第61話 冒険者ギルド前で待ち受ける鎧
「ヒャッハー!」
「ヒャッハー!」
「ヒャッハー!」
「ヒョーーーーーー!」
合計五人の冒険者が地面から姿を見せた。内一人だけ叫び方が違う。お前ら少しは統一しろよ。
「来やがったな! 俺らナックルクローと」
「ヒョー! スカイクローがお前らを切り刻んでくれよう!」
どうやらヒャッハーな四人とそいつらのリーダーがヒョーってところか。ナックルクローとかスカイクローってのは恐らくジョブだろう。同じ名前のが四人いるわけないし。
しかし最近知らないジョブも多いな。
「お前らはここで死ぬ。なぜなら地面の中からの攻撃は避けようがないからだ!」
四人のナックルクローがモグラみたいにまた地面に潜った。どうやら下から攻撃しようってことらしい。
「スペシャルスキル――ブルツェルウンブェッター!」
するとフォルスのスキルによって地面から長大な根が飛び出てきた。
根には地面に飛び込んだヒャッハーな連中が捕まっている。すると締め付けられたのかバキボキバキという骨の砕ける音が響き渡った。
「「「「ギャァアアァアアァアア!」」」」
ナックルクローの四人はこれで死んだ。いやノマデスは直接殺すことはないのか一応生きてるようだ。生きてるだけって感じで死んだ方がマシな状態な気もするが。
「やれやれどうやら威勢だけの輩なようですな」
スピニッチが呆れたように言った。まぁそのとおりだが結構辛辣だな。
「ヒョーーーー! そのような雑魚と私を一緒にしないことだ! 空中戦が得意な私は無敵!」
お前さっきまで一緒に地面に潜ってただろう。
「この動きについてこれるかな! ヒョーーーー!」
「ムッ、確かに速い!」
ヒョーが空中を飛び回った。何もないのにムササビみたいな奴だ。スピニッチは弓を構えながらも目を白黒させている。
「狼も目で追うのがやっとです」
「捉えきれん!」
「それならキャンセル」
「ギャッ!」
ウォルスとジーニも焦っていたが空中を飛び回るスカイクローにキャンセルを掛けたらその勢いのま地面に激突した。相当衝撃が強かったのかもう動かない。
「お前らみたいのにかまってる暇ねぇんだわ」
そう言い残して俺たちは先を急いだ。とにかく冒険者ギルドに急がないとな。
「――来たか」
途中現れた冒険者も蹴散らしながらギルドが見える場所までついたが、そこに明らかにこれまでの連中と圧の異なる相手を発見した。
ギルドに来るのを待ち構えていたのか。紅蓮の全身鎧を来た奴だった。声からして男だろう。
デカい体をしている。だが何より目に付くのは奴が持っている巨大な剣だ。まともに振れるのかあれは――
そして紅蓮の鎧の側には他にも鎧騎士が勢ぞろいしていた。
「――俺はデストロイヤーのバイオレンス。セブンスが一人。ここは俺たち死の鎧団の領域だ。くたばりたいなら掛かってくるんだな」
デストロイヤー――それにセブンスか。デストロイヤーは名前だけは知ってるが結局ゲームでは未実装だった最高位のジョブだ。
その上で周囲の鎧騎士――考えられるのはアーマーナイトか。だとしたらかなり硬い厄介な集団ともいえる。
だが――
「奴らの動きは鈍重な可能性が高い。スピードでかき回そう。それとスピニッチは援護を!」
「うむ! 鎧であれば願ってもない。私には固有スキルに鉄砕きがある!」
鉄砕き――どうやら金属相手に特攻が付くスキルなようだ。実に心強い。
「バイオレンス様の手を煩わせるまでもない!」
そして鎧騎士が先ず動き出した。かなり気合入ってそうだ。
「乱れ打ち!」
スピニッチが先制攻撃を仕掛けた。鎧騎士の鎧にも矢が突き刺さり相手が怯む。
「ハァアアァアアア!」
そこにフォレスが切り込んでいった。矢で傷ついた鎧に刃を突き刺して倒していく。
「ネイチャートラップ!」
「な、丸太がぁああ!」
そしてジーニのスキルでどこからともなく丸太が振り子のように飛んできて鎧騎士をふっ飛ばした。
強い――流石ノマデスの民だな。ブルーが頼っただけある。これは俺も負けてられないな――




