107.目覚め
■レイラ視点■
私は再び、あの居心地が良かったふかふかの雲の上で過ごす――夢を見ていた。
最初は温もりがあって、安心感があった感覚が……。
いつのまにか「ふかふかな」存在が身体を包み込むような、そんな居心地のいい感覚へと変わり。
全身を寛ぎまくれる、そんな快適すぎる夢の光景が広がっていた。
(残業も、仕事もなく――ずっと眠れる時間がほしかったのよね。ふかふか……楽しい……)
そんな風に、嬉しさを感じながら睡眠を楽しんでいたら。
――にゃあ!
(ゆ、夢の中で――猫の鳴き声……?)
――にゃ、にゃあっ!
夢の中なのに、意識があるような感覚があって。
鳴き声の方へ視線を向ければ――そこにいたのは、猫ではなく……。
(子、子ライオン……っ!?)
オレンジ色の小さなライオンを夢の中で見た……その衝撃に、私は驚きがいっぱいになって――思いっきり目をパチッと開ければ。
「……知ってる、天井だわ……」
夢から覚めた私の視界には、自分の部屋の天井が目に入る。なんだかこの起き方は、以前にも……とデジャブを感じていると。
(そっか……ノエルの部屋から出たあと――ジェイドが私の部屋まで送ってくれたのよね)
状況把握に頭がまわり、一人で納得をした。
起きたこともあって、のちほど――ジェイドに送ってくれたお礼をしに行こう……そう思っていれば。
「お母様……? 起きたのですか……?」
「……っ! ノエルッ!?」
愛おしい声が側から聞こえて、すぐさま私は声の方へ顔を向ける。
するとそこには、身支度を整えて輝かんばかりに可愛いノエルが――ベッドサイドの椅子に座っていて。
ノエルを見た私は、筋肉を総動員してベッドからすぐに上体を起こして……ノエルに近づく。
「ノエル、もう身体は大丈夫なの……!? どこか痛いところとかは……」
頭の中では、ノエルに関する心配でいっぱいになった。
本来なら、どうしてノエルがここにいるのか――という疑問が浮かんでいたはずなのだが……。
それよりもノエルの健康が第一のため、そう聞いていた。
「僕は……お母様のおかげで、元気になりました……! お医者様からも、回復のスピードが速いくらいだと言われてて……」
「ほ、本当? それなら、本当によかったぁ……!」
「!」
私は寝起きというタイミングもあってか、状況把握よりも「ノエルが元気になった事実」という大切な内容に胸がいっぱいになっていき――。
感極まったまま、ノエルへ両手を差し伸べて――ぎゅっと抱きしめていた。
「お、お母様……?」
きっと突然のことで、驚いたノエルの言葉を聞いて。
私はハッとして、少し距離を取ってから。
「あ……ごめんなさいね。ノエルが元気になったことが、あまりにも嬉しくて――つい、身体が動いちゃって……驚かせてしまったわね」
「! いいえ! 僕は……お母様にそう思ってもらえて……嬉しいです」
「ノエル……」
「その……むしろお母様のお身体の方が……」
「え? 私の……?」
ノエルがおずおずとこちらを見つめながら、そう言葉を紡ぐ。
私としては寝たおかげもあって、すっきりとした気持ちだったのだが――。
「王妃様、横から失礼します」
「! セス……?」
ノエルの執事であるセスが、ノエルの側から前へ姿を見せてきて。
私に声をかけてきた。
「王妃様は、殿下のお部屋にいらしたのち――自室に帰られてから……丸一日寝ておられました」
「え……?」
「そのため……外は、明るいですが――今は翌日の朝となります」
セスが言うことを確認するために、私は自室の窓へ視線を向けると。
(あ、朝日が……見えるわ……)
薄いカーテンからは、朝日が部屋の中へ入ってきていた。
OL時代では、睡眠時間を限りなく減らして生きてきた私。それにレイラとして人生を歩むようになってからも、通常は7時間睡眠が基本だった。
(い、いくら疲れたといっても……そんな、私……24時間も眠り続けていたの……っ!?)
自分の睡眠時間の事実に、私の頭はすっかり――冴えわたっていくのであった。
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