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異世界のキャンセラー~俺が不遇な人生も纏めてキャンセルしてやる!~  作者: 空地 大乃
第二部二章 王国西部の旅編

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第27話 晴れて勢揃い!

 壁が崩れてマサムネとメリッサ、そしてなぜか裸のニャーコが姿を見せた。見るなにゃん! とか顔を真っ赤にさせて叫んでるけど正直状況がよくわからないな。


 それと少し離れた位置にビュートがいるようだが、何か酷く苦しそうに呻きながら転げ回っている。いい気味だが、一体何があったのか?


 とは言え、今はアウナスだ。相手の弱点もわかりここはすぐにでも攻撃を仕掛けるべきだろう。


 俺のセイバーマリオネット(スペシャルスキル)の効果も切れてしまったからしばらく使えないしな。


 だが、弱点をつくならここはファルコンの方が有利だ。


 俺は爆破の効果が込められたボルトをファルコンに込め、アウナスの本体に照準を定める。

 

 吹っ飛んだ胴体とは距離もある、アウナスを守るものは既にいない。アウナスの本体は空中を自由に飛び回るが、そこまで速度は速くない。


 これであれば狙いをつけるのはそう難しいことではない。


 だから俺は、しっかり狙いを定め――撃つ!

 高速で直進するボルトにアウナスは反応しきれていない。


 これなら当たる! そう思った矢先――本体がシュンッとその場から消え失せた。


 ボルトはそのまま突き進み斜めの起動で天井にぶち当たる。唖然としてしまいキャンセルを忘れ天井が派手に爆発した。

 

 このボルトは貫通する分には爆発の効果だけを後に残すが、刺さったまま爆発してしまうと流石にボルトは壊れる。

 

 これでまた弾残数が一発減ってしまった。予備はまだ数本あるが、もう無駄遣いは出来ないな――とは言え……。


「何故消えた? 一体どこいったんだ?」

「……あそこ、胴体の首の上」


 俺がキョロキョロとあたりを見回すと、セイラが指で教えてくれた。

 目を向けると、確かに胴体の首の上に頭が乗っている。


 普通にもとに戻ったように見えるな。


「ヒット! 私は胴体の動きに注意していたが、あの頭、突如胴体の上に出現したぞ!」


 アンジェが叫ぶ。俺が目を向けると、アウナスは一瞬ニヤリと口角を吊り上げるも、すぐに険しい顔つきへと変貌した。

 

 それにしても――これは、瞬間移動系の何かか? いや、もしそんなものが使えたならもっと前から使っていたはずだ。


 だとしたら、限定的な移動、つまり奴はやろうと思えばいつでも胴体に戻れるということか。


 全く、ここにきてまさかまだ、そんな技を隠し持っていたとはな。

 

 しかも突如正面に他のアンデッドを集め壁にし、本体の頭は胴体の背中側に引っ込んでしまう。


 なので俺は一旦息をつき、そして周囲のアンデッドからそれを取り、ニャーコへと顔を向けた。


「とりあえず、ニャーコはこれで凌いでくれ」

「うにゃん?」


 俺がアンデッド化した冒険者から剥ぎ取ったのはマントだ。決して上等なものではないが、それをニャーコへと放り投げた。


「おおなるほど、これであれば身体は隠せそうでござるな」


 すると、ぽんっと掌を叩いてマサムネが言う。その手があったか! と感銘を受けたかのような表情。

 

 いや、でも本当に気づいてなかったのか? そっちにもマントみたいのをしてるのぐらいいただろ? まあ戦い中はそれどころじゃなかったのかもだけど。


「これは、私もうっかりしておりました……」

「んにゃん、気にするなにゃん。こういう時には仕方ないにゃん。むしろ男のくせにニャーコの折角の裸を堪能しようとしないヒットがおかしいにゃん」

「お前は見られたくないんじゃなかったのか?」


 さっきまでキャーとかいって恥ずかしがってたくせに、マントで身体を覆った途端これだ。本当女は判らん。


「むぅ、なんか臭いにゃん」

「アンデッドの羽織っていたマントやし、仕方ない思うわ」

「むぅ、町に戻ったら新しい服を要求するにゃ!」


 いや、何故俺を指差す? え? 俺が買ってあげないといけない流れなのこれ?


「ヒット、再会を喜ぶのもいいが、まだ戦闘中だぞ」


 おっと確かにそうだったな。全くこういうときアンジェがいてくれてよかったと思う。気が引き締まるしな。


 それにしても――


「あぁあああがあぁああ、痛い痛い痛い痛い痛い痛いいぃぃいい、あがああああぁあ、た、たすけ、ひぎぃいいいい!」

「やっぱあれビュートだよな? 一体どうしたんだ?」

「拙者の技で少しばかり永遠に近い苦しみを味わってもらってるでござるよ」

 

 こわ! マサムネなにげに怖いことやってるな。ま、当然の報いだし全く同情する気も起きないけど。


「ふん、私の秘密に気がついたからと、随分と余裕だな」


 すると、どこか俺たちを見下すような声でアウナスが言い出した。胴体の背中に隠れたままで言ってもしまらないな。


「むぅ、それにしてもあれはなんとも奇っ怪な。生首が空を飛んでいたでござるよ。それにあっちは首がないでござる」


 そしてマサムネが再度、むぅ、と唸りながら不思議そうに胴体を眺めている。


 ちなみにその間もアンデッドはわらわらとやってくるのだけど、マサムネも俺たちも危なげなく無効化していっている。盾になったアンデッドの影響で、攻撃に回している戦力が減っているのも要因の一つか。


 一方アウナスの方は、あんなこといいながらも若干の後退の姿勢を示した。胴体と一緒にな。


 そして、マサムネがしきりに奇異なものを見るような視線を向け続けているので、俺は簡単にこれまでのことを皆に説明した。


「ふむ、なるほど、つまりさっきまで宙に浮かんでいた頭を倒せば片がつくのでござるな」

「ああ、だが見る限り胴体を盾にして守りに入り始めているな」


 随分と強気な発言をぶつけてきたアウナスだが、攻撃の手を一旦止め、アンデッドの壁も厚くし完全に守りの態勢だ。


 言ってることとやってることが全く違うからな。なんとも笑える話だが。


「しかしヒットよ、既に弱点は掴めた。おかげで胴体にもダメージを与えられそうであろう」

「ああ、特に胴体を何とかするのは条件さえ整えば、本体より簡単かもな」

「そうなんボス?」


 カラーナが問いかけてくるが、これは胴体への攻撃の事を思い出せばよく判る。


「もしかしてあの胴体も、本体の恩恵を受けていたのか?」

「え~と、つまりご主人様の言っていた、身代わりの効果が胴体にも及んでいると?」

「ああ、それは勿論だが、それだけだとさっき与えたダメージは説明がつかない。俺の力じゃ本来ダメージを与えられるの一瞬の間だけだしな。でも、胴体は暫くダメージを負っていた」

「……確かに全員の攻撃が当たっていた」

「ああ俺は、胴体が本体の恩恵を受けられるのは一定の距離を保っているのが条件、つまり本体と胴体の距離が離れれば、きっとその効果もなくなってしまうと、そう予想している」

「なるほど! 確かにそれであれば得心がいく!」


 アンジェが感心したように述べる。そして恐らくこの予想は間違ってないと思う。


 ただ、そうなると今度はあの本体が見せた瞬時に胴体に戻る力が厄介にも思えるが――


「ま、それならそれでやりようはあるな」


 そして俺は全員に作戦を伝える。相手が守りに入ってくれたおかげで、対策を考える余裕が生まれた。


 さぁ、一気に決めるぞ!

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