126ネキ ネキ式アバカム
前回のあらすじ
千変万化って言うてもそういうニュアンスってことやーで。
(もうこれだけでだいたい展開分かっちゃう芋特有の適当)
――――
「ささ、入口は向こうでござるよ〜」
ダイチが指さすその先には地下への入口。
ではなく、遺跡の中心に静かに佇んでいる “扉” のみだった。
何かの入口というわけでもなく、向こう側には何も無い、
“1枚” の “扉”。
材質は不明だが青銅製かそれの様に青みがかった錆に覆われ、所々蔓に絡まれており悠久の時を感じさせる。
「あれっつってもダイチお前反対側に何も無いただの錆臭えー扉じゃんよ」
「え、もしかして、“次元扉”のダンジョンなの……此処?」
「そうでござるよー。流石の拙者も少々どうしたものかと悩んでいたでござるが、タマ殿が居たらもう勝ったな風呂入ってくるって感じにござる」
「負けフラグやんけお前!」
「まー冗談はさておき、はいナハト!」
「……ひと括りでダンジョンと呼ばれるけど実際は様々な様式があって、“天然洞窟型” “人口遺跡型” “別世界型”……等々細分は沢山あるけど、目の前のタイプは扉をくぐると別の所に繋がっている “別世界型” ……結構な差があるけどこのタイプは総じて難易度が高かったりする……」
「はいよく出来ました! いい子いい子でござるよ!」
「いえーい……」
よく出来ましたと頭と顎を撫でくりまわすダイチ。
「……アンタ最近ナハト贔屓してない?」
「あ、じゃあリーフもどうでござる?」
「い、要らなっ……後でにしなさいよ(ボソッ)」
「ッかァーッ ……ペッ!」
「毛玉か? ケッタちゃん」
「ちげーにゃタマさん、口の中が甘いんだにゃ」
「いつもか?」
「いつもにゃ。まぁ、日常にゃよ」
「嫌いか?」
「大好きにゃよ」
「そうか」
少しだけニコリと口角を上げた後、タマは扉についてダイチへと気になっていたことを聞く。
「ざっくり言うとどこで○ドアだな?」
「概ねそんなでござるよ」
「どこでも……?」
「あー、タマ殿の地方では“次元扉”のことをそう言うでござるよ」
「……地方の言葉みたいな?」
「そうそう。と、まあ話し込んでるあいだに着いたでござる。聞いた話では階層と地形が入る度に変わる故に高難度だとかなんとか」
「あー確かに地図とか意味ないと面倒よね……」
「まー進みゃいつかは外に出れるべ」
「凄い前向きですねタマさん……」
「ん? まあな」
「じゃあさっそく入っていくでござるよー 開けゴm……硬っ!」
「えっ嘘、どんだけ誰も来てないの此処……駄目。硬いわ……」
「……そりゃわざわざ難しい所来ないよねって感じー」
「開かないにゃー?」
ダイチが扉へと手をかけていざ開けようと試みるが、長年誰も訪れなかった故に扉はガッチリと錆びて固まって閉まっていた。
ほんの少しだけ、隙間ができ、向こう側へと繋がる虹のうねりが覗けるが、それ以降は頑なに動く気配はない。
「あん? どれ、貸してみ」
「どぞどぞ」
ダイチとリーフが場所を譲り、タマが“扉”のへと立つ。
「こんなもん直ぐに開k
ゴゥン。 と扉がひとりでに閉まる。
「……ん?」
なんだ今のはと思いつつも取っ手を掴み、金属が軋む重厚な音がしながら扉が開かれ……
「おーし、開いた。入るb
ズゴゴゴ……ゴゥン! と、タマが手を離した瞬間、扉はひとりでに動き再度頑なに閉じてしまった。
「……んん?」
「あの……もしかしてこれ、戻りバネでも付いてる?」
リーフが憶測でボソリと呟いた。
「まさかでござる。ドアクローザー付きとかビックリでござるよ。すみません、タマ殿。錆は取れたと思うので今度は拙者が開けてみても?」
「ん」
「では失礼……」
今度はダイチが扉前へと立ち、取手に手をかけてゆっくりと扉を引いて開けた。
やはり先程は単純に錆や汚れ等が噛んで開かなかっただけのようだ。
「開くじゃねーか」
「開くでござるね」
「さっきのはなんだったのかしら……」
「旧い所だし誤作動じゃなーい?」
「入れるならなんでも良いにゃ」
「まぁ、そうでござるね。では早速拙者から先陣を切りまする」
開かれた扉の中は向こうが見えない虹のうねりになっており、別の次元扉と繋がっていることを示唆する。
特に抵抗もなく虹の向こうにダイチが消え、続いてリーフ、ナハト、ケッタとなり、自ずと殿を務めていたタマが扉の前に立……
ゴゥン!
と、立つが否やいきなり不自然に閉じてしまった。
あからさまにタマを受け付けない様子に流石にタマ本人も気が付き……
「……ふぅーん。俺だけお断りってか? あぁそう。そういうことするんだ? じゃー俺も応えないとな?」
―――
―扉の、向こう側ダヨ! ―
「まさか入って初回層からこんな風になってるとは驚きでござるな……」
「そうね、寂れた遺跡の扉の向こうがコレとは思わないわね」
「リーフとケッタのどっち寄り?」
「多分あちし側じゃにゃーかな」
扉の向こう。
そこには鬱蒼と茂った密林が何処までも続いていた。
時折謎の鳥の鳴き声が響く。
「ダイチ、ところでタマさんは?」
「ん? 最後だからもうすぐ来るはず」
「ダイチ。扉、閉まってるよ?」
「あ、ほんとにござ「なんかやべー気がするにゃ! 此処から急いで退くにゃ!」
ケッタの耳がピクリと反応し、何かしらの違和感を感じ取り半ば強引に押し出すようにして全員を退かす。
そして、次の瞬間。
『ボゴォン!』と、大きな音と共に扉が大きく膨らみ、間髪容れず再度『ドコォン!』と更に扉が歪に盛り上がる。
そ し て。
1カメ。
2カメ。
3カメ。
トドメの一撃と同時に盛大に扉がぶち壊され、両の扉だった物は明後日の方向に飛んでゆき密林の中へと消えていってしまった……
そして何事も無かったかのように虹のうねりからタマが現れ、
「よーし、押してダメならぶっ飛ばせってな」
あの、その扉引くタイプだったのでわ?
とにもかくあれ、タマ。無事(?)に合流。
「まさか蹴破ったでござるか?」
「お、そうそう。なんか俺だけ入店お断りだったみてーでよー、しゃーないから無理やり入ってきたわ。……あ、やっべ壊したらまずかったか?」
「多分特にお咎めはないと思うでござるが……」
「やったぜ。ほんでなんだ此処、ジャングルとかどうなってんだよコレ」
「あ、もう逐一驚いてもしょうがないと悟ったでござるよ拙者。アルド殿を転がすくらいだから、そりぁ当然これくらいやるでござるな? さて、全員合流しましたし、早速最深部までサクサク掃除と仕事に励みましょうぞ」
「……アンタ本当に切り替え早いわね」
「特技でござる」
「……そうだったわね」
扉1つでさえ色々あったりしたが、やっとこさダンジョン “千変万化の迷宮”。
蹂り……攻略開始である。
「……タマ殿いつの間にドーナツを?」
「ん? あ、コレ? さっきのドアの取手。錆落としたらイケそうだったんで今落として食ったら意外に美味ぇわで年代物の干し肉って感じ。いや剥がせば良かったわコレ」




