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91話「外堀を埋めてくるヒロインズ」

 商団馬車の前に、魔族の盗賊団が巨大な魔獣三頭悪魔犬(ケルベロス)を率いて現れたぞ。


「グワンッ! グワアアンッ!! グワングワンッ!!」


 理性もなく三頭で獰猛に吠える三頭悪魔犬(ケルベロス)

 こいつも『魔獣の種(ビースト・シード)』を犬あたりに食わせて、変貌させたんだろうか。

 魔族盗賊は「やっちまえ!!」と勝った気で命令する。


「相手するぞ! 来い!!」


 立ちはだかるアッセーは聖剣を手に構えている。

 三頭悪魔犬(ケルベロス)は俊敏にあちこちを走り回り、口から火炎玉を連射して爆発を連鎖させていく。

 しかしアッセーには完全防御がある。

 聖剣を下段に構えたまま、待ちの姿勢で周囲から来るあらゆる攻撃を弾いてしまう剣の結界。

 燃え盛っていた火炎が渦を巻いて、アッセーの周囲で霧散されていく。


「な、なにっ!? 結界でも張ったのかーっ!?」

「こちらの番! 行くぞッ!! 聖剣でスターライト・ライズーッ!!」


 地面スレスレから一気に振り上げた聖剣で三頭悪魔犬(ケルベロス)の顎を打ち上げた。

 轟音とともにその巨体が宙を舞い、重量感たっぷりに落下して地響きさせるとキュウンと横たわった。


「ひえええええっ!!」

「あ、あの三頭悪魔犬(ケルベロス)を一撃でっ!!?」

「悪い夢でも見てんのかよっ!?」

「逃げろ────っ!!」


 魔族盗賊団は恐怖して一目散に逃げようとするが、ローラルの令嬢扇殺法とユミの縦横疾走剣法が素早く攻撃を加えて瞬く間に全滅した。


「やっぱアッセーさんがいれば、あっさり終わるのです」

「そうだね」


 退屈そうなアルローに苦笑いするユミ。

 マトキは「やはり妖精王さまです。婚約せねば」とアッセーの腕に組み付いた。ムニッと柔らかい感触がする。

 清楚な割に体は豊満だ。

 やはり巨乳の破壊力はバツグンなので情欲ががが!


「あー! 抜けがけだめですっ!」


 ユミが駆け出して、アッセーの口へダイレクトキッスが炸裂したぞ。

 同い年だけど柔らかくて愛しい唇と舌が絡みついて快楽ががが!


「なんの負けないですわ!! アッセーさまを愛する気持ちを体で示せねばなりません!」


 ローラルはアッセーをユミから引き剥がすと、胸に埋めるように抱いた。ぱふぱふ状態だ。

 抱擁され、ムニムニ顔に押し当てられては胸を貪りたくなる肉欲ががが!


「今度はアルローの番なのですー!」


 背中に張り付くロリエルフでハーレムサンドイッチになってしまった。

 いくら性欲が弱い妖精王でも、これに理性ががが!

 商団馬車の魔族たちは血涙しながら「もげろおおおおおお!!」と嫉妬全開で叫び上がったぞ。


 たまらず“快晴の鈴”を鳴らした……。リーン!




 盗賊の討伐が済んで、再び馬車群は発車していった。

 いつもの通りローラル、アルロー、ユミ、マトキで馬車に揺れるだけなのだが、どことなく関係性が濃密になっているのを感じ取れた。

 例え浄化の鈴で性欲を吹き飛ばそうが、所詮は邪念を払うのみで累積する恋慕の情まではどうにかできない。

 気が済むまで一緒に旅をして、魔嫁ズやハーズのように他の婚約者がそれぞれを引き取ってくれると高を括ってたようだ。

 ちょい一緒にいる時間が長すぎた。


「あんさん、ずいぶん多い恋人だねぇ」


 馬を操縦している魔族にもそう言われるほどである。

 オレが「あ、違……」と言いそうになると、ユミが「うん。ずっと一緒でした」と満面な笑顔で割って入る。

 ローラルは優雅な態度で「婚約者ですわ」と得意げ。

 マトキもアルローも嬉しそうにウンウン頷く。


「あのさぁ……」

「彼は素直になれない性格なのです。まったくしょーがないのです」


 ヤレヤレとアルローがトドメを刺した。

 おかげで魔族に「羨ましい事です。ご幸せにね」とにこやかに言われる始末。

 なーんか外掘を埋められてる気がする。


「あとは正妻が誰かって事ですね。私は聖女なのでもちろんですが」

「最初に婚約したのは私ですわ」

「私は一番の古参ですよ?」

「私はエルフなので、ながーく伴侶として暮らせるのです」


 マトキが余計な事を言い出して、ローラルたちに火をつけてバチバチ火花を散らせる。

 ……これで分かった。鈴も万能じゃない。せいぜい一時だけ収めるしかできないのだ。



 夜になって真っ暗な平原で焚き火を中心にテントが囲んでいる。

 長時間馬車を走らせるのも疲れたのだろう。魔族の商人たちが酒などを飲んだり踊ったりしていた。

 アッセーたちも一緒に晩飯などを食べたりしていた。


「魔力の反応があります!」


 マトキが立ち上がる。

 なんと真上で複雑な魔法陣が二つ生成されていく。莫大な魔力を感じる。

 ローラルが「なんなんですわ!?」と見上げる。

 魔法陣から強烈な威圧が溢れている。アッセーは汗を垂らす。何者かが転移してくるであろう二体は武力一〇万クラス……。


 と、思ったら時空間転移してきた二体はオダヤッカ王国の第二王子アルテミユ姫、そして第三王子次女のアルディト姫だったぞ。


「約束通り、このアルテミユ武力一〇万に鍛え上げました!」

「アルディトも同じく!」


 アルテミユは長い金髪ロングで巨乳、アルディトはウェーブがかかった金髪ロングで美乳。美しい風貌の姉妹。

 そして見せびらかしするように噴き上げる魔法力は大地を揺るがすほどだ。

 それぞれ確かに武力一〇万級だ。

 これにはアッセーも絶句するしかない……。まさか実現するとは…………。


「「では婚約して下さりますか!」」


 エルフ姉妹に詰め寄られて、冷や汗タラタラしてアッセーは言葉が詰まる。

 まさか実現できないと思ってた約束をキッチリ果たすとは思わなかった。本当に思わなかった。マジで。


「まさかこの期に及んで約束を反故(ほご)して、婚約破棄するのです?」


 ジト目のアルローに、さすがのアッセーもグウの音も出ず、観念して「はい婚約します……」と承諾。

 エルフ姉妹は「やったー!」とアッセーを挟み込むようにムニムニ抱擁していく。柔らかくて甘美な豊満な胸に挟まれてアッセーは赤面してゆでダコのようになっていく。


「今晩は一緒に寝ましょうっ! 念願の夜這いっ!!」

「同じく! むっふー!」


 幸せそうなエルフ姉妹に引っ張られて、テントへ押し込まれた。

 すかさず「そうはさせーん」とローラル、アルロー、ユミ、マトキも入り込んで、ギュウギュウ詰めになるハメになったぞ。


「いや、詰め込みすぎィ!!」


 こんな感じで夜這いといかず、不幸中幸いか雑魚寝で一晩を過ごしたぞ。

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