第57話 グレインベース奪還作戦
結局マイリスが旗頭となる形で俺たちはグレインベースの町奪還作戦に乗り出すことにした。
暫く準備し日が落ち始めてから行動に移る。失敗した冒険者どもが再び森を襲うとしたら明朝辺りからと考えたからだ。
夜襲に関してはないと判断。奴らはそこまで切羽詰まってると考えてないだろう。それに夜の森での戦いなら森に慣れ親しんだノマデスに分がある。
つまり夜に行動に出ても奴らにはメリットがない。冒険者にしても夜間の戦闘が得意な奴らは限られるし、明るい内の方が十分な戦力で攻め込める、と判断する筈だ――
と、ここまでは俺と言うよりもマイリスの作戦だった。彼女は見事高位のジョブを身につけることができた。
その瞬間から、自信が漲ってきたようだ。思考にも変化が見られたのもジョブの効果なのかもしれない。
しかし基本職もふっ飛ばしていきなり高位とはな。ゲームでは考えられないことだったがもうそこは気にしても仕方ない。既にジョブにしてもゲームではみなかったようなジョブを多く見てる。
俺の知ってるゲームの世界とはやはり違いがあるようだ。
ちなみにマイリスが手にいれたジョブは指揮官系統に近い。まぁこれにはロードとかも入ってくるのだがそれ系統ってことだ。
「見えてきたわね」
「あぁ」
森から出来るだけ目立たないルートで進んだ。盛り上がった丘の上に移動し町を見下ろす。
「へへ。腕がなるぜ。おいマイリス約束通りこれが終わったら報酬をたんまり寄越せよ」
「わかってるわよ」
盗賊稼業を続けていただけあってガンダル達はしたたかだ。まぁただで動く連中ではないか。
そして報酬の確認が取れるとガンダルや仲間達がニヤリと笑った。う~ん笑顔もやっぱ盗賊っぽいというかアウトローな雰囲気あるな本当。
とは言えこちらも戦力は限られているわけで盗賊とはいえ協力してくれるのは有り難い。
それにノマデスの民も加わった。森で活躍してくれたスピニッチもそうだがフォレスターのフォルス、レンジャーのジーニ、ヴェルテラーのウラウ、ヴォーデンのテンが同行してくれた。
ジーニは狼を何匹か連れてきていた。動物を利用した戦い方も得意なのがレンジャーだからな。
さて。当然だが夜は町の門がしまっていて門を守る門番が立っていた。どうやらこの町の出入り口は元々は二箇所あったようだが、今は一箇所は完全に塞がれている。
つまり残り一箇所から攻め込むことになるがそこには数名の冒険者が見張りに立っていた。門も塔に挟まれる形で存在している。
塔にも当然見張りの姿があった。
「普通に攻め込んでもすぐにバレるだろうな」
「ふん。かまやしないだろう。全員で突撃だ」
パッと見の印象を口にすると、ガンダルがまたえらく短絡的な事を言った。
「駄目よ。そうね。先ずは塔の見張りを出来るだけ目立たないように倒してもらいましょう。弓に自信あるのは?」
マイリスが適任者がいないか声を上げた。流石に突撃に許可は出さないか。
「それやったらアイリーンやろ。どうや?」
「姐御がそう言うなら勿論!」
カラーナに言われアイリーンが前に出た。それ以外でもガンダルの仲間から一人。レンジャーのジーニも弓を持って任せてと口にした。
確かにレンジャーは弓も扱える。
「矢の音がさとられないように魔法もお願いしたいわね。そういうの得意なのは確か――」
今度は事前情報から適任と思われる魔法の使い手を選出した。そして弓の強化もあわせて施してもらった上で準備に入る。
そして――マイリスの思惑通り音もなく放たれた矢が、塔にいた見張りの冒険者を次々と貫いていった。マイリスの要求通り塔から落ちること無く壁に寄り掛かる形で死んでいく。
アイリーンも風の魔法矢で見事仕留めたようだな。
「今度は門側。ただし弓隊と近接担当で分かれて。近接部隊が強襲できる位置まで移動。弓で先手を打った直後に一気に近づいて倒して。勿論出来るだけ目立たないように――
やれやれ。全く平気で難しい要求を突きつけてくるもんだねっと――




