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90話「ドワーフの王国で散策だ」

「知ってるぞ。他にもドワーフの王国があって、婚約している王子いるってな」


 ドワーフ王国のデーカチ王様と王妃とシッカ姫はギクッと竦んだぞ。


「な、なぜそれを!?」

「愚か者めが! この妖精王の目を欺けると思いか! お見通しである!」

「「「す、す、すみませんでしたあーっ!!」」」


 三人とも平伏する。

 実はサイツオイ竜王国であらかじめ情報を聞いていたのだ。

 この先、ドワーフ王国へ着く予定なので、もしかしたらオダヤッカ王国のエルフ王族みたいな事になると予想しての事だ。


「ガンコン王国の第一王子ウントスンとの婚約の破棄は許さない。それに(ドワーフ的に)イケメンだし賢君の素質あるのだろうから、そのまま婚約してくれ」

「あううう……」


 ギャグ涙を流すシッカ姫。

 彼女的にイケメン王子様より、極レアな妖精王さまに優先が向いてんだろうがな。



 そのあと、宿に泊まろうと王宮を出ていこうとするが、オダヤッカ王国と同じく必死に引き止めてきた。

 妖精王さまを一般の宿屋に泊まらすなど無礼を働けないって理由だ。

 めんどくせぇ……。


 それにしてもドワーフの城はかなりしっかりした建築構造だ。

 ただレンガで積んでいるだけではなく、巧みに空間を把握して利便性や温度管理もちゃんとできていた。

 外はまだ冷えているってのに、城内は暖かい。

 広い食堂で王様たちと一緒に晩飯する事になったが、木目模様を装飾のように拵えたキレイなテーブルが目に入った。


「このスープも肉も美味しいな」

「喜んでいただけで何よりです」


 野生動物の肉を使っていると思うが、臭みなどを除去して調理されている。

 ドワーフは手先が器用で鍛治、工芸、建築に限らず、料理などにも精通しているようだった。


「やはり妖精王さまと関係を持ちたかったのだがな……」

「いろいろ察するけど、婚約先にしてんだからしょうがねぇだろ。つーか、こっちは婚約したいって人がもういるしなぁ」

「「「婚約したいって、何!!?」」」


 やはりローラル、アルロー、ユミ、マトキが声を揃えて抗議してきた。

 既に婚約しているつもりでいるようだ。

 例え一人もいなくてもドワーフ姫さんと婚約するつもりはないがな。


「肉体関係を持ったら婚約って意味ですね」

「おい! ユミ!!」


 少し恥じらいを見せるユミに思わず突っ込む。

 シッカ姫が夜這いしてきそうだから誤解の無いように説明をして差し上げた。

 なので今夜はぐっすり寝れた。


 ドワーフの国を散策してみると、色んなアクセサリーや武具などが売られていた。どれここれも流通しているのではなく、それぞれ独自に作り出されているみたいだ。

 ユミに新しい剣を、ローラルに魔法のかかった扇を、アルローに精度の高い杖を、マトキにはアクセサリーをそれぞれ買った。


「シルバリル魔法金属で鍛えられた『ウィングソード』いいです……」


 ユミは曲線を描く銀の刀身に目をキラキラさせていた。

 まるで翼のような刀身形状。軽くて頑丈。切れ味もよさそう。彼女の素早く走りながら斬るに適している。


「この『妖精扇』も装飾と強度を兼ね備えてますわ」


 ローラルの扇もシルバリル魔法金属だが、特殊な魔法でコーティングされている。魔法を付加させて戦うに適している。

 そればかりか魔法をスムーズに通せるので精度の高い技が期待できる。

 それから妖精の羽を模したような美しい装飾も目を引く。宝石も散りばめられていて高級感が一段と増している。


「これはレアなのです……。マジで『白樹の賢者杖』なのです」


 アルローは震えながら白い木の杖をかざしている。

 先っぽに青い宝珠が拵えている木の杖。装飾のように小さな葉っぱが伸びている。

 魔法の精度と威力を増幅するらしい。


「素敵なアクセサリーを買ってくれてありがとうです。ああ『精霊石の首飾り』いいです……」


 シルバリルを使った首飾りで、魔法が込められた宝石を散りばめられている。

 ドワーフの巧みな装飾は細かくて美しく仕立て上げられている。感知能力を高め、範囲を広げる効果を持っている。更に邪念が少しばかり感知できる仕組みだ。


「ユミさんがムラムラしてますね」

「わざわざ言わないでいいです……」


 もじもじ赤らめるユミ。

 どうやらアッセーとイチャイチャしてエッチまでする妄想しているらしい。

 溺れるような恋愛がしたいという願望がマトキに知られるみたいで、そりゃ恥ずかしいだろう。


「うふふ。まぁ、私もしていないわけじゃないです。アッセーに騎乗位で……」

「わぁー」

「おいおいおい!」


 マトキの思わぬ願望を聞いて、なんか戦慄すら感じた。

 聖女とはいえヒトに変わりがない。普通に性欲もあって当然だろう。

 ちなみにオレは普通に強いから装備品は買わなかった。そもそも聖剣あるし。


「そういや、近くに鉱山ダンジョンがあったな」

「あの自称世界一ダンジョンにも負けないくらい、貴重な鉱石や宝石が取れるのです」

「ドワーフの鉱夫さんがたくさん働いていますわ」


 ダンジョンとは言ったが、基本的にドワーフの所有地で勝手に入ってはダメだそうだ。

 ドワーフから話を聞けば、複雑に入り組んだ洞窟でトロッコを走らせる線路が行き届いているらしい。

 この国のドワーフたちに配ったり、商団馬車の人に売って貿易したりしてるっぽい。



「さて、次行くかー」


 三日後、特に事件は起こりもせず依頼通りに魔族の商団馬車へ乗り込んで国を後にした。

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