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2章 第65話 運動の重要性

 無事に期末テストも終了し、後は夏休みになるのを待つのみ。(まこと)と違い元々成績は優秀な部類に入る鏡花(きょうか)は、いつもの様にバイトに精を出していた。

 週に3回とは言えど、流石に2ヶ月近く働いていれば慣れて来る。作業の精度もスピードも中々に早くなって来た。あくまで自分の基準では。


「こら鏡花、またペースが落ちてるぞ。もう少し持久力を付けろ」


「うひっ!? ご、ごめんなさい」


「若い内から運動はしとけ? 大人になってから苦労するぞ」


 いつもの如く春子(はるこ)さんの監督の下で作業をしていたら、腕が疲れて来たのがバレて注意されてしまった。

 運動かぁ〜私が一番苦手な要素なんだけどなぁ。何て言うのかな、センスが絶望的にないんだよね。

 球技をやれば突き指するし、走るとフォームがなんか変。泳げない事はないけど、25メートルでもう疲れちゃう。どう考えても運動に不向きなタイプなんだよね。


「そうよ〜佐々木ちゃん。歳を取ると色々影響出るわよ」


「そ、そうなんですか?」


 水谷(みずたに)さんや他のパートの皆さんも頷いている。わりと聞く話題だけれど、やっぱりそうなのかな。

 私にはまだまだ分からない世界だけど、いつかはそうなる未来だ。作業中の皆さんが、どこの脂肪がどうだとか足腰に来るだとか実例を語ってくれる。

 何だかちょっと怖くなって来た。運動オンチな私には、確実に訪れるじゃないか。


「運動って、具体的に何をすれば……」


「最初はウォーキングとかで良いだろう」


「短時間で出来る運動の動画とかもあるわよ」


「なるほど……」


 そう言うのだったら出来るかも? いきなりからフィットネスゲームは、少々無理があったのかも知れない。もっと基本的な事から始めた方は良いかも。今更な話だけど。


「まあそれはそれとして、手を動かせよ」


「あっ、はい」


 危ない、まだバイト中だった。色々考えるのは後にしよう。慣れて来たとは言っても、まだまだ新参者。半年も経ってない初心者マーク付きだ。

 呑気に会話しながら作業出来るほどの技能はない。後で帰りに真君にでも相談しよう、体育会系なんだから詳しいだろうし。


 今は作業に集中しよう。手元にあるシンプルな茶色の角2封筒に、高校の学校案内を放り込んで行く。昔は私にもこう言うの届いてたなぁ。

 懐かしいけど、うちの学校のパンフレットでは無かった。同じ県内だけど、市が違う。

 別の学校とは言え、高校生が高校の案内を封入しているのは何だか不思議な気分になる。そんな状況を楽しんでいたら、勤務時間が終わった。


「この手の作業が鏡花の課題だな。体力と腕力が心許ない」


「うっ……確かに。重いのはやりにくいです」


「すぐにとは言わないが、工夫するか運動するかだな。私は運動を勧めるがな」


「はい、考えておきます」


 やっぱり運動しかないかなぁ。一応仕事面以外にも理由があるから、丁度良い機会なのかも知れない。

 自分なりに改めて考えてみたけど、やっぱりちょっとスタイルがね。だらしないとまでは言わないけれど、魅力もないって言うか。


 グラビアアイドルみたいな体は、最初から無理としても多少はね。平凡流の地味道をひた走る私であっても、やっぱり好きな人には良い所を見せたいよね。

 これでも一応、遺伝子上は女の子なので。そう言う気持ちぐらいは持ち合わせている。

 私みたいなタイプでも、恋をするとちゃんと女の子っぽい事考えるんだなって。だから、ちょっとは頑張ってみようかな。自分の為にも、真君の為にも。





「だから運動したいんだけど、何かないかな?」


「……鏡花は別に痩せなくても問題ないと思うけど」


 物凄く納得が行かないって顔で真君に返された。違うんだよ、男の子の痩せなくても大丈夫と、女の子のそれは違うんだよ。

 しかも彼氏に見せるとなれば尚更。うわ、何か微妙だなとか思われたくない。意外と太ってるな、とか思われたら心が死んでしまう。

 見たまえこのプニプニで貧弱な二の腕を。あ、ごめんやっぱり見ないで。


「体力と腕力は春子さんにも課題だって言われてるし」


「それはまあ、無いよりはあった方が良いけど」


 体を引き締めるのはついで、あくまでついで。メインの目的はそっちなんだよね。と言う体で教えて貰う。

 二の腕とか太ももとかの、平凡なりには存在しているプニッと感を減らしたいから。


「ダイエットのし過ぎが問題になったりするんだから、やり過ぎはダメだからな?」


「うん、約束するよ。それに多分、そんなにやれる体力はないし」


 どちらかと言えばそこが問題で、失敗する可能性の方が高いまである。悲しい事に、私は体力が全然ない。そんな行き過ぎたダイエットが出来る程、元気に動き回れない。


「とりあえずウォーキングで基礎体力向上は良いだろうな。あとは、スクワットなんかもベタだけどオススメかな」


「スクワットかぁ。出来るかなぁ?」


「最初は数回だけでも出来たら十分だ。5回を3セットやるとかな」


 そんな感じで色々な基本的なトレーニングを教えて貰った。やり方が分からないものは、後日教えて貰う事になった。一緒にトレーニングとか、結構楽しいかも知れない。


「真君はどんなのやってるの?」


「俺か? 個人的に気に入ってるのは、夜に風呂のついでに風呂場でスクワット300回だな」


 汗かいてもすぐ流せるからなと笑っているけれど、私の想像を数倍上回っていた。お風呂でまで筋トレなんて、流石は体育会系。ストイックにも程があるよ。私にはとても真似出来そうにない。


「じゃあ今度の土曜日で良いか? 自宅で出来るトレーニング教えるの」


「うん! 今度は私が真君の家に行くよ。教えて貰うんだし」


 そんな約束をして私達は駅で別れた。せっかく教えて貰うんだから、サボらずに頑張るぞ!

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