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89話「ドワーフの王国でも婚約破棄だっ!」

 魔族の商団馬車が交易路を走っている。

 ずっと続いていた雪原や雪をかぶった針葉樹の森林の景色。途中で竜王国が二ヶ国見えたりした。

 ソコツエイ竜王国、チカジマン竜王国だな。

 基本、ドラゴン族や龍人は寒冷地帯など厳しい環境でもヘッチャラなので竜王国が多いのも必然だった。

 ……もちろん、野生動物がドラゴン化したやつとも戦闘があったぞ。


「天使族の野望が潰えてから収まるだろうな」


 なんかジャスティスメシアっつー組織の女神さまを騙ったボスが、プロパガンダの為に尖兵天使マーエルに野生動物とかをドラゴン化させて大量発生させていた。

 アッセーが三大奥義で無敵化していたボスさえ倒してしまったので、大量発生は今後ない。


「でもあんな大勢の天使族はゾッとしましたわ」


 ローラルは、空からおびただしい大軍にも恐怖していた。

 アッセーがボスを倒すまで、一応みんなで戦ってたらしい。短期決戦で終わったからこれだけど、消耗戦になってたら絶対勝てなかった。


「あのブス熾天使が巨大な隕石落としてきた辺りで天使軍団の統率乱れたのです」

「うん。パーッて蜘蛛の子を散らすように逃げ惑ってたよ」


 アルローとユミがそう言ってくる。

 これもアッセーが天使大軍を突き抜け、隕石群まで散らしていったから、ギャオオオンしたブス熾天使が巨大隕石を降らしたせいで厳しい戦いが中断されたそう。


「その後、ワイバーン部隊やアッセーが逃げた天使たちを捕まえてましたね」

「逃がしたやつもいるかもしんねーけどな」


 ボスを倒したあと、逃げた天使が悪さしないとも限らないので飛び回って捕まえていったぞ。

 もう帰る場所がないから観念したやつも何人かいた。

 各国にも天使族の事を知らせてたし、もし逃したやつが出てきても取り押さえられるだろう。


「マーエルって方が特段強かったですわね」

「ああ」


 ローラルの言う通り、尖兵天使マーエルは天使族の中でも強かったのでプロパガンダの作戦を任されたそうだ。

 それ以外は増やしただけの天使族で、そんな強くはない。

 ブス熾天使は本当に数を増やすだけ増やして勢力拡大しようとしていた。

 もし鍛えるなどカキュラムを取り入れてたら、謀反されて自らの立場が危うくなるからだろうか。


「マーエルが言ってたように、あいつ盲目的に従えって独裁してたらしいから反発されるのが怖かったんだろう。そのおかげで勝てたとも言えるか」

「それでも、あの数はヤベーなのです」

「竜騎士ドラギトさんは数千人って言ってました」



 二週間かけて、寒冷地帯に終わりが見えた。

 もちろん途中で魔族の国や吸血鬼の国にも訪れはした。


「魔王がいない国もあるんですわね」

「魔領主はいるのです」

「バンパイアにストーカーされて怖かったです……」


 ユミはブルブルしている。

 吸血鬼の国は文字通り、バンパイアたちが暮らす国だ。夜が特に活発になる。

 サキュバスやインキュバスなどが夜の店を営んでいる。

 人間の若いユミはバンパイアにとっては美味しそうに見えたんだろう。アッセーがそばにいたから手出しできないが、それでも視線は途絶えなかった。


「気配を感じ取れるまで腕上がってる証拠だぞ」

「うん」


 修行する前だったら「なんとなく視線を感じる」程度の違和感しかなかっただろう。

 今は「自分が狙われている」と明確に気配を感じ取れるまで敏感になっていた。


「バンパイアは確かに強いけど、今のユミなら大丈夫と思うぞ」


 ユミを撫でながら、雪が途切れ途切れで流れる景色を眺めた。

 魔族の商団馬車が方向を変えて、塔山(タワー)方向の目標の国へ目指していった。

 今度は草木が乏しく岩山があちこち突き出ている赤い荒野。


「そろそろドワーフの国だぞ」

「ユウヅキカヌ王国なのです……」


 傾斜の荒野であちこち円柱のレンガ家が建っている。エントツがあって煙を噴いている。

 積まれた木材や木箱と樽が多い。

 そしてずんぐり低身長で横幅な毛深い男が多くいた。女性でさえヒゲが生えてあり、逞しい体格をしている。

 エルフとヒトの中間に位置する生命体だ。


「ドワーフさんも挨拶してきますね」


 ユミの言う通り、こちらが歩いているとドワーフたちが次々と頭を下げてきている。

 エルフと同様、妖精王だって視えてんだろうなぁ……。

 城へ訪問しろってなったりしないかな? ないよね?


「依頼ご苦労様でした。妖精王さま」


 ギルドでドワーフの受付嬢が深々と頭を下げる。

 早々に旅立とうと、また次の依頼を受けてみると少しビックリした顔をみせた。


「あの、デーカチ王様と謁見されないのですか?」

「オレはヒトの貴族だからなぁ」

「もう! 妖精王さまだって、みんな分かってますよ!」


 他のギルド職員や冒険者も、みんな恐れ入りながら見てきている。

 基本的にドワーフもエルフと同様、目上の人って認識だ。


「ううっ……」


 仕方ないので顔だけ見せる事にした。

 王宮へは兵士のドワーフがすんなり通してもらえた。顔パスで通れるなんて王族みたい。

 やはり並んでいるドワーフ兵士が敬礼していく。


「おお! 妖精王アッセーさま、はるばる会いにこられて光栄ですぞ」

「天使族のテロ事件なども伺っております」


 丁重に王様と王妃が跪いた。

 こっちが跪こうとしたらこれだ。普通は逆なのに、と困惑するしかない。

 ……とはいえ妖精王なんて、ここでは滅多にお目におかけない激レア種族だろうし。


「こちら第一王子シッカ姫です」


 なんとヒゲを剃って身なりをキレイにしたドワーフの姫が頭を下げてくる。

 ずんぐりではあるが色っぽい体型だ。

 モジモジしてほおを赤らめている。


「自慢の我が娘じゃ。この日の為に……」

「婚約破棄で」

「「「そんなあああああああああッッ!!!」」」


 王様、王妃、姫様揃って濃い顔で慟哭した。

予告


 100話で完結する事になりまーす。

 ここまで読んでくれた読者さんには感謝しかないです。

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