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76話「竜騎士ドラギト参上! そして警告!」

 アッセーたちは野生ドラゴンがうじゃうじゃいる真相を知ってしまった。


 動物かモンスターか通常の生物が、暴走して理性を失った野生のドラゴンの死骸を食ってしまう事で伝染してしまう。

 死骸のそれも『魔獣の種(ビースト・シード)』の塊みたいなもので、食べた何割かがドラゴン化する。

 いくら退治しても繰り返すだけだ。


「埋葬しておこう」


 アッセーは掌から浮かした火炎球を下手投げで放り、跡形もなく燃やした。

 半ばドラゴン化した鳥の死骸も同じく燃やした。

 これなら食べられて伝染する事は避けられるはず。


「すごい魔力なのです。ドラゴンは耐性高いのに問答無用で燃やせたのです」

「魔法使いとしても凄いんですね……」

「貴族は高い魔力を持つ素質の人が多いから不思議ではないけれど」

「剣ばっかり使ってたので意外です」


 アルロー、ユミ、ローラル、マトキそれぞれ感嘆していた。

 そういや実はオレが『鍵祈手(キーホルダー)』で、多くのクラスのスキルを得ているって言ってなかったっけ?

 ……言ってなかったかも。


「ん?」


 そういえば自分の中の『運命の鍵』を感じられないな。

 胸に手を当てても、全く感覚が無い。まるで無くなったかのようだ。

 たぶん転生前の本体(ナッセ)であるオレのみに宿ってる。あくまで今のオレは『分霊(スクナビコナ)』だ。アッセーの体を器にしているが、所詮は本体(ナッセ)の分身でしかない。


「どうしたんですか?」

「いや……」


 って事は、オレはもう『鍵祈手(キーホルダー)』じゃないって事か?



 すると高い空をワイバーンの群れが統率の取れた編隊を組んで飛んでいた。

 思わず見上げてしまった。


「あれはサイツオイ竜王国の誇る竜騎士のワイバーン部隊ですね」


 マトキがそう言う。

 ああやって空からパトロールしているらしい。すると、こちらを視認してかクルッと翻してきたぞ。

 丁重にワイバーンが降りてきて風圧が及んだ。

 鞍の上に乗っていた騎士が降りてきた。

 後ろにいるワイバーン部隊は止まったように動いていない。


「そこで何をしている? ここは危な……」


 警告してくるが途中で切り、丁重に会釈してきた。

 甲を脱いできて、美形なヒトの顔があらわになった。龍人だらけに国に?


「ドラゴンの力を宿した、竜騎士隊長ドラギトさん」

「さんはいいです。貴方は妖精王さまなんですから、敬語は不要ですよ」


 エルフと同じく、こちらのオーラが見えるらしい。こちらも同様でドラギトがドラゴンを宿したって分かった。

 ドラギトの体からドラゴンって分かるオーラがにじみ出ている。

 ハーズよりも完成されている。


「わたしと同じドラゴン?」

「ああ、そうだ。……見えるか?」

「うん。体から光のようなのが」


 竜騎士ドラギトは「ほう。そちらもか」とハーズを見やる。


「オレが保護して育てている」

「それは良かった。俺も若かった頃も師匠に苦労をかけてたしな。暴走はタチが悪い」

「師匠かー」

「ああ。尊敬している。今の俺がいるのも師匠のおかげだ」


 懐かしむように笑んでいる。


「そっかー。いい師匠だな」

「ゲキリンさまは厳しかったがな、しかし優しいところもある」

「え? ゲキリンさんの??」

「知ってるのか?」


 知ってるもなにも、ガチでやりかけてたぞ。

 オダヤッカ王国地帯の鉱山で龍人の長として、どっか里を構えている。

 不貞に鉱山を独占しようとして侵入してきた刺客を追い払ってた。

 マジで強いぞ。


「見せておこうか」


 なんとドラギトは全身からオーラのウロコがポコポコ急速発生して、あっという間にドラゴンを模した半透明のオーラが覆った。

 膨れ上がった重々しい威圧が感じられる。

 半透明で青白いのがかかっていて、稲光が迸っている。


「雷系のドラゴン?」

「そうだ」


 理性を保っていて本当に完成されている。

 今はちょい見せだが、その気になればバージョンアップもできるのだろう。


 同じ仲間だからか、ハーズは興味津々な目を向けていた。



 その後ドラゴン化を解除したドラギトと、しばらく談笑をしていた。

 後ろの龍人も和やかになってた。


「おっと、道草を食ってる場合じゃないな。今は警戒体制でパトロールを行っている」

「何かあったのか?」

「野生のドラゴンが妙に増えすぎている。原因は分からないが、このまま増え続ければ商団馬車も来れなくなって貿易が止まりかねん」

「たまに大量発生する??」

「いや……、違う。これまでは一度もなかったケースだ。人為的な現象としか思えない」


 ドラギトは険しい顔で森林を見やる。

 龍人騎士も円陣を組むように周囲を警戒したままだ。


「誰かが『魔獣の種(ビースト・シード)』をばら撒いているってことか?」

「ばらまけるような代物じゃないが、そうとしか思えない」


 そう、ドラゴン化は容易に増やせるものでもない。

 家畜のようにドラゴンを飼養し繁殖させるのは相当困難のはず……。

 そもそも暴走のリスクがあるドラゴンは家畜化できるもんじゃない。ましてや繁殖などさせたら危険性が増す。ヒトじゃあ飼養は難しい。


「悪意のある“人間じゃない何か”がいるとか??」

「……かもな。ともかく君たちも気をつけてくれ」

「分かった。そっちもなー」


 手を振って、飛び去っていく竜騎士部隊を見送った。


「そうやってパトロールしても、ドラゴンを飼養する牧場なんてのがあったら、とっくに見つかっても良さそうなもんだな」

「なんだか不気味ですわ……」


 ローラルを始め、アルロー、ユミ、マトキも不安げだ。

 実は一キロほどの『察知(サーチ)』を、針のように長く伸ばしてグルグル周回させても、怪しいものは感知できていない。

 野生のドラゴンが生息しているところも感知できているが、平常通りなのだろう。

 こっそりくすねていたオーラのウロコを取り出す。


「採ってたのです!?」

「ああ。見ろ。種みたいになってる」

「まぁ、本当……」


 最初は皮膚から分泌された角張った欠片だったのが、種のような丸くて先が尖っているのに変わっていた。


「摂食して飲み込んだ破片がこれに代わる。それが発芽して体内から侵食していく。そしてドラゴン化してしまう」

「怖いですわ……」

「なのです」

「ひええ」


 ビビってる最中で、アッセーは種を火魔法(ホノ系)で燃やしてしまう。

 ハーズがアッセーの裾を握ってきて、その不安が感じられる。


「わたしも食って……こんな……」

「心配すんなって、あのドラギトだって同じように食べてああなってるんだし。でぇじょうぶだ」


 アッセーの言葉に安心したのか、強張っていた顔が緩んでくる。

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