表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
70/100

70話「次は雪原地帯へ冒険!?」

 複製アッセーズと魔嫁ズの結婚式バーゲンセールから一ヶ月後……。

 アッセーはローラル、アルロー、ユミ、マトキと一緒に魔族領の交易路を商団馬車に乗って通っていた。

 ちなみにそれ以外はローブで身を包んだ子ども。


「うーん。今は落ち着いているが……」


 ローブの子どもをアッセーは心配そうに眺めていた。


「多重結婚式の時に、アルテミユ姉とアルディト姉に過酷な条件をつけやがったのです」

「しょうがねぇだろ。ああ言わないと、婚約してくるし一緒についてくんぞ」

「武力一〇万以上に上げないと婚約しないって、ムチャを言いやがったのです!」

「いい名案ですね」


 アルローはぶすくれるが、ユミはひと安心している。

 恐らくアルロー的に妖精王アッセーが姉妹たちと重婚して、オダヤッカ王国の王様を継承して欲しいのだろうが、そうはいかねぇ。


「魔鏡も家族のところに置いてよろしいのですか?」

「制約で複製できねーし、喋れるだけの鏡だしな。洞窟でぼっちになるよか、オレの両親と仲良くやるほうが有意義だろ」

「それもそうですわね」


 ローラルはなびく髪を手で押さえている。

 魔鏡は複製アッセーズの生みの親なわけだし、家族で預かるほうがいい。

 両親だって話し相手が増えて喜んでいただろうし。


「あ、白いの見えてきた!?」


 馬車でガタンゴトン揺られながら森林を抜けると、雪原が広がるようになった。

 中央の塔山(タワー)まで段差的に雪原が広がっていて、針葉樹が疎らと自生している。そんな壮大な景色にローラル、アルロー、ユミ、マトキは感嘆した。


「初めて見た……」

「あの光珠(オーブ)は楕円形に周回してるっぽい。なので、この地域は光珠(オーブ)が遠くなっているから冷えているんだそうだ」

「本で読んだのですか?」

「ああ。小さい頃から本の虫になってたおかげで、色々知っている。こうしてこの目で見るのは初めてだが」


 相変わらずユミはべったりアッセーの腕に組み付いてスリスリが絶えない。


「寒いのですー!」


 ドサクサ紛れにアルローも反対側から組み付いてくる。

 もう欲求を隠そうともしない。

 ……とはいえ魔族領は確かに冷えた地域が割と多い。そして、この場所は……。



「グオオオオオオッ!!!」


 なんとワイバーンが七匹空から強襲してくる。

 魔族の商人馬車は加速する。しかし追いついてくるのも時間の問題だ。

 他の雇われた冒険者が弓などで応戦している。


「この辺はドラゴン族が生息する。あのような凶暴なやつが襲撃してきやすい」

「きますわよ! 令嬢扇殺法・火炎旋舞ーっ!!」


 ローラルは扇を振るって火炎の渦でワイバーン数匹を巻き込む。

 しかし生き残った二匹が火炎から抜け出す。


「グワアアッ!!」

「なっ!?」


 驚くローラルだが、見えない結界にワイバーンが触れてバチッと稲光が迸った。さすがにワイバーンも怯む。

 なんとマトキが祈る仕草で結界を張っていたのだ。


「さっすが聖女バリアー」


 アッセーは光のナイフに光魔法(レヴ系)を付加させて、遠距離スラッシュで二匹まとめて裂いた。

 新手のワイバーンが噛み付かんと襲いかかるところを、アルローが「水珠爆(スプラッシュ)なのです!」と、無数の水玉を放って撃ち抜いた。


「さすがエルフ。高い魔力は伊達じゃねぇな」

「えへん、なのです」


 とはいえ、ワイバーンでさえ武力一〇〇〇〇もする。

 強靭な爪と牙、そして火炎ブレス。しかも硬いウロコで生半可な武器は通らない。

 本来ならベテラン冒険者が数人がかりで挑むべき強敵モンスターだ。


「結界で助かりました。さすが聖女さまですね」

「はい。モンスターを感知したら即座に張りますので」

「頼もしい限りだ」


 馬を操縦している魔族の商人がマトキに礼を言ってくる。

 聖女の結界がなかったら、多少の犠牲は出ていただろう。おかげで他の冒険者も死傷者がいない。



「グオオオオオオ!!」


 今度は雪原を這うドラゴン。緑のウロコで覆われ、背中に両翼を備え、四本足で雪原を走る。

 スタンダートなドラゴンではあるが、武力一〇〇〇〇級の強敵の上に群れる。

 今回は数十匹も群れてて、冒険者たちが戦慄を帯びるほどだ。しかも前に立ち塞がって通れない。


「なんとしても前を切り拓け!!」

「怯むなー!」

「うおおおおおお!!」


 馬車を止めて、冒険者たちが飛び出して迎撃に向かう。

 剣や弓で攻撃するがなかなか通らない。逆に爪で鎧などが裂かれる。吹き出される火炎で爆発が広がる。

 マトキの防御魔法がなかったら確実に死者が出ていた。


「こりゃ荷が重いかな?」


 アッセーは光の弓を生成し、屈折する追尾の矢で次々と射抜いていく。

 それに驚いた冒険者が「うおおお! あのアッセーがいたあああ!!」と歓喜する。


「みんな、オレもそんな万能じゃないので頼りきりは危険だ。オレがいない場合はどうする? だから冒険者として己の力を信じて戦い抜こう!」

「「「オオオオオーッ!!」」」


 士気高揚していく冒険者。

 しかしアッセーは逆に気落ちしていく。アルローは気になる。


「なんで気が進まないのです?」

「オレに頼りきりになると怠慢が進むからなぁ。こうして奮い立たせないと冒険者として矜持はないだろ?」

「そんな事も考えてらしたのね」


 なぜ、最初っから全力でモンスターを排除しないのかが腑に落ちたローラル。

 無敵のアッセーがいれば全部任せていればいいやと怠慢されると、いざという時に困るからだ。


「そして今回の依頼が()()だからな……」


 アッセーはチラッと、馬車内の隅に佇むローブの子どもを見やる。

 ローブで顔以外を覆う人間。沈んだような目。そして頬にはウロコっぽいのが窺える。


魔獣の種(ビースト・シード)を摂取してドラゴン化が進んだ人間の子どもを、サイツオイ竜王国へ送り届ける依頼。何事もなくクリアできるといいが……」

「そうですわね」

「なのです!」

「……がんばりましょう」

「この聖女にお任せあれ」


 ローラル、アルロー、ユミ、マトキはそう張り切るが……。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