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アラフォーおっさんはスローライフの夢を見るか?  作者: サイトウアユム


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Quest39:王都に向かえ その12


「――ッ!」


 マコトが目を覚ますと、木の枝のようなものが視界を覆っていた。

 いや、覆っているだけではない。

 意思を持っているかのように蠢いている。

 わずかだが、脱力感もある。

 ふと骸王のダンジョンでゴーストに襲われた時のことを思い出す。

 あの時も脱力感を覚えた。

 攻撃を受けているのだ。


点火イグニッション!」


 漆黒の炎が噴き出し、木の枝が塵と化す。

 木の枝がなくなったそこは箱馬車の中だった。

 ユウカとローラの姿もある。

 二人とも座席に横たわっている。

 マコトは内心首を傾げた。

 先程まで実家に戻った夢を見ていた。

 その前は館の広間にいたはずだ。

 それなのに、どうして箱馬車の中にいるのだろう。

 そこまで考え、全てが夢だった可能性に思い当たる。

 くそッ、と吐き捨て――。


「おい、ユウカ!」

「……」


 声を掛けるが、ユウカは無言だ。

 まだ眠っているようだ。

 かなり騒がしかったはずだが、何らかの手段で眠らされているのだろう。

 座席から立ち上がり、顔を覗き込む。

 何処か澄ましたような顔をしている。

 鼻を摘まむが、ユウカはまだ起きない。

 顔が真っ赤になり、しばらくしてどんどん血の気が失せていく。

 そろそろヤバいかなと思ったその時、ユウカが目を見開いた。

 ぎろりとマコトを睨み付ける。

 無言で拳を突き出し――。


魔弾ブリット!」


 マジックアイテムを使って魔法を放った。

 鼻を摘まむのを止め、わずかに首を傾けて魔弾を躱す。

 轟音が響き、箱馬車の破片が背中を叩く。


「なんで、鼻を摘まんでるのよ!?」

「いや、声を掛けても起きねーからさ」

「肩を揺すればいいでしょ!?」

「セクハラ扱いされそうだったから」

「どっちにしろ、体を触ってるじゃない!」


 ったく、とユウカは体を起こした。

 それから視線を巡らせる。


「ここは何処?」

「私は誰?」

「記憶喪失じゃないから」


 ユウカは手の甲でマコトを叩き、座席から立ち上がった。

 そして、ローラの肩を揺する。


「ローラ、起きなさい」

「……」


 声を掛けるが、ローラは無言だ。


「起きなさいッ!」

「ひゃいッ!」


 ユウカが大声で叫ぶと、ローラは飛び起きた。

 きょろきょろと周囲を見回す。


「私の赤ちゃんは?」

「夢よ、夢。敵に夢を見せられてたの」

「夢ですか、そうですか」


 ローラはしょんぼりと呟いた。

 どうやら彼女も夢を見ていたようだ。


「とりあえず、敵を倒すぞ」

「そうするしかないわよね」


 ユウカがうんざりしたように言い、マコトは箱馬車の扉を開けて外に出た。

 視線を巡らせる。

 クリスティン達の乗る箱馬車はなく、周囲には森が広がっている。

 頭上からチュミィという声が聞こえ、空を見上げる。

 すると、木の枝が天蓋のように空を覆っていた。


「それにしても、どうして森の中なのかしら?」

「眠っている間に移動させられたのでしょうか?」


 背後からユウカとローラの声が響き、マコトは振り返った。


「この森が敵なんだろ」

「どうして、そんなことが分かるのよ?」

「足下だ」

「足下?」


 ユウカとローラが足下を見る。

 当然のことながらそこには地面がある。


「地面が真っ平らだろ?」

「結論を言いなさいよ」

「森がモンスターで、街道を進む箱馬車を呑み込んだんじゃねーかって言いたかったんだよ」

「最初からそう言ってくれればいいのに」


 マコトの言葉にユウカが拗ねたように唇を尖らせる。


「クリス様達は無事でしょうか?」

「分からねーが、一刻も早く敵を倒すべきだな」

「敵を倒すって意見には賛成だけど、どうやって倒すのよ? まあ、一番手っ取り早いのは魔法で森全体を吹き飛ばすことなんでしょうけど……」


 ユウカは口を噤み、視線を巡らせた。

 木の枝ががさがさと揺れ、時折チュミチュミという声が響く。

 かなり不気味だ。


「多分、無理よ」

「となると、本体を倒すしかねーな」

