第31話 ナナの活躍
私達は、彼の魔法で周囲を監視しながら、眠ることになりました。
といっても、やはり不安は消えず、なかなか眠ることができません。
そうしていると、唐突に彼が身を起こして言いました。
「ナナ、お前の出番だ」
「えっ……?」
慌てて周囲の様子を窺うと、少し離れた所から、数匹の魔物が、私達の様子を窺うようにしています。
おそらく、良い餌を見付けたとでも思っているのでしょう。
「任せて、お兄ちゃん!」
ナナは、ついに自分の出番が来て、嬉しそうでした。
実の兄、ということになっている彼のために戦おうとする彼女のことが、とても不憫です。
彼は、魔法で強い明かりを生み出しました。
魔物達は、目が眩んだ様子で、苦しそうに鳴きます。
ナナは、光を背にしながら、魔物達の隙を狙って走り出しました。
最初の1匹の後ろに回り、ナナは尻尾を掴みます。
彼女は、まるで地面から草を引き抜く時のように、魔物を引っ張りました。
そして、身体が宙に浮くほどの勢いで引っ張った魔物を、力任せに振り回します。
近くにいた1匹が、仲間を叩き付けられて、倒れ伏しました。
そして、ナナは、その勢いのまま、魔物を別の仲間に投げつけます。
信じられない怪力を見せつけたナナは、次の獲物に向かって走りました。
彼女は、別の1匹の尻尾を掴まえると、身体を捻るようにしながら、勢いよく、遠くに投げ飛ばしました。
さらに、別の個体に向かって走り、跳び上がります。
ナナが、その小さな拳で魔物の頭を殴りつけると、魔物は意識が飛んだ様子で、その場に崩れ落ちました。
魔物達は、敵わないことが分かったのか、逃げ出して行きます。
それを見送ったナナは、意識を失った魔物を、背を向けて逃げている仲間の方に投げ飛ばしました。
全ての作業を終えた彼女は、得意げな様子で彼に言います。
「どうだった? お兄ちゃん!」
「満足が10なら、3か4だな」
「ええ~?」
彼の低い評価に対して、ナナは不満そうです。
そんなナナを見ても、彼は評価を修正しませんでした。
「俺達を守る、という視点が欠けた戦い方だ」
「でも、誰も襲われなかったでしょ?」
「結果論だ」
「いざとなったら、私以外の子に守ってもらえばいいじゃない!」
「他人を頼るな。俺がお前に任せた仕事だ」
「そんなぁ!」
「それに、魔物を投げる角度が良くない。もう少し上向きに投げた方が、より遠くまで飛ぶはずだ」
「そんなの、ちょっとぐらい、いいじゃない! 誰かと距離を比べてるわけでもないんだから!」
「駄目だ。完璧な角度で投げろ」
「ええ~!?」
「最後に投げた魔物も、逃げた仲間に当たっていないはずだ」
「ぶつけようと思って投げたんじゃないよ! 追い払えたんだからいいでしょ!?」
「良くない。相手にトドメを刺すことは、戦いにおいて重要だ」
「お兄ちゃん、厳しすぎる!」
「この程度は当然だ」
「御主人様、ナナは頑張ったんですから……」
私がそう言うと、彼は私のことを、冷たい目で見ました。
「頑張っただけで充分だ、などということはない。俺の女は、完全でなければならない。欠陥品は処分する」
「そんな乱暴な……!」
「当然のことだ。お前だって、自分に欠点があってもいい、などと思っているなら、この高原に捨てて行くからな?」
「……」
自分の女は完全でなければ許さないとは……彼のような人間に、そんな傲慢なことを言う権利があるとでも思っているのでしょうか?
彼自身が、最低最悪の人格の持ち主だというのに……。
彼に酷評されたナナが、しょんぼりとしているのを見ると、とても可哀相だと思いました。
邪魔者を退けて、私達は再び寝ました。
その後は誰かに襲われることもなく、私達は無事に朝を迎えます。
一晩寝て、元気を取り戻したナナを見て、私は安心しました。
「昨夜は、私達を守ってくれて、ありがとう」
私は、彼女に感謝を伝えました。
「……あんたに感謝されても仕方がないのよ。お兄ちゃんに褒めてもらわないと」
ナナは、迷惑そうな顔をしながら、そう言いました。
彼女は、私のことを、まだ姉だと認めていないようです。
そのことが残念でした。




