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【書籍発売中】ユーリ~魔法に夢見る小さな錬金術師の物語~  作者: 佐伯凪
第五章 錬金術の下準備〜水晶樹の森と、ユニコーンの角〜
126/167

第126話

 錬金術が解禁となり、ユーリは水を得た魚の如く生き生きとし始めた。

 まずは冒険者としての活動に役立つ魔導具の作成。以前も作っていたピカッと君やヒエヒエ君、一定以上の衝撃を受けると爆発するドッカン君も作成している。

 また、この半年で学んだ錬金術の基礎を確認するように、金属やポーションの作成も行っている。

 そしてユーリが一番力を入れようと思っているのが、ポーション類の作成である。

 自分とエレノアが罹っている精霊化現象。伝説とも呼ばれる第一級位のキュアポーションでなら治せるのではないかと考えているのだ。

 また、ポーション類の研究に力を入れたい理由がもう一つ。それは、ナターシャの体調がかんばしく無いことである。


「ゴホッ……ハァ……ハァ……ゲホゴホッ!」


「ナターシャ、大丈夫?」


 中等部一年から始まる、武器を用いた戦闘技術の授業で、ナターシャが激しく咳き込み握っていたナイフを落とす。

 ユーリもナターシャも選択したのは短刀。

 ユーリは戦闘において手数を重視しているため取り回しの小型を選んだ。ナターシャはとにかく軽いものが良かったらしい。


「……ゲホッ……大丈夫よ……」


「あんまり大丈夫に見えないよ?」


 しゃがみ込むナターシャの背中をユーリが擦る。骨が浮いており、肉がほとんどない。


「ナターシャ、ちゃんと食べてる?」


「……うるさいわね、食べてるわよ」


「僕に出来ることなら何でも言ってね」


「…………ありがと」


 珍しく素直に感謝の言葉を口にするナターシャ。かなり弱っているようだ。


「アルゴ。ナターシャを医療室に連れていくね」


「ああ、てめぇもそのまま寮に戻っていいぞ。もう時間だしな」


「ありがと! ナターシャ、ちょっとごめんね」


 返事も待たずにナターシャを抱えるユーリ。お姫様抱っこである。


「キャッ! ……ちょっとあなた!」


「舌噛まないようね」


 ナターシャを抱えたままユーリはエマの元へと走った。



「うーーーーん。原因不明ねー……」


 一通りナターシャを診療したエマが頬に手を当て、悩まし気にため息を吐いた。ベッドにはエマの魔法で眠らせたナターシャ。


「熱は無い、血液も問題なさそうだし、目立った怪我もないのよね〜。原因不明で衰弱してる、としか言いようが無いわ〜」


「胃が弱っててご飯食べられないとか?」


「それなら触診で痛がるはずなのよ〜。前から疑問ではあったのよねぇ。いつも体調悪そうなのに、何処にも悪いところはなくて〜」


「ナターシャ、元気になるかな?」


「ご飯がたくさん食べられれば少しはマシになると思うのだけど、それができないから衰弱してるのよねぇ……」


 ベッドで寝ているナターシャを見て、ユーリの顔が悲しげに歪む。


「ナターシャ、いつもきつそうだなって思ってたけど、ここまでとは思ってなかった……もっと早く気がついていれば……」


「気がついたとしても、出来ることは無かったんじゃないかしら〜」


「……」


 エマの容赦ない言葉にユーリが唇を噛む。


「……一級ポーションなら治るかな?」


「無理ね〜。ポーションで治るのは怪我だけだもの〜」


「……そっか」


「でも、二級以上のキュアポーションなら、可能性はあるかもしれないわ〜」


「……え? キュアポーション?」


 聞き馴染みのない言葉にユーリが顔を上げる。


「あら知らない〜? ポーションって、2種類に分かれるのよ〜」


 ポーションの種類は2つ。怪我を治すポーションと、病気を治すキュアポーションに分けられる。

 それぞれ7階級に分かれ、効果は以下の通り。


 ポーションについて

・第七級位ポーション

 一番効果の低いポーション。コケて擦りむいた時やあかぎれ等に使用する。

・第六級位ポーション

 刃物で軽く指を切る等の怪我を治せる。

・第五級位ポーション

 切り傷の他、打撲や打ち身、捻挫も治せる。

・第四級位ポーション

 深い切り傷を治せる。切断してすぐであれば、指程度の細さであれば接着できる。

 また、浸透に時間はかかるが骨折も治せる。

・第三級位ポーション

 切断してすぐであれば、腕や足でも接着が可能。かなり深い切り傷でも治すことができる。

 かなり高価だが、お金さえあれば購入することができる。

・第二級位ポーション

 準伝説級のポーション。

 過去に切断された腕でさえ再生可能。

 王城の宝物庫に一、二本あるという。

 レシピが現存し、素材があれば理論上作成可能だが、素材がレアすぎるため作成されることはない。

・第一級位ポーション

 伝説級のポーションを

 生きてさえいれば、たちまちすべての怪我が治ると言われている。

 レシピは不明。おとぎ話の中にしか出てこない。


 キュアポーションについて

・第七級位キュアポーション

 一番効果の低いキュアポーション。軽い頭痛や風邪等に使用する。

・第六級位キュアポーション

 中程度の頭痛や風邪等を治せる。二日酔いにも効果あり。

・第五級位キュアポーション

 頭痛や風邪の他、軽い毒や内臓疾患なども治せる。

・第四級位キュアポーション

 重度の頭痛や風邪の他、中程度の毒や内臓疾患なども治せる。

・第三級位キュアポーション

 猛毒や重度の内臓疾患を治せる。

 かなり高価だが、お金さえあれば購入することができる。

・第二級位キュアポーション

 準伝説級のキュアポーション。

 あらゆる毒や病、産まれ持った弱視や虚弱体質等も治すことができる。

 レシピは現存するが、魔法素材が見つかっておらず、作成不可。王城の宝物庫に一本だけあるという噂。

・第一級位キュアポーション

 伝説級のキュアポーション。

 あらゆる病をたちどころに治し、寿命さえ伸ばすことができる。

 レシピは不明。おとぎ話の中にしか出てこない。


「というわけで、ナターシャちゃんの原因不明の衰弱も、二級キュアポーションがあれば治せるかもしれないわねぇ。と言っても、手に入れることなんて出来ないでしょうけど〜」


「……二級キュアポーション」


 ナターシャを治せるかもしれないキュアポーション。レシピはあるらしいが、近代での作成例はない。そもそも本当に作成出来るのかさえも不明である。だが、もし作れたのであれば、ナターシャだけでなく自分とエレノアの精霊化も治せるかもしれない、とユーリは考える。


「まぁ、ナターシャちゃんも今すぐにどうこうなるわけじゃないから、とりあえず様子見しかないわね~。目を覚ましたらちゃんと栄養を摂らせるから、ユーリ君は帰っていいわよ〜」


「うん。ナターシャをよろしくね、エマ」


 まずは、錬金術の師匠に相談である。


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