「どうして、本体がいるって分かるのよ?」

「群れで行動している割に統率が取れすぎてるような気がするんだよ」

「気がするね」


 ユウカが小さく溜息を吐く。


「分かったわ。とりあえず、本体がいるって前提で動きましょ。それで、どうやって、本体を探すの?」

「そうだな」


 マコトは腕を組んだ。

 空を飛べればいいのだが――。


「浮遊の魔術は使えないよな?」

「使えないわ」

「だったらユウカが魔法で頭上を覆う木の枝を吹き飛ばして、ジャンプして空から本体の居場所を探るってのはどうだ?」

「木の枝を吹き飛ばすのは訳ないけど、そんなにジャンプできるの?」

「できるんじゃねーか、多分」

「……」


 ユウカは無言だ。

 難しそうに眉根を寄せている。

 しばらくしていいアイディアを思い付いたのだろう。

 パンッ、と手を打ち合わせる。


「ローラを足場にしましょ」

「足場!?」


 よほど驚いたのだろう。

 ローラが素っ頓狂な声を上げる。


「箱馬車を足場にすれば――」

「もちろん、箱馬車も足場にするわよ。でも、それだと高低差のせいでスピードを維持できないでしょ?」

「それはそうですが……」


 ローラ呻くように言うと、ユウカは訝しげに眉根を寄せた。


「念のために言っておくけど、直接踏ん付ける訳じゃないわよ?」

「え!?」

「盾を真上に構えればいいじゃない」

「ああ、そういうことですか」


 ユウカが溜息交じりに言うと、ローラは合点がいったとばかりに頷いた。


「よし、これで話は纏まったな」

「上手くいくか分からないけどね」


 ユウカが小さく息を吐き、マコト達は動き出した。

 箱馬車から距離を取り、ローラがマコトと箱馬車の間に、ユウカが箱馬車の近くに立つ。


「ユウカ、頼む!」

「OK!」


 ユウカは杖を構え、詠唱を開始した。


「リュノ・ケスタ・アガタ! 無窮ならざるペリオリスよ、燃えろ燃えろ劫火の如く、爆ぜよ爆ぜよ火山の如く、我が敵と共に燃え尽きろ! 顕現せよ! 灼熱の世界! 炎爆フレイム・バースト!」


 呪文が完成し、ユウカは杖を掲げた。

 魔法陣が展開し、その中心に赤い光が生まれる。

 赤い光は一気に膨れ上がり、巨大な炎に変わった。

 距離を取っているにもかかわらず、チリチリと肌が痛んだ。

 炎が噴き上がる。

 まるで火山の噴火だ。

 木の枝が燃え上がり、一瞬で灰と化す。

 ぽっかりと空いた穴の向こうには青空が広がっていた。

 安堵の息を吐きそうになるが、ぐっと堪える。

 まだ敵の本体を見つけていないし、もう木の枝が再生を始めている。

 マコトは駆け出した。


「ローラ!」

「お任せ下さい!」


 ローラが盾を構え、マコトは地面を軽く蹴った。

 浮遊感が体を包む。

 だが、それも長く続かない。

 落下を始めたのだ。

 次の足場――盾までわずかに距離が足りない。

 それが分かったのだろう。

 ローラが移動する。

 マコトは盾を軽く蹴った。

 再び体が浮き上がり、箱馬車が近づいてくる。

 ドンピシャだ。

 箱馬車の屋根を強く蹴り、天高く舞い上がる。

 一気に視界が開け――。

 いけないいけない。

 今は景色に見とれている場合ではない。

 敵の本体を探さなければ。

 視線を巡らせると、森が広がっていた。

 敵の本体がいると思しき場所はすぐに見つかった。

 周囲のそれより大きな木があったのだ。

 大きいだけではなく色も違う。

 どす黒いのだ。

 木だけではなく、その周辺もどす黒く染まっている。

 それが真下まで続いている。

 とりあえず、敵本体の場所は分かった。

 浮遊感、いや、落下感が体を包む。

 着地点を確認すべく下を見て、思わず顔を顰める。

 木の枝が穴を塞ぎつつあった。


「点火!」


 マコトは大声で叫んだ。

 全身から漆黒の炎が噴き出す。

 漆黒の炎が木の枝を塵に変え、マコトは無事に着地した。

 ユウカが駆け寄ってくる。


「どうだった?」

「ああ、あっちだ」


 マコトは敵の本体が見えた方角を指差した。

 だが、木の枝が行く手を塞いでいる。

 迂回したいが、どちらを見ても木の枝ばかりだ。


「どうするのよ?」

「どうするって、力押ししかねぇだろ」


 マコトは正面を見据えて言った。

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