99話「ラスボスと最大最強決戦だあああッ!!」
悪魔王ポットデボスは思わぬ誤算に直面して、狼狽したくにもなる事態に陥ってなおも冷静にアッセーたちを見下ろし続けている。
「これが余興だって?」
「我ら悪魔は特に結束して、この世を支配しようとは思っておらんからな。我こそ全て、唯我独尊……、皆それで一致して欲望の赴くままにやりやすい方法を取っておるだけだ。仲間とワイワイ楽しくやるのは甘えた下等種族らしい生態だ」
「おまえ、友達いねぇんだな……。かわいそう…………」
アッセーは悲しげに呟いた。
それが何よりも脳髄に響いたのか、悪魔王ポットデボスは頭に血が昇っていく。
激情限界突破、思考爆散、激怒沸騰と体が熱く昂っていく。
「グオオアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!!」
全てを震わすほどの怒号。
空間が引き裂かれるかのように軋み音が響き渡っていく。心を砕かれるほどの「友達いねぇんだな」の一言により、身を焦がすほどの激情に思考も肉体も支配された。
世界全てを粉微塵に滅ぼしてやろうと、憤怒に歪んだ顔をアッセーに向けた。
「一言多いんだよおおおおおお!!! てめぇらリア充に俺様の気持ちが分かってたまるかああああああッ!!! このクソがッ!! こおおのクソがあああああああッ!! 死ねよ死ねよ死ねよ死ね死ね死ねッ!!!」
「お、おい!? 落ち着け!!」
さっきまで余裕ぶってたのに、あからさまに取り乱して語彙を失った罵倒をぶちまけている。
武力二三〇万をフルに総動員させた悪魔オーラが天地を繋ぎ留めるほどに禍々しい紫混じりの闇柱に噴き上がっていた。
「リア充なんて大爆発大爆裂大爆散大爆死しろおおおおおおおおおッ!!!」
血涙しながら憤怒の表情で、周囲に衝撃波を散らして、あちこちが爆発していって連鎖していく。
それは凄まじい規模で、まさに世界中のリア充をガチで爆発させる勢いだ。
「我が究極の深淵パワーを思い知れ──ッ!!! 魔剣中魔剣『暗黒深淵虚無剣』ッッ!!!」
誰もが驚く。
天を限りなく衝くほどの噴出する巨大な漆黒の剣。
その凄まじい威圧によって武力は計り知れないほどに上昇していく。掠っただけでも星杯を粉微塵に砕くほどだろう。
それが倒れ込んでくるかのように天衝く巨大漆黒剣が迫ってくる。
「こうなったら! 取って置き一つめ使うしかねぇッ!!」
一歩間違えれば絶滅必死と緊迫感を抱いたアッセーはカッと眼光を煌めかす。
「三大奥義統括『賢者の秘法』『無限なる回転』『超越到達の領域』!!!」
時の流れを堰き止め、アッセーは銀河の剣を一瞬生成し、惑星のように周囲を無数の星が周回する。
これこそが『S・S』である。
その全ての星で『賢者の秘法』を生成して銀河型風車に変えて、超速回転。それらが悪魔王ポットデボスへ殺到する。
まるで無数の銀河系が一斉に襲い掛かるかのような圧巻なる光景だ。
「な、なん……だと……!!?」
「これがオレの全てを賭した究極奥義ッ!! 喰らええええッ!! ギャラクシィ・シャインコズミック────ッ!!!!」
まさにビッグバンかと見間違うほどの閃光が爆ぜ、天衝く巨大漆黒剣を粉砕し、悪魔王ポットデボスを呑み込んでいく。
瞬間的に無限とも言えるほどの回転力で粉微塵にする勢いだ。
「あがあああああああああ!! だがそれでもおおおお!! リア充あああああああ恨み晴らさでええええ!!!!」
爆ぜた衝撃波が周囲に吹き荒れて烈風と震撼が広がっていった。
なおもゴゴゴゴゴゴと鳴り響きは収まらない。
「うわああああ!!! ここが亜空間で良かったー!!」
「もし地上で戦ってたら間違いなく周辺の星杯を巻き込んで消し飛んでたぞ!!」
「ああ!! 距離にして直径一二九光年に及ぶだろうッ!!」
「そ ん な に!?」
恨み節と悪魔王ポットデボスは怒りのままに三大奥義統括技さえ耐え切ってしまう。
ボロボロだが憤怒の表情で「ぐうううう!!!」と唸っている。
「バカなッ!?」
「それに耐えうるなんてッ!!!」
「不死身で超再生込みでも、ありえねえええええッ!!!!」
「な、なんという凄まじいリア充憎悪!?」
「恐るべき深淵パワー!!」
「な ぜ に!?」
息を切らす悪魔王ポットデボスへ、アッセーが銀河の剣を渾身の力で振るう。
「まだまだーッ!! ギャラクシィ・シャインスパークッ!!!」
それでも悪魔王ポットデボスはカッと憎しみの眼光で睨む。
