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126.映したもの



「あ、わ……不躾になってしまって、ごめんなさい……っ」

「! そんなことはない」


自分が慌てたばかりに、不格好な姿を見せてしまったのをジェイドに謝った。


すぐに櫛はドレッサーに戻したものの。


どんどん自分の顔が熱くなっているのを感じる。

せっかく髪をとかしてバッチリだと思ったのに、詰めが甘かった。


自分に恥じている中。

ジェイドはおもむろに口を開いて。


「お前を責めるつもりはなかった。待ってほしいと知り、都合が悪い時に来てしまったとばかり――それに、むしろ……」

「え?」

「俺と会う前までも、身支度を気遣ってくれたことに……嬉しく思う」


彼は優しく笑みを浮かべていた。

そんなジェイドの言葉と――表情に私は目が離せなくなった。


それにまた――さらに顔に熱が集まってしまうのも感じていて。


(へ、平常心! 平常心よ、私……!)


心の中では、冷静な私を総動員するのに忙しくなってしまった。


そんな私とジェイドのやり取りをしている間――部屋の中にいた侍女たちは、「それでは、ご命令通りに失礼します」と良い笑顔で部屋から出て行った。


彼女たちの顔を見たおかげもあってか、変な緊張感がまたもや復活しそうになるが――どうにか、顔の筋肉も総動員して、いたっていつもの平静な顔をどうにか装えた……気がする。


「お前が元気になったようで、良かった――不便なことはないか?」

「え、ええ! 休養もゆっくり過ごせたの」

「そうか、だがまだ……立ちすぎては、身体に負担だろう。ソファに座ろう」

「え? そう、ね……?」


ジェイドはそう話すと、私の腰にゆっくりと手を添えて――ソファの場所まで一緒に歩いた。


私が休養に入ったことや24時間眠っていたことも、ジェイドは知っているわけで。


そうした内容を知っているせいで、かなりの――。


(心配をかけすぎてしまったわね……)


私的にはもう十二分に休んだ気ではいるのだが、今まではきっと一日中眠ったことがないため――ジェイドも気にしてしまうのかもしれない。


心配をかけてしまって申し訳ない気持ちと……それとこうして身体を思いやってくれる彼の優しさに感謝や嬉しさが生まれてきて、色んな気持ちでいっぱいになる。


そして、ソファにかけるところまで案内されたのち。


「ジェイド、私の身体を想ってくれて――その……ありがとう」

「気にしないでいい。俺がしたくてしている」


彼はそう答えると、そのまま対面のソファに腰かけた。


「もちろん、見舞いの面もあるが――お前が寝ていた間のことも、伝えようと思って来た」

「! 何か、起きたの……?」

「……今は何も――急務の問題はない。ただ……」

「ただ……?」

「ノエルのもとに母上から、手紙が来た」

「っ! 上皇后様から……!? ノ、ノエルに何か危害が……」

「大丈夫だ。ノエルが手紙の封を開けずに――俺のもとに持って来た。そのおかげもあって、未然に防ぐことができた」


ジェイドが話す内容に私は目を見開いた。


私が目覚めた日に上皇后様が、ノエルの部屋のバルコニーに筒を送ってきたこと。


その筒に入っていたのは手紙だけではなく、ノエルの妖精を洗脳していたであろう――黒い物質も混入していたこと。


(ずっと静かで過ごしているように思っていたけれど……まさかこんな行動を起こしていたなんて……)


相変わらず、危害を加える気が収まっていない上皇后様の行動に、ゾッとした恐怖を感じた。


「ノエルに何もなかったようで、本当に良かった……」


どうにか手紙の筒の件は、ジェイドを頼って――問題が起きる前に解決できたことに、ホッとする。


(けれど、これで解決ではないわ……そもそも、黒い物質が筒から出てくるなんて……)


黒い物質が入っていたと聞いて、私はふと――先ほど見つけたカメラの動画のことを思い出し。


「あ!」

「どうした?」

「さっき、カメラを久しぶりに見ていたんだけど……黒い物質をそこで見かけて……」

「!」


私が黒い物質を見たと言うと――ジェイドはピクッと身体を動かし、反応を示した。


そんなジェイドにも見せるべく。

私は、ベッドに置いていたカメラの方へすぐに歩いて行って――手に取った。


そして動画を再生する手前に画面を持っていき。


審問会の時と同じように、壁をスクリーンにして動画を映し出す。


「これは……確か、審問会でも使っていたヨグドの……」

「ええ! その時に使っていた機器よ。私がノエルに会いに行った日……ちょうど上皇后様と会っているのを見て、それでたまたま撮れたものなんだけど……」


ジェイドがじっと壁を見つめる中。

私は、動画の再生ボタンを押す。


すると――先ほどと同じく、上皇后様の身体の周囲や手から黒い靄が出ているのが見えた。


「……母上は、やはり……」


その映像を見て、ジェイドが暗い表情をしながら――ぽつりと言葉をこぼしていた。




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