第20話 エルフの里
私は一度実家に顔を出しました。流石に心配をかけてしまったので。帰ると両親は私を抱きしめてくれました。私も安心して泣いてしまいました。ですが、私はゆっくりしていられません。すぐにセレナさんと共に東の森に向かいます。
「良かったのか?すぐに旅立ってしまって?」
「大丈夫です。また帰ってきますから。今は助けて貰った恩人に恩を返す事の方が大事ですから!」
「そうか……やはりセルリアはセルリアじゃな。」
「えっ?何か言いました?」
「何でもないわ。それよりそろそろ着くぞ。」
セレナさんのスピードなので馬車で半日の距離を数時間で連れて行ってくれます。
「さて、少し開けた所で降りるかのぅ。」
「はい、そこはセレナさんにお任せします。」
セレナさんが降りた場所は少し開けていて泉のある場所に降りました。
「何だか……空気が美味しい様な気がします。」
「当たり前じゃ。ここはエルフの里の近くだからのぅ。エルフ達が空気を常に浄化しておるのだ。」
「そうでしたね。ですがセレナさんはよくここへ来るのですか?」
「何でじゃ?」
「いえ、私がお任せしますと言った時に迷わずここへ飛んできたので。」
「よく観察しておるのぅ。そうじゃな。ここにはよく来るぞ。エルフとドラゴンは交流もあるからのぅ。」
「そうなんですね。では、セレナさんはエルフの方々に挨拶して来られた方が良いのでは?エルフの皆さんは礼儀正しく義を重んじていると聞きますし。」
「そうじゃな。じゃがお主もくるのじゃぞ。セルリアよ。」
「……えっ?なんでですか?私は人なので下手をすると殺されますよ⁉︎前にも似た様な事がありまして旅人数名がエルフの方々の里に近くに迷い込んでしまったらしく全員首だけになって帰ってきたという話がありました。」
「心配ない。我がおる以上手出しはせんよ。」
「何故ですか?」
「んー……行けば分かる。」
そう言われて私はセレナさんに付いていきますが。やっぱり怖いのでセレナさんに手を繋いで貰っていきます。
少し歩くと木材で作られた壁がありました。そしてその前には男性のエルフの門番さんが3人いました。
「お主達、すまんがカトレアを呼んで来てくれんか?」
「何者だ!その横にいるのは人間ではないか⁉︎」
「人間と一緒に居る者など信用できない。殺されたくないなら今すぐに去れ!」
まぁこの反応は仕方ありません。私はセレナさんの手を少し引っ張って帰りましょうと合図を送ります。
「そう邪険にするな。セレナ・ブルックが来たと言えば分かるはずじゃ。」
「何だと?セレナ様が人を連れて来るなど……」
言い淀むエルフの方々にセレナさんは高圧的な言葉で言い放ちます。
「良いから行け。まだ何か言うのなら不敬として処断するぞ?」
圧が強すぎて私も少し萎縮してしまいます。そしてエルフさんもすぐに動いてくれました。そして少し待っていると2人の女性のエルフが現れました。
「本当にセレナが来てるとはな……しかも人間を連れて……喧嘩を売っているのか?」
エルフの女の人もセレナさんに負けず劣らずの威圧を放っていました。私は足が震えてしまいますがセレナさんは飄々と返します。
「数日ぶりじゃのぅカトレア。そんなわけなかろう。ちょいと探し物がある為にお主達に了承を得に来ただけじゃ。荒らすつもりはない。」
「……ならば良い。ただし、妙な真似をすれば貴様とて容赦はせんぞ。」
「くどいのぅ。我らは月輪草を採取しに来ただけじゃ。」
「月輪草……だと……?」
「そうじゃ。それを見つければ帰る……?」
セレナさんが言い終わる前にエルフの男性が私たちに槍を突き出しました。
「おい……一体何の真似じゃ?」
「セレナよ……それはこの里の宝だと分かって言っておるのか?」
「何だと?」
「月輪草は月の魔力を存分に蓄えた花の事をいう。一年にほんの僅かしか取れん物だ。それを人間を連れて探すなど許されるはずがない!」
カトレアさんの説明に何故激怒したかは分かりました。なので私は恐る恐る謝ります。
「あの……」
私が口を開くとカトレアさんはギロリとこちらを睨んできました。しかし怯えてばかりはいられません。私は怯えながらも言葉を搾り出します。
「セレナさんも私もそんな高価な花だとは知らず軽率な発言をし申し訳ありませんでした。ですが、私が月輪草を欲するのにも理由があるのです。どうか探させて貰えないでしょうか?」
私は深々と頭を下げて謝罪していると頭上から金属がぶつかり合う音がしました。上を向くとそこには……
「おいおい……頭を下げている奴に剣を振り下ろすとは何を考えておるカトレア……?」
「貴様こそ……何故その人間を庇うセレナ……貴様こそ人間に恨みがあるのだろう?」
そこには剣を私に向かって振り下ろそうとするカトレアさんとそれを右手を部分的にドラゴンに戻したセレナさんが私の顔の前で抑えていました。
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