そして闇の渦が右手に収束されていく。夥しい闇のオーラが超圧縮されていって三大奥義並みに威力が爆増されていく。
周囲を不穏に震わせ続けるほどだ。そして空間がゆがんで見えるほどに圧縮は続いていく。
まさに小規模ブラックホールだ。
「これが我が最終深淵奥義!! 無量大数絶対永遠虚無衝だあああああッ!!!」
全てを震撼させ、全てを吸い込むブラックホールが銀河の剣が激突し合い、その相乗効果か、周囲の光景が螺旋状に歪んで引き伸ばされていく。
互い譲れぬとアッセーとポットデボスは必死な顔でせめぎ合う。
「そんなものおおおおおおおおーッ!!」
悪魔王ポットデボスのブラックホールが更に肥大化して銀河の剣を呑み込まんとする。
勝った、と歓喜の笑みに歪んでいく。するとどういう事か、肥大化したはずのブラックホールが逆流するように渦を巻いて銀河の剣へ吸収されていく。
「な!?」
「お前の深淵の辛さは分かる! 今でこそオレは恵まれてはいるが、昔はお前と同じ深淵で非リア充としての辛さを噛み締めていたーッ!!」
「な、なにいいい!?」
「これが二つめの取って置きッ!!」
ナッセの周囲を銀河の剣が徐々に高速周回していく。
しかも闇の絶大な圧縮パワーを我がものとして更なるパワーを得ていくのだ。
かつて敵の攻撃を受け止めて、その力場を自分の力に移し変えて返すカウンター技を持っていた。それを今、奥義に応用し発現させたのだ。
アッセーはまさしく光り輝く降着円盤を纏っている状態だ。
「我が深淵ブラックホールが、貴様にいいいいいッ!?」
「そうだーッ!! お前の深淵パワーとオレのかつての深淵パワーがシンクロして、相乗効果によりエネルギーは無限大になったーッ!!」
「ウッソだろおおおおおッ!!! こんなんネタじゃないかよおおおおおッ!!?」
今ここで新たな超必殺技が爆誕したのだ。
青ざめたポットデボスは逃れようとするが、逆にナッセへと吸い寄せられていく。
「受けてみろーッ!! ギャラクシィ・シャインスパーク・エターナルリング──ッ!!!」
それはブラックホールの吸引力も手伝って敵を決して逃さず、ギャラクシィ・シャインスパークを敵に延々連続で叩き込むという、えげつない威力によって亜空間全域を震わせるほどの衝撃を散らす。
かつてない超絶威力をまともに喰らい悪魔王ポットデボスは「がはああああああッ!!」と盛大に吐血。
例え不死身で超高速再生を持とうとも、これには堪えた。
「これが三つめの……、最後の取って置きだああああッ!!」
これで終わりだ、とアッセーが『賢者の秘法』により生成した巨大な銀白の鈴を振り下ろし、煌びやかな星屑を散らす。
「ファンタスティックヘブン! 極楽の鈴────ッ!!」
キィ─────────ンッ!!!
炸裂した眩い音色の輝きが放射状に爆ぜ、光飛礫を舞い踊らせながら光輪が煌びやかに広がっていった。
すると亜空間なのに上空で渦巻く白き雲が広がり、神々しく温かい光の帯がいくつも降り注いで、上空中心部から放射された光の柱が悪魔王ポットデボスを呑み込んだ。
強烈な浄化力によってオーバーキルかと思うほど焼き尽くしていく。
「ぐおおおおおああああああああ──────ッッ!!」
すると悪魔王ポットデボスが剥がれていって、中から褐色の美少女ギャルが現れた。
金髪のウェーブロングで巨乳で、なぜか魅惑的なニットカーディガン込み制服を着ていてルーズソックス。浄化されたからか、オタクに優しいギャルみたいな風貌になった。
「ウッフン! キャハー! ヨロヨロピー」
「な、女だったのかよおおおおおおおッ!??」
「誰も俺様が男だって言っちゃいないからな!? ぼっち陰キャ女より、強ソーな悪魔王マジいけるっしょ!? キャハ」
なんと悪魔王はガワだった事が判明。
しかもポットデボスはこれまでとは完全に別人になってしまってる。
「完全にキャラが変わりすぎだろおおおおおッ!!」
「責任とって婚約しよか! キャハ」
「婚約破棄でええええッ!!!」
「い────やっ!!」
婚約キッスしようと抱きついて迫る黒ギャルのポットデボスに、アッセーは慌てて引き剥がそうとせめぎ合っている。ぐぎぎ!
そんなオチにローラル、アルロー、ユミ、マトキはジト目で呆れるしかなかった。
「「「結局こうなるんだ……」」」
「見てないで止めろおおおおおおおおおおおおおおおおッ!!!!」
ちゅぱぺろぺろぺろぐちょぐちょぱちゅっ!!!!
完結まで残り1話!




