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86話「タワーの頂上へ届け!! アッセーの奥義!!」

 女神エーニスックと偽り、ヴェールの奥で引きこもっていた最高階級“熾天使(セラフ)”は、なんと自称女神フェミニエルだった。

 この星杯(カリスター)のエネルギーを我がものとして超巨大化を繰り返し、空を覆うほどに八枚の翼が広がっていく。


「元々、長い時間をかけて天使族を増やしながら、魔族や亜人どもをプロパガンダで絶滅させようと思ったが、各国にそれが知れ渡った以上は無意味! やはり暴力は全てを解決するッ!!」


 数百年も立てていた計画が瓦解して怒り狂った女神フェミニエルは、ヒスを起こして引きこもりをやめてまで、ギャオオオンしてきたぞ。


「やっぱニセモンだったな!! 本物の女神さまは倫理感欠けるけど、そんなブスじゃねぇッ!!」

「妖精王まで、それを言うかーっ!!」


 天使大軍団の層を突き破ったアッセーに、フェミニエルはギャオオオンを向けてきた。

 フェミニエルは六つの腕を掲げて、立ち込める暗雲から、無数の隕石を降らせた。

 轟々燃え盛る隕石がアッセーへ吸い寄せられるかのように殺到。


「突き破れ────ッ!!」


 超速回転し続ける太陽風車をかざしたまま、隕石群に突っ込む。

 全ての隕石に無数の亀裂が走り、轟音とともに四方八方に爆ぜ散った。

 怒りの形相で何度も隕石を降らせるが、ことごとく突破されている。アッセーの破竹の勢いが止まらぬ事にさすがのフェミニエルも焦りの汗を垂らす。


「ならば、もういいッ!! 代わりなどいくらでもある! 次の星杯(カリスター)へ行けば済むことッ!!」


 なんと轟々燃え盛る超巨大な隕石が暗雲から降ってくる。

 これが大陸に落ちれば星杯(カリスター)が砕け散るほどの破壊力になるだろう。人類滅亡級の恐るべき物量。それがアッセーへ襲いかかる。


「次があると思ってんじゃねーぞッ!!」


 そのまま激突し、全てが震撼する。

 大陸中にいる誰もが、その振動に戦慄を覚える。上空の光景に見開き、世の終末と恐れおののくしかない。

 空が赤く輝き、超巨大な隕石が空に広がっているのだ。

 はるか上空の彼方なのに、振動が地上にまで届くほどの威力と感じ取れる。


「私には次があるのだ!! きさまらなど滅ぼしても問題ない!! どうせ誰も私の素晴らしさと美しさを理解せぬのだッ!! ギャオオオンッ!!」


 超巨大隕石が下降を続けていくが、徐々に頓挫していく。

 下から亀裂が大きくなっていく。それは徐々に全てに行き渡っていく。フェミニエルは驚愕に満ちていく。


「今まで高圧的で暴力的でやってきただけで、何が素晴らしくて何が美しいか何も全然伝えてないだろーッ!!」

「なッッ!!!?」


 アッセーの叫びとともに、なんと超巨大隕石が粉々に破裂して四方八方に飛び散ってしまった。

 そしてアッセーが急上昇を続け、ついに頂上へ届く。

 その雄々しい姿にフェミニエルは見開いていく。


「頂上へたどり着いたあああああああッ!!」


 そのまま超巨大な女神フェミニエルへ目指す。

 しかし憤怒をあらわに、空を覆うほどの八つの白翼を閉じるようにアッセーを挟み込まんとする。

 それでも太陽風車が粉々に斬り散らしていく。


「だが、それでも!! 女神フェミニエルは永劫無敵の存在ッ!!」


 今度は超巨大な天聖剣を六本の腕で握って渾身込めて振り下ろす。

 ちっぽけなアッセーと太陽風車と激突して、世界中に震撼を広げた。しかし粉々に爆ぜたのは超巨大天聖剣。


「な、なにいいいいいいッッ!!?」

「もうこれで……終わりだああああぁぁぁぁぁッ!!」

「そんなもの効かぬ!! 効かあああぬッ!! ギャオオオンッ!!」

「奥義を喰らえーっ!! サンライトォ──・インフィニティライジング────ッ!!!」


 ついにアッセーの太陽風車が、超巨大なフェミニエルの胴体に届いた。

 するとフェミニエルは胴体が押されて屈む体勢になっていく。胴にめり込んだ太陽風車は未だ超高速回転を続け、周囲に乱気流の渦が生まれていく。

 それは対流層を築き上げていって木星みたいな巨大な球状に象っていった。


「ぬぐああああああああ!!? だ、だが……この程度ッッ……!!!」


 絶えず削り続けてくる数え切れない程の渦が密集する対流層球に、フェミニエルは超再生を繰り返して耐えきろうとする。

 木星みたいな球状は徐々に橙に滲んでいって、やがては燃え盛る火炎球となり、プロミネンスが獰猛に噴かれる。

 大陸中の人々にとっては初めて見るであろう太陽の姿だ。


「あああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁ…………!!!!」


 超高熱と超重力と超気圧に加え、延々と削ってくる高密度の対流層に、さすがのフェミニエルも苦悶を浮かべながら激痛地獄に苛まされていく。

 やがて諦めて無限再生を手離し、跡形もなく削り散らされていく。


「ぁぁぁぁぁ…………!!」


 役目を終えた太陽はパシュンと超速収縮して消えていった。

 それを見届けたアッセーは「ふう」と、ひと仕事を終えた爽やかな顔で一息ついた。


「ついに終わった……!」


 ゆっくり降りていくと、ローラル、ユミ、アルロー、マトキ、ハーズが歓喜しながら迎えてくれた。

 カナーリ姫は「やはり婚約せねば!」と興奮しているようだ。




 ……女神エーニスックのいる星幽界域(アストラル・エリア)のプライベート空間。


《よくも私の名を騙ってくれたわね! さぁじっくり再教育しましょうか! まず説教からね!》

《はい……ごめんなさいぃ…………》


 腕を組む女神エーニスックを前に、“熾天使(セラフ)”フェミニエルは正座でショボン俯いていた。

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