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79話「尖兵天使の傲慢不遜な自己紹介!」

 アッセーたちが追放された、その翌日……。

 破損した王城を、龍人たちがせっせと修復に取り掛かっていた。


「パトロールは怠るなよ?」

「百も承知です」


 修復を眺めていたモットツオ王様の念押しに、竜騎士ドラギトが頷く。

 いつもののようにワイバーンに乗り込んで、龍人の部下を率いて空へと飛び去っていく。

 未だ尻尾が掴めない野生ドラゴンの大量発生の原因を突き止めるべき、パトロールを一日も欠かさず繰り返すのだ。




 雪をかぶる針葉樹に挟まれた雪原の交易路……。

 横倒しになっている馬車から火が上がっていて黒煙が立ち上っている。

 他の商団馬車もあちこち散乱していて、突き立つ武器のそばで獣人や魔族が複数横たわっていた。


「悪く思わんでくれよ」


 ハゲの半裸男が見下ろす先に、犬の獣人の母と娘が縮こまっていた。


「アッセーのせいで一ヶ月くらいなーんも発散できなかったしね。天使もずっと我慢できないんだよ。久々の情欲を満たさせてもらおうか……」

「ひっ……!」

「女獣人をヤり殺す……、いいね」


 自分で天使と言うハゲの半裸男は、まるで盗賊風情のように下卑た笑みで性欲を剥き出しにしてきた。

 じっくり追い詰めるように歩み寄る半裸男に、獣人は涙目で震えるばかり。


「そこ! 何をしておるかッ!!」


 風圧とともにワイバーンが滑り込んで降り立つ。すぐさま竜騎士ドラギトが飛び出して半裸男へ槍で突き出す。

 寸前で半裸男は飛び退いて、槍の軌跡が通り過ぎて遠くの森林を打ち砕く。


「やれやれ……、無粋ですね。こっちのお楽しみ済むまで待ってくれてもいいんですがねぇ」


 竜騎士ドラギトが険悪な顔で身構えているまま、他の竜騎士部隊が獣人の母娘を保護していく。

 それでも半裸男はいけしゃあしゃあと笑みを浮かべている。


「貴様は……ヒトか!?」

「あーいやいや。下等生物と一緒にせんでくれよ。まぁ私も人間から進化した天使族ですがね。この際、最初で最後の自己紹介してあげましょーか」


 ぶてぶてしく後頭部をかきながらやる気なさそうな顔でドラギトへ向き合う。

 背中からバキバキと白い羽毛のようなのが連なっていって、まるで両翼のように広がっていった。


「私はエーニスック女神さまに使える尖兵天使マーエルです。よろしく、そしてさようなら」

「女神さまの……? 俺はサイツオイ竜王国の竜騎士部隊の隊長を務めるドラギトだ!」

「はいはい」


 尖兵天使マーエルは背中の両翼をブンと振るって、羽毛のような白い矢を無数放つ。

 ドラギトは全身を竜の鱗でポコポコ連なって小さなドラゴンを象って、全て弾ききっていく。


「ほう」


 雪原に散乱した白い羽毛のようなのを、ドラギトは手に取る。

 薄く硬く鋭利だ。まるで手裏剣のようである。もしまともに喰らえば細切れにされていたかもしれない。


「骨……か」

「そうですよ。天使族は『聖骨(セイボーン)』によって様々な能力を持ちます。冥土の土産にいいかもしれませんね」


 マーエルの背中から生えている白い翼はバキバキと軋みながら広がっていく。

 そう、羽毛ではなくウロコのように白い骨で連ねているのだ。

 そしてフワリと少し浮き出す。


「さて……少々遊びますか」


 右掌から骨が一本バキバキ伸びてきて、徐々に剣を象っていく。

 真っ白な聖剣かと思うほど美しい装飾を備える。


「天聖剣……。天使族の『聖骨(セイボーン)』によって生成された、聖剣に匹敵する自前の剣。光栄に思うがいいですよ。トカゲ風情さん」

「見下しやがって……、今に痛い目みるぞ」

「さーてどうですかねぇ?」


 マーエルは低速飛行して、ドラギトへと天聖剣を振るう。

 それに対してドラゴンのオーラで覆った槍でかざして受け止める。踏ん張る足元から衝撃波が吹き荒れた。

 鍔迫り合いするだけで周囲がビリビリ震え上がっていく。


「むっ!」

「フッ!」


 互い跳ね除けるように得物を弾きあって、ガンと大気が破裂した。

 吹き荒れる烈風に、遠く離れた龍人部隊も腕で顔を庇う。なおも地面が震える。


「観戦している場合じゃない! 召喚の魔法陣を!」

「はっ!」

「ははっ!」

「こっちは親子を避難させる!」


 龍人部隊は急いで複雑な魔法陣を描き、余った龍人は獣人の親子を遠くへ避難していく。

 ドラギトはその様子を確認し、笑みを浮かべる。

 しばらくは時間稼ぎしようと、ドラギトは戦意を昂ぶらせて腰を落としていく。


「かあっ!!」


 ドラギトは獰猛な竜のように大地を爆発させて、槍を振り下ろしながら飛びかかる。

 マーエルは笑みながら天聖剣をかざして受け止め、足元の積雪が粉々に爆ぜる。


「むおおおっ!!」


 今度は稲光が迸った槍を乱雑に振り回して、マーエルを防戦一方に追い立てていく。それでもマーエルは余裕の笑みを浮かべたまま捌ききっていく。


「のこのこと来てくれてありがたいです。王様と一緒だと手こずりそうなんでね。まず貴方から始末して差し上げます!」

「なぜ、女神さまの手下がそんな事をッ!?」


 マーエルは飛び退いて、数百メートル向こうに着地。


「はははは! もちろん人類だけでこの世界を支配して繁栄させるんです! 貴方たち異形の者は虚構の存在として葬り去られるべきです! その為に貴方たちを世界の敵に仕立てあげなくてはねぇ!!」


 狂気の笑みでマーエルは翼を広げて飛びかかる。

 鋭い天聖剣の振るう剣戟が数多と軌跡を描き、ドラギトは槍を縦横無尽に振るって捌いていく。目にも留まらぬ攻防の応酬。


「クッ! 要はプロパガンダか! ゲスが!」

「女神さまにとっては魔族も貴方たち亜人どもも目障りなんですよ! 対等の関係のままじゃ侵略しにくいじゃないですか!」

「中身はヒトどもと変わらぬ、底知れない悪意!! ここは見過ごせぬ!」

「ははははははは!!」


 ドラギトを追い詰めていく事に喜ぶマーエル。

 もう悪意を隠す事もせず、弱者をいたぶる喜びに感情を剥き出しにしている。

 劣勢ながらも奮起してマーエルの天聖剣を弾いて、後ろへ飛び退く。


「竜雷矢!!」


 ドラギトは高速で槍で突きを連続で繰り返して、雷の矢を無数放つ。

 しかしマーエルは左右交互にひょいひょい回避して、前進していく。

 それを見かねて、ドラギトは頭を覆う竜のオーラの口を開けて、稲光が収束して光球を象っていく。


「雷竜砲ッ!!」


 高速で撃ちだし、嬉々とするマーエルもろとも閃光が全てを覆う。

 広範囲を削り取るように大爆発球が膨らんでいって、衝撃波が波紋のように吹き荒れて森林を薙ぎ散らしていく。

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