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異世界のキャンセラー~俺が不遇な人生も纏めてキャンセルしてやる!~  作者: 空地 大乃
第二部第三章 西部レフター領編

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第69話 盗賊の覚悟

side ガンダル


「フェンリィ」

「ガウ!」


 セイラってメイド姿の女が狼と一緒になってビューティーに攻撃を仕掛けた。息のあったコンビネーションだ。今この場にいる中では間違いなく一番の手練れだろうよ。


「中々やるじゃない。それならこれでどうかしら。スペシャルスキル――魅惑の七変化!」


 それを行使した途端、ビューティーの見た目が高速で変化していき魔法、銃撃、召喚、鞭打爪撃などなどを一斉に発動――最後に騎士姿をなった斬撃でセイラとフェンリィがふっ飛ばされた。


「グッ――」

「グルルルルゥウウ」


 セイラが片膝を突き、フェンリィが唸り声を上げていた。だがダメージは軽くないだろうよ。


「スペシャルスキル――アニマルシェイプ!」


 クローバの声が聞こえた。見るとその姿が変化し巨大な熊となってビューティに襲いかかる。


「獣相手にはハンターが一番よね」


 ビューティが幅広の鍔付き帽子姿となり手には両手で構える銃が顕現していた。


「ショットガン!」

 

 近づくクローバに合わせて響き渡る轟音。巨大な熊にお変化したクローバが後方にふっ飛ばされた。


「クローバ! クッ、ファルコンストライク!」


 続いてエメラルドがスキルを発動した。使役していた鷹が高速でビューティーに突撃する。だが――


「あんたも狩ってあげるわよ」


 銃が迫るファルに向けられた。引き金が引かれ轟音が鳴り響く。


「ファル!」


 エメラルドの悲痛な叫び。だが――


「安心しろや嬢ちゃん――」

「が、ガンダル!?」


 マイリスの狼狽する声が聞こえた。飛び出した俺が鷹の代わりに銃弾を受け止めたからだろうよ。


「ガハッ!」


 遅れて痛みが襲ってきやがった。喉の奥からこみ上げた何かで思わず吐血する。チッ、ダメージは軽くねぇなこりゃ。


「あらあら、高々鷹相手に体張るなんて随分と優しいのね」

「うっせぇよ。こっちだって何も考えず前に出てきたわけじゃねぇ」


 マイリスの手駒がこれ以上減るのはやべぇからな。こんなところでチェックメイトなんてさせるわけにはいかねぇんだよ。



「テメェらよく聞け! この女の隙は俺が必ず作る! よく覚えとけ!」


 腹の底から声を張り上げた。裏でこそこそ作戦を練ってる余裕なんてねぇ。それに俺の宣言を聞いたところでこいつは意にも介さないだろ。


「アハハハッ! なにそれうける。あんたみたいなブサイクなゴリラに何が出来るってのよ」


 案の定、ビューティーが腹を抱えて笑い出した。全く俺も随分と舐められたもんだな。


「こっちは盗賊の頭張ってたんだ。テメェみたいな若造に舐められたまま終わってたまるかよ」

「ふ~ん。だったら何が出来るか見せてみなさいよ!」

 

 ビューティーがボンデージ姿に変化し鞭で俺を攻撃してきた。全身に激痛が走る。だが俺はビューティーに向かって笑ってやった。


「何だこりゃご褒美か?」

「あんた気持ち悪いのよ」


 それからビューティーが更に姿を銃撃やら魔法やらを使ってくるが俺は全てを笑って耐えてやった。


「お前、偉そうな事言ってるが攻撃が軽いんだよ。さっきの見てわかったぜ。あのグリーンってのだって死んじゃいねぇしな。こんなもんで俺を殺せると思ったら間違いだ! 今度はこっちから行くぞ!」

「鬱陶しいわね」


 突撃する俺を苦虫を噛み潰したような顔で見てくるビューティー。かと思えばこの女とっておきを披露してきた。


「スペシャルスキル――魅惑の七変化!」

 

 さっきと同じようにビューティーは姿を高速で変化させながら俺に連続攻撃を仕掛けてきた。銃で撃ち抜かれ、魔法で焼かれ、鞭で撃たれ、なんだかわからねぇ光で射抜かれ、爪で引っかかれ、拳と蹴りの連打を受け――最後に鎧姿となったビューティーの剣で胸を貫かれた。


「ガハッ!」

「キャハッ、だっさ。結局何も出来ずにあんたは死ぬのよ」

「――いや、計算、どおり、だ、ぜ――」

 

 俺にとってこれは一種の賭けだった。だが人の行動パターンというのはそうそう変えられるもんじゃねぇ。それにこいつは俺を舐めていた。それなら裏をかくような真似もしなかっただろう。


 だから最初に見せたように騎士で締めた。そしてそれこそが俺に残された勝機――


「わざわざ密着してくれてありがとよ――見せてやるぜ! ガンダル一世一代の大技――モロ出し!」


 スキル発動と同時に俺は一瞬にしてビューティーの衣服を全て剥ぎ取ってやった。当然ビューティーは全裸となった。全く憎らしい敵だが体だけは一級品だな……。


「ヘヘッ、最期に見る光景としては、わ、わるくねぇ」

「な、あ、あんたいったいどういうつも――」

 

 その時だった、疾風のように飛び込んできたフェンリィがビューティーの喉笛に噛みついた。牙が深くめり込み、ビューティーの顔から血の気が失せていく。


「そ、そんな、この、私が、こんな、くだらない、技で……」


 ヘヘッ、俺だってまさかこの技がここまで活かせる時が来るとは思わなかったさ。結局お前にとって一番の天敵は、お、俺だったって、ことさ――

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