76.判明したこと
(そ、そうだったの!? 小説には、ずっとジェイド一人で過ごしていたのだと……)
ジェイドから語られた事実に私はギョッとしていた。
まさかレイラとジェイドが結婚当初は、同じ部屋に過ごしていたなんて……。
(でも、確かに……レイラなら、反対意見を言いそうよね……)
小説の中では、冷え切った関係だったのだ。
ずっと一緒に過ごす方が、難しかったのだろう。
けれど、そんな記憶なんて持ち合わせていない私が――そのことを聞いて。
どんな反応をすればいいのか――わからなかった。ただ……。
「お前自身が言ったのに……驚くなんてな」
「あ……」
レイラと私の行動が違うからです、とは言えず、私は言葉が詰まってしまう。
そんな時。
「まぁ、これもまた、変化――なんだろう……」
「……!」
ジェイドからそう言われて、私は再度驚いてしまった。
(どうして、ジェイドは……)
ずっと今までの――レイラと私との性格や生活態度のギャップに違和感を持っていたのは彼だ。
それなのに、どうしてそんなにすんなりと……。
ジェイドがスタスタと部屋の中へ歩いていく中。
私はその場で立ち尽くしてしまった。
彼の態度に納得がいかなかったゆえに、なのだろうか。
(いえ、ジェイドを騙している……罪悪感よね……)
そう、彼に――レイラではなく、OLだった時の私を説明しても、信じてもらえないゆえに……内心が「変化」したのだと、彼には伝えていた。
嘘ではないが、真実でもない。
この言葉によって、私はモヤモヤとしてしまう。
(でも、それなら……私はなんて彼に伝えればいいの?)
正直に――もともとはこの世界を読んでいた読者で、死んだと思ったらレイラに転生していた……そう伝えるべきだろうか。
ダンスを根気よく教えてくれた彼なら、この話を聞いてくれるかもしれない。
最初とは変わってきた……彼との関係ならば、こそ。
(けど……うまくいかなかったら?)
ようやっと、彼との心の距離が縮まってきたのだ。
それなのに、こうしたことを言って……ジェイドを混乱させ――運が悪ければ、彼から距離を取られてしまうことだって……。
そんな不安に埋め尽くされた時。
「どうしたんだ?」
ずっと部屋に入ってから、その場で立ち尽くしている私に彼が、そう声をかけてきた。
こうしてら気遣ってくれる彼を見て……私は、思わず口から言葉が漏れる。
「分かんないの……」
「何がだ……?」
「どうして……ジェイドは、私の変化をすんなりと受け入れられるようになったの?」
過去には自分から、ジェイドを説得するために言った言葉なのに。
私はつい、彼に聞いてしまっていた。
するとジェイドは、虚をつかれたような表情をしたのち。
目尻を和らげて。
「今のお前の――行動こそが証明だから」
「え?」
「だから……信じられるんだ」
彼は何かを確認するようにうなづいてから。
そう言葉を紡いだ。
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