第59話 仲間の死
『ボスに伝えてーな! うちらが進んだ先は罠が溢れとる。そしてや――』
マイリスが念話を通してカラーナの様子を聞いたようだ。真剣な顔から現場の緊迫感が暗に伝わってくる。
「……先遣隊が冒険者と交戦中。なお罠によって――バードが死亡したと報告を受けました」
マイリスが淡々と語った。だけど何も思ってないわけじゃないだろう。バードは盗賊の一人だった。だがここまで色々助けになってくれた。
既に仲間意識だって芽生えていた筈だ。そんな彼の死を当然と思えるほどマイリスは冷たい子ではない。だけど今は彼女が指揮官のようなものだ。だから敢えて感情を押し殺しているんだと俺は思う。
「――そうか。チッ馬鹿野郎が。罠を見つける役目のテメェが先に死んでどうするんだ」
「――私のミスかもしれません。もっと考えて」
だけどマイリスも責任は感じていたようだ。謝罪の言葉が飛び出る。
「ふざけんな。お前がそんなんでどうする。大体これは戦だ。戦なら必ず人が死ぬ。当然俺たちだってその覚悟はある。だからこそ――この戦いが終わった後の報酬が美味しいんじゃねぇか。なぁそうだろテメェら!」
ガンダルが呼びかけると仲間達がそうだそうだと囃し立てた。ただ、どこか空元気のようにも感じられた。
「とにかくだ。相手が動いてるならこっちもぼやぼやしちゃいられねぇ。そうだろう?」
ガンダルが俺に顔を向けて言った。俺は何もしないつもりか? とどこか煽りに近い口ぶりだった。
「当然だ。カラーナが頑張ってるのに俺らが出ないわけ行かないだろう」
「――彼女から向かったルートとそこまでに見つけた罠の情報は聞いてます。敵が出てきている以上ここで留まっていても仕方ない。打って出ます!」
「そうこなくちゃよ。野郎どもいっちょやったろうぜ!」
「よし! 我らノマデスもゆくぞ! 我らの有志を見せつけるときが来たのだ!」
盗賊たちとノマデスの戦士達が鬨の声を上げた。俺たちも負けてられないな。
そしてカラーナ――死なないでく、いや……信頼してるぞ!
◇◆◇
side カラーナ
「くっ、うちがもっと早く気づいてればこないなことにならんかったのに」
「そんな! 姐御は悪くないですよ!」
アイリーンはこう言ってくれとるけど、自分の判断の甘さにヘドが出る思いや。
すまんなバード――
「キャハハ! とっても無様なの! 無様で哀れな豚どもがわざわざ殺されにきたなの!」
思わずうちの耳が反応してまう。何やこいつ。顔を向けると見た目幼い女が妙な人形の上に乗っとった。
人形の手は筒状で煙がもくもくと上がっとるやんか。さてはこいつがバードを――
「ねぇねぇ~そこに転がってる黒焦げの肉片、臭いしキモいし汚いからさっさと片付けて欲しいなの~自分たちで持ち込んだ塵は自分たちで片付ける。それが社会のルールってものじゃないかしら~?」
ドタマに一気に血がのぼっていくのを感じたで。こいつの見た目は幼女そのもんやけど関係ないで。
「それは悪かったなぁ。だったら今後は逆におまんをバラバラにしてゴミ箱にポイ捨てしておいてやるで。うちらで作る塵やからな」
「姐御そのゴミ掃除あたいも手伝いますよ!」
アイリーンもやる気満々ってとこやな。
「へぇ~随分と生意気な塵が紛れ込んでいたようなの。だけど――」
ボンッ! とあのガキの顔が爆発した。べらべら喋ってる間にコインを弾いてぶつけてやったんや。
「コインショットバーストや。ベット分はチップや。とっときーや」




