし、音も爆風も発生させず、ただ全てを消し去ってしまったことには、呆気に取られるしかありません。


「よくやった。いつ見ても、美しい魔法だ」

「ありがとうございます」


 褒められたドロシーは、彼に頭を下げました。


 少し遅れて、私の身体は自然と震えはじめます。

 自分の肩を抱くようにしましたが、震えは止まりませんでした。


 あの魔物の巨体が、音もなく、跡形も残さずに……消えてしまったのです。

 こんな魔法は見たことがありません。


 他の少女達が使っている魔法は、効力や破壊力が桁違いであるものの、同じようなものを使うことができる人間はいます。

 しかし、先ほどのドロシーの魔法は、他の人間には再現することができないでしょう。


「……御主人様。ドロシーの魔法も、御主人様が与えたものなのですか?」


 私は、恐る恐る尋ねました。


「当然だろう? この魔法だけは、俺が自分で考えた魔法だ」

「えっ……?」

「死体も残したくない相手を始末するなら、こういう魔法があった方が便利だからな」

「……!」


 彼の、あまりにも恐ろしい言葉を聞いて、私の全身は大きく震えました。


 人を殺しても、何の痕跡も残さない。

 魔法を使ったことすら、見ていない者に気付かれることがない。

 まさに、悪魔のような魔法だと言えるでしょう。

 彼は、それを意図的に生み出したのです。


「……御主人様。ドロシーは、この魔法を、人間に……」


 その先は、あまりにも恐ろしかったので、言葉になりませんでした。


「使ったことがある。当たり前だろう?」


 彼は、私のことを馬鹿にした様子で言いました。


 気が遠くなるような感覚に襲われます。

 私は、よろめいてしまいました。


「ねえさま、大丈夫?」


 マリーが、心配そうに尋ねてきます。


「……大丈夫よ。大丈夫だから……」


 私は、マリーを抱き寄せて、もっぱら自分を落ち着かせるために言いました。


「何だ、今さら? こいつらには、人を殺した経験ぐらい、あるに決まっているだろう? それがないのは、防御魔法しか使えないセーラだけだ」


 彼は、呆れた様子で言いました。

 どうやら、私が何にショックを受けたのか、理解できないようです。


 存在ごと消されてしまった、ドロシーに殺された人物。

 その力を意図的に生み出し、人に対して使うことを命じた彼。

 私には、全てが恐ろしいことだと思えました。


 ドロシーは、御者台に戻り、馬車を走らせます。


「やはり、この状態の道は快適だな」


 彼は、満足そうに呟きました。

 どうやら、乗り心地の良い馬車に乗ることは、彼がドロシーに魔法を使わせた理由の1つであるようです。


 ドロシーがあらゆる障害物を除去した地面は、馬車を走らせるには素晴らしい状態でした。

 せっかくなら、彼女達の全員に、快適に暮らすための能力を与えてあげればよかったのに……。


 彼女達の強大な力を、破壊や殺戮に利用しないでほしい。

 私は、心からそう思いました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