65ネキ 串とゴーレム
前回のあらすじ
洋服は1着駄目にした? と思ったらいっそ袖千切って捨てたら残った方がいい感じでノースリーブになったから保存することにした
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でけー!
もう遠目に見えた頃から思ってたけどでっけー!
そして人がやべー! バガディールの市場も凄かったけど王都って言うだけあってやべー!
さっきから語彙落ちまくりでやべーやべー連発してるけど、いやはやまじで半端ないな。あそういや祭りが近々あるとか言われてた気がする。それもあるからこんなに人が多いのかね。
ま、取り敢えずはいつものようにギルドの場所聞いてそっから宿探しやね。 屋台! 串! 場所! の黄金コンボは何処でも通じる。
此処は醤油味……醤油!? マッジで!?
慌てるな、慌てるんじゃあない、先ずは素数を割って落ち着くのだ……2、3、5……良し、割れない。落ち着いたわ。
「串屋のおっちゃん此処の串の味他所で食ったことない味なんだけど味どうやって着けてるの?」
「へい、追加の五本焼き上がり! ……ん? あ、お姉さんもしかして此処の串初めてかい?」
「こっからずっと東に行くと国境付近に“フカシ”っつー街があんのさ、俺はそっから来た田舎モンよ」
「格好からして旅でもしてんのかい? あ、そうそう、串の味付けはね隣にある魔王様の国から“ショーユ”ってのが流れてくるのさ、これが不思議な美味しさでね、俺ら民間でも買えるくらい安く流してくれるからとっても有難いってわけ」
魔王ぜってー同郷じゃん。しかもお馴染みの調味料革命起こしてんのかよ、
「ああ、旅しながら色々遊んでるのさ。ちなみに、ほれ」
銀色に輝く冒険者証をチラつかせる。
「へぇ! お姉さん強いんだね! もしかして大会に参加しに来たのかい?」
「大会ぃ?」
「あ、知らないみたいだね、教えてあげるよ。大会っていうのはね、この時期くらいになると王都で開催される腕試し大会のことさ。ほら、向こうに見えるコロセウムで催されるんだよ。腕自慢の傭兵や冒険者たちが集まって一番強い奴を決めるのさ。誰が勝ち上がるかで王公認の賭けもあるし盛り上がるんだよ?」
「へー」
おっちゃんに示された方向を見ると、たしかに巨大な多分円形の建造物が確認できる。 アレか、コロセウムってのは。
「お姉さんもそんなに強いんなら出てみたらどうだい? 優勝者には、賞金だったり良いとこからスカウトの声も掛かるみたいだよ。はい、串焼けたよ」
「おっ、あんがとな。俺は賞金とかスカウトとか興味無いし見る方で良いかな」
「欲無いんだねぇ。そんだけ綺麗だったらどっからでも声掛けられると思うよ?」
「はっ。褒めてくれてあんがとよ。お世辞代も含めて受け取ってくれ」
大銀貨2枚を親指でピピンッと弾きおっちゃんに渡す。
「ちょっと、これは多いよ!」
「いんだよ。串がそんだけ俺にとっちゃ美味かったってことだ」
「くー! これは嬉しいこと言ってくれるねぇ、 じゃあ有難く貰っちゃうよ! いやぁ儲けた儲けた!」
「おーう。また見かけりゃ食いに来るわ」
「また来てくれよお姉さーん」
串1本以外は全て食し、1本だけ残した串でシーハーと歯を掃除しながら道を練り歩く。
やっぱり街がデカいだけあって結構歩くなー……と、おっちゃんの話だとこの先曲がれば直ぐにでも見えてくるんだっけな、ギルド。
そしておっちゃんの言っていた通り曲がった先には立派な建物が見える。 お馴染みの剣のクロスマークも見えるから間違いないだろう。
もうすっかり慣れたもので建物に入り、一望した後はカウンター目掛けてゆらりゆらりと歩いていく。まぁ、身長はかなりあるせいでよく人から見られるしもうそれも慣れたわ。最初からそこまで気にしてなかったけど最近はどうでもいいわとかそんなん。
で、座ってることもあってか身長差にちょっとびっくりされつつもしっかりと対応されるのもワンセット。
「お姉さんさ、俺、ずっと東の方のフカシの街から来てるから、ここら辺詳しくないんだよね。そこそこのでいいから丁度良い宿とか教えてくれない?」
「あ、はい。先ずは冒険者証を確認させていただいても宜しいですか?」
「あ、そだね。はい」
「Bですか。結構なランクですね」
「腕っ節だけはあるからなァ」
「得意職をお聞きしても?」
「ガッチガチの前衛。そこら辺の魔物の群ぐらいなら投げ込まれても傷1つ負いやしねぇよ」
ま、生まれてこの方怪我したこと無いんだけどね! 嘘は言ってないし。
「本当ですか!?」
「別に嘘言ってもなぁ……信じる必要もねぇし。で、宿探してるんだけど良いとこ無い?」
「あ、はい。えーと、タマ様のランクでしたらここを出てうんたらかんたら……あ、口頭だと分かりにくいので、地図を描いておきましたからどうぞ」
「お、助かるよ」
「いえいえ、仕事ですからね、……話は変わりますが、タマ様は今お仕事とか……お探しになっておられませんか?」
「ん? 別に探しちゃいねーが、どした?」
「いえ、その……近々大会があるのはご存知ですよね? で、その大会のための会場設営が今建築中なんですけど、闘技の地盤に使う“ マジック・ストーンゴーレム”の討伐作業者が不注意で怪我をしてしまいまして。治癒魔法で一命は取り留めたんですけど、治療者からしばらく絶対安静を言い渡されたんですよ……」
「大会の開催に間に合わなくなるかもで、どうしようかと悩んでる時にちょうど俺が来た」
「ええ、はい。その通りです……マジック・ストーンゴーレムは身体が崩れても魔力を込めればすぐに再生する中々に厄介な性質ですが、闘技場の素材としては最高なんですよ」
「どっから取ってくんのそれ」
「あ、王都の中にダンジョンが複数ありますので、国が管理してる普段は入れない所にあります」
「こんだけ人居るなら誰か受けるんじゃねーの?」
「それが……ですね。皆さん大会の調整などであまり怪我を負いたがらなくて、且つマジックゴーレムはかなり強いので……」
「いいよ」
「は、え?」
「別に急いでねぇし受けてもいいよ。そいつが狩れないと困るんでしょ。で、俺一人?」
「いやいやいやいや、さすがにBと言えど1人でマジックゴーレムに挑むのは無茶すぎます。1グループ受注してくれたパーティが居ますので、協力をお願いします。向こうも丁度前衛役に困ってたんですよ。ゴーレムの攻撃は苛烈ですからね」
「はいよ。で、それはいつやるん?」
「えーと、明日、正午までにここに来ていただければ顔合わせからのダンジョンに向けて出発していただきます」
「把握。じゃ、明日来るわ」
「あ、あの、報酬金の額などは聞かないので?」
「ん? 別に。終わったら見合った額くれりゃあいいわ。じゃ、地図ありがとね。おねーさん」
受け取った紙をヒラヒラ振ってサヨナラの合図をしながらタマはさっさと外に歩いていった。
途中で柄の悪い冒険者がお決まりの足掛けをかましたが、タマは紙を見ていたので全く気が付かず、逆にタマに引っかかりギルドの外まで引きずられ、気が付いたタマに解放され戻ってきたら、一部始終を見ていた連中に腹を抱えて笑われて赤っ恥をかいたと言う。
踏み砕かれなかっただけ幸運だと思うが。




