98話「悪魔軍勢と総決戦だッ!!!」
────そして封印が解かれる当日!
地響きが最終地獄から響き渡っている。それを不安げに見下ろす三大精霊王と緊迫するアッセー。
ローラル、アルロー、ユミ、マトキ、グングはビクビクしながら見守るしかない。
いつ封印が解けて、強力な悪魔が飛び出してこないか戦々恐々だ。
「時は満ちた!! 行くぞ!! 我らが憎悪を燃やし、地上を蹂躙せんがための日を!!」
悪辣に笑んだ悪魔王ポットデボスが、他の悪魔を従えて真上の魔法陣へ飛び上がっていく。
いずれも武力一〇〇万オーバーの大悪魔ぞろい。
溜めに溜め込んだ憎悪とともに士気高揚と魔法陣をぶち破るべき突進した。ものすごい衝撃音が響いた。
もはや期限切れの魔法陣が粉々に砕かれ、散り散りと四散していって虚空へ溶け消えていく。
「来るぞっ!!」
そう叫んだアッセーは太陽の剣を生成し、真っ直ぐ突進する。
我先に飛び出し、歓喜の笑みで巨躯を表した獄将エリアーン。突進してくるアッセーを無い目で見下ろす。
「単身で我に挑むかーッ!! まず死ね!」
「三大奥義が一つ『超越到達の領域』ッ!!」
アッセーがカッと眼光を煌めかし、時の流れを堰き止めた。
「バカめ!! 物理的事象である時空間に囚われる悪魔では──……」
上位生命体は時空間の変化にも影響される事はない。そのはず!
「光輝・流星進撃!! 二〇連星ッ!!」
しかし同時に煌く二十の流星が獄将エリアーンの各部位を穿ち、それぞれ肉ごと骨を砕く。同時にアッセーは通り過ぎて行き、堰き止めた時が流れ出す。
遅れて打撃が鳴り響いて踊る巨躯。全身から破裂するように出血し、血を吐く獄将エリアーンは見開いた。
「ば……かな……!? それ以上の…………??」
ただ時を止めての攻撃じゃない。時を止めた上で、更にその影響で溜め込んだ力を爆発させて必殺の技へ昇華させた。
これでは相手がいくら停止した時を動けても意味がない。
出血の滝と共に沈んでいく獄将エリアーン。
「聖女マトキ! 頼むッ!」
「はい! 護封剣!」
瀕死とはいえ不老不死の悪魔。いずれは復活するので、マトキは星屑を散らす光の剣を上空で生み出し、沈んでいる獄将エリアーンの背中を刺して光の膜で覆った。
「まだ来るぞッ!!」
待ちきれぬと無数の悪魔が湧いてきて、喜々と殺到してくる。
一気に数百もの物量が迫って来るのだ。
しかしローラルは毅然と扇を振るう。すると火炎が踊る。
「覚悟はしてましてよ! わたくし参ります! 令嬢扇殺法・火炎旋舞ーっ!!」
渦を巻く火炎が獰猛に悪魔数十人を巻き込んで「ぐああああーッ!!」と屠った。
それでも悪魔たちは「ほざけーっ!!」と押し寄せる。
するとユミが地を蹴って飛沫を吹き上げながら、縦横無尽に駆け抜けて斬り伏せていく。
「弓矢のごとく駆け抜ける私のスキル、アローラン!」
焦れた悪魔たちは闇の光線を斉射して、弾幕を張ってきたぞ。
アルローは「させないなのです!」と両手をかざして、間欠泉による壁を広げて防いでいった。
続いて「水珠爆なのです!!」と間欠泉の壁から飛沫を飛ばして、悪魔たちを蜂の巣にしていった。
「ワタシも頑張るであります!」
グングは稲光とともに巨大な槍を具現化させ、突き出した掌に従って超速で撃ち出された。
電光のように一直線と煌き、向こうで大爆発が巻き起こって悪魔たちを消し炭にしていく。国丸ごと消し飛ばすほどの規模だ。
「伝承されし魔道兵器! これが『神滅雷鳴槍』であります!!」
アッセーの仲間も頼もしい戦力で、悪魔軍勢にも負けじと対抗できていた。
それを影から見透かす悪魔公ヤギダヨーンがいた。
「ふむ、やはり護衛をつけてきたか……。では作戦を実こ……」
「そうはさせんよ。貴殿の恐ろしさは聞いておるのでな」
「なっ!?」
なんと龍人の長ゲキリンが凄まじいオーラを纏ってボディブローを叩き込んだ。
ゴハッ、ヤギダヨーンは驚愕に見開き吐血。
更に畳み掛けるように憤怒の拳の弾幕で全身を穿ち続けていった。秒間数百発もの拳を受けては全身の肉と骨が砕かれていくしかない。
血まみれと地に伏していく。
「策を弄する者ほど脆いものはいないな。お呼びがかかったからに、俺もそれに応えねばな。マトキ!」
「はい! 護封剣!」
沈んでいる悪魔公ヤギダヨーンを光の剣で封印。
今度はタコのような姿の魔公爵オクトベアドが巨体を現して、上へ浮かぶ。
しかし大魔王ブレズアが「浮いては的になるぞ」と、灼熱の火の鳥の群れを放つ。驚く魔公爵オクトベアドを轟音とともに爆炎が包んでいく。
「きさまああああああああッ!!」
焼き焦げながらも魔公爵オクトベアドが大魔王ブレズアへ飛びかかる。
ついでに悪魔武将ギガダイーナも「俺も混ぜろよ!! 大魔王の首は俺が取る!!」と加勢。
しかも悪魔騎士ナイトメアまで「拙者も参ろう! 大魔王など恐るるに足らず!」と一気に三体で襲いかかる。
それに対して大魔王ブレズアは両手を大仰に構えた。
「天よ叫べ! 獄よ唸れ!! 魔よ荒ぶれ!!! 天獄魔閃ッ!!!」
アッセー同様に時を堰き止め、しかもなおかつ力を爆発させて大陸ごと震撼するような衝撃波を三体の悪魔に喰らわし、宙に吹っ飛ばす。
まさに刹那の閃光、一瞬にして致命となる必殺技を悪魔に叩き込んだのだ。
「ぐわああああああああああッ!!」
三体揃って沈み、マトキの護封剣に封じ込まれた。
双頭魔将ジサクジエンナは「こうなったら同士打ちを──」と焦りながら声色スキルを使おうとすると、大魔姫ミトンと魔姫ルビナスが灼熱の光球を同時撃ちして超高熱プラズマを発生させるほどの大爆発を起こした。
しかしそれでも耐えた双頭魔将ジサクジエンナが爆風から抜け出す。
「こんなもの! 我には──!!」
「問答無用!! 魔天爆炎衝ッ!!!」
なんと魔王ヘルドラーが魔剣をひと薙ぎして大爆発に爆ぜて、黒焦げに沈めた。
マトキがすかさず護封剣を刺して封印。
悪魔竜ウラギカインは味方のふりをして同士打ちを目論んでいたが、三大精霊王に見破られてフルボッコにされて敢なく沈んだ。
「ハッハーァ!! 暴れ足りないぜーァ!!」
なんとカレンが大きなハンマーを軽々と振り下ろし、噴火のように爆ぜた衝撃波が数十人もの悪魔たちを粉々に吹き飛ばす。
エルフの双子姉妹も武力一〇万級の強烈な魔法を連発して無双している。
そう大陸中から集まってきた実力者が悪魔軍勢を抑えにかかっていた。
アッセーは頼もしく思いながら、目の前の悪魔王ポットデボスへ向かい合う。
「さて、これで終わらせてもらう!!」
「フハハハハハ……! 中々の余興だったわ! 確かに終わらせよう! 貴様らのバッドエンドとしてな!」
完結まで残り2話!




