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冒険者ギルド

 俺は初めて来た王都の街並(まちなみ)を見て感動していた。日本じゃこの雰囲気は味わえないだろう。シオンとレオンは王都では目立ちすぎるので、(ほむら)の影の中に隠れている。これが本当の眷属(けんぞく)の力なのだろう。便利だ。


「おお! これが王都の街か!」

「お兄ちゃん、はしゃぎすぎじゃない?」


 シュリ改め光月桜火(こうづきおうか)。ロナの町で家族との別れを決め、俺の妹としてこれから一緒に生きてくことなったのだ。ロナの町を出てから、桜火は今までと違って明るくなった。


「おいレン! あれは何だ!」


 焔は出店の食べ物を見て興奮(こうふん)している。


「焔の方がはしゃいでるんじゃないの?」

「お姉ちゃんはいいの。ほとんど森から出たことないんだから」

「レン! これを食べてみたい!」


 なにげに桜火は焔に甘いんだよなぁ。はしゃぐ焔の首根っこを(つか)んで引きずる。二人とも集合。俺は真剣な顔をして二人大事な話をした。


「いいか二人とも。俺は深刻な問題に気づいてしまった。それは···」

「「それは···?」」

「お金がない!」

「「!!!!!?」」

(なんつう顔している二人とも。おもしろ。)


「な、なんでじゃ!? セリナにお金をもらっておったろ!」

「ど、どうして!? 何に使ったの? お兄ちゃんのえっち!」

(え? 何言ってるの桜火。)


 そう。俺はセリナからお金を受け取っていた。王都に着くまでにそのお金を全額使っているのだ。俺にはまだこの世界の通貨価値を分かっていない。分かっていないのだから仕方がない。


「二人とも聞いてくれ。お金は全額使ってしまった」

「「何に!」」

「ロナの町で、焔が無関係の人の建物を壊しただろ? その修理代として全部置いてきた」

「うっ!」「あっ!」

(そう。二人とも無関係ではないのだ。兄を変態(あつ)いしたことを後悔したまえ妹よ。)


 落ち込む二人。


「落ち込むのはまだ早い。俺達はもともと目的があって王都に来た。それを忘れてはいけない」


 そう俺達は王都に目的があってきたのだ。光月村を発展させる為には、外部の物資が必要になる。その為、それを買うための資金も集める必要が出てきたのだ。


 炎帝の森には経営なんて考え方は無い。生きていく為の最低限の生活をしていた。しかし炎帝の森は資源の宝庫(ほうこ)だ。大型の魔物がいる為、外部からの侵入は困難だ。資源は光月村(こうづきむら)独占(どくせん)状態になる。問題なのはそれの流通手段を持っていないということだ。


 そこで考えたのが冒険者登録だ。冒険者になれば、狩りで手に入れた素材をギルドが換金してくれる。それに依頼を達成すれば成功報酬も手に入る。狩りで食料、素材は換金できて一石二鳥だ。


 王都は他種族の入国には(きび)しい審査がある。さし当たって、俺と焔が冒険者登録をして流通の手段を作ろうという話になったのだ。桜火も加わり三人で依頼を達成すれば効率も上がっていくだろう。


「という訳で今から冒険者登録する為にギルドに向かいます」

「でもすぐに報酬をもらえる訳じゃないんでしょ?」

「桜火。こいつを忘れてないか?」


 俺はブラックホーンの角を取り出した。これを売れば今日明日ぐらいは困らないだろう。


「レン! すぐに行くぞ!」

(どんだけ食いたいんだよ。)


 俺達はとりあえずギルドを探すことにした。話しながら歩いていたら、前方からくる二人組の一人とぶつかってしまった。さらにぶつかった拍子(ひょうし)(かぶ)っていたフードが()げてしまった。


「申し訳ありません。こちらの不注意でした」


 フードの下は銀髪(ぎんぱつ)綺麗(きれい)な少女だった。少女はすぐにフードをかぶり直して「いえ、こちらこそ申し訳ありません」と言って立ち去ろうとした。俺は足元に何か落ちている事に気づき、少女が落とした物だと思い追いかけて声を掛けようとした。


 近づこうとした時、フードを(かぶ)ったもう一人が、少女と俺の間に立ちはだかった。大きい。


何用(なによう)か?」

「いえ、これ落としたんじゃないかと思って」


 俺は(ひろ)った小さな巾着(きんちゃく)を見せた。


「レオ。大丈夫です」


 護衛なのだろうか。少女はレオという男を下げさせ、巾着(きんちゃく)を受け取ってくれた。


「わざわざありがとうございます。大切なものなので助かりました。···あの、この国の方ではないようですが、旅人の方ですか?」

「はい。この街は初めてです。今日は冒険者登録をしようと思ってギルドを探しに来ました」

「ではギルドにはまだ?」

「はい。全然場所が分からなくて困ってました」

「そうですか。レオ。教えて差し上げて」

「かしこまりました」


 レオと呼ばれる男は丁寧(ていねい)にギルドの場所を教えてくれた。少女は「無事に着けるといいですね」と笑顔で見送ってくれた。俺達もお礼を言ってその場を立ち去った。


 ギルドに向かっている途中で、二人が何やら睨んでいるのが分かる。


「レン。さっきわざとぶつかったじゃろ」

「そうだよ。お兄ちゃんが人にぶつかる訳ないじゃん。かわいい人だったから?」

(おいおい。今日はどうした妹よ。)


「二人も分かってるだろ。あのレオって呼ばれてた男。街中であんな気を放ってたら誰だって気になるじゃん」

「そんなにはっきり分かるのはレンくらいじゃ」


 へぇ。二人ともあんまり気にならなかったんだ。やっぱり俺が敏感(びんかん)すぎるのかな。二人の意味の分からない追及(ついきゅう)を聞き流していたら、あっという間にギルドに着いていた。


 ギルドに入るとすぐに受付と掲示板(けいじばん)が広がっていた。意外に中は広く、奥にはテーブルがいくつも並んでいた。二階も同じようになっていて、そこで食事を取る人もいれば、酒を飲んでる人もいる。冒険者の為の食事処(しょくじどころ)()ねているようだ。


「ようこそ冒険者ギルドへ。今日はどういったご用でしょうか」


 丁寧(ていねい)な案内をしてくれた受付のお姉さんはパナメラという。メガネが似合う美人秘書のようだ。そんなことを考えていたら、またも二人の目線が痛かった。放っておいてパナメラに用向きを伝える。


「かしこまりました。それでは最初に冒険者の登録から行なっていただきます」


 登録用紙に必要事項を記入し、魔法適正、ジョブ適正、レベルの測定を行なう。登録者名に日本の文字は使えないので、三人とも、コウヅキをファミリーネームにして登録をした。


 「では、オウカ・コウヅキ様から魔法適正、ジョブ適正、レベルの測定を行います」


 桜火、焔、俺の順番で測定が行われた。その結果はとてもじゃないが納得いくものではなかった。渡されたギルドカードには以下のように書かれていた。


――――――――――――――――――

オウカ・コウヅキ


年齢:13歳

ランク:E

レベル:10

魔法適正:光、火

ジョブ適正:剣士、シーフ

――――――――――――――――――


――――――――――――――――――

ホムラ・コウヅキ


年齢:OVER

ランク:E

レベル:OVER

魔法適正:火、風、光、闇

ジョブ適正:剣士、バーサーク、魔導士

治癒士、???、???

――――――――――――――――――


――――――――――――――――――

レン・コウヅキ


年齢:16

ランク:E

レベル:1

魔法適正:無

ジョブ適正:剣士、弓使い、槍使い

武闘家、アサシン、???、???

――――――――――――――――――


 どうなってる。なぜ俺のレベルが1なんだ。桜火の方がレベルが高いってどういうこと。しかも魔法適正『無』って何? 俺の異世界チート能力はどうなったの?


 俺が落ち込んでいるのに全く気にせず、淡々と説明を続けるパナメラ。


「皆さん初めの冒険者登録なのでランクはEからになります。依頼を達成していけばランクも上がっていきます。レベルや適性関係も更新すれば変更されるので、定期的に更新することをお勧めします」


 冒険者のランクはEからSランクの五段階ある。レベルは魔力量や経験値に応じて変化するらしい。魔法適正は適性がある属性だと威力と質が高い。ジョブに関しては現在身に付けている技術に起因(きいん)している。厳密(げんみつ)に言うと『剣士レベル〇〇』と測定することも出来るのだが、ジョブレベルの測定はギルドではできないみたいだ。


「あの、パナメラさん。このオーバーっていうのは何でしょうか?」

「オーバーっていうのはレベル100を超えていると表示されます。王都でもオーバーは数えるくらいしかおりません」

「焔ってレベル100以上あるんだね。なんでよ」

「知らん」

「ホムラ様がオーバー? 何をおっしゃって···。え? オーバー? 申し訳ありませんホムラ様、一度ギルドカードをお預かりいたします。······そ、そんな。オーバー!?」

(おいおい見てなかったんかい。)


 パナメラは俺達を新人冒険者だと思っていたらしい。ほとんど内容を見ないで基本説明を始めていたのだ。「手違いがありました」と言ってパナメラが再度測定を行った。


「お、オーバー。間違いありません。ホムラ様はオーバーでございます」

「じゃ、じゃぁ俺のレベル1も手違いでは?」

「レベル1です」

(くっ!)


「オウカ様も、年齢にしてはレベルが高いほうです。···」

(なぜ俺を見る!)


 焔のレベルが高いせいでこの世界のレベルの基準がいまいち(つか)めないでいる。とりあえず考えるのを止めよう。分からない数字に囚われるより、実際に感じることを信じることにしよう。


 その後、パナメラはクエストについて説明してくれた。クエストの種類は全部で三種類ある。一般クエストはランクに応じて受注できる。レベルクエストはレベルに応じて受注できる。特別クエストは制限なく受注できる。どのクエストも、パーティに条件を満たす冒険者が一人でもいれば受注は可能だ。


 俺達には焔がいるから、レベルクエストは全部受注できる。これは大きい。ついでにパーティ登録を行なった。パーティ名は焔と桜火が(さわ)いでうるさいので『コウヅキ』にした。ギルドカードにパーティ名が加わる。二人とも満足そうだ。


 手続きが終わり俺達は今日一番の目的に移る。素材の買取だ。ブラックホーンの角を取り出し、パナメラに買取を依頼する。


「かしこまりました。鑑定させていただきます。···。···。え? ぶ、ブラックホーンの角!?」


 パナメラは「少々お待ちください」と言って奥に引っ込んだ。しばらくすると、何やら紙を持って出てきた。特別クエストの依頼書だ。依頼内容は素材採集となっている。


「お待たせしました。こちらは以前からギルドで発行していた特別クエストなのですが、難易度が高く中々受注されなくて残っていたものです」


 クエストは失敗すると評価と信頼が下がってしまう。一度受注すると期限が発生し、期限内に達成しないとクエスト失敗となる。ブラックホーンを倒すのも大変なのだが、遭遇(そうぐう)するのも大変らしい。その為多くの冒険者から敬遠(けいえん)されていたのだ。俺達はその場でクエスト受注し、即クエスト達成となった。


「こちらが成功報酬です」


 小さめの巾着(きんちゃく)に硬貨が二十枚入っていた。大きく金色にキラキラ光っている。もう一度クエストに目を通す。『成功報酬大金貨二十枚』。俺達三人は価値も分からず「おお!」と言って喜んだ。パナメラに大金貨の価値を聞いたら、大金貨一枚で十万円くらいになることが分かった。計算が出来ない二人はこの価値を分かっていない。


 日給二百万。こんなすごい仕事があるなんて。これで当分生活の心配をすることが無くなった。焔がお腹が空いたと言ってうるさいので早々にギルドを出ることにした。


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