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69話「いよいよ黒幕の熾天使が蠢く!」

 新婚初夜で、複製アッセーズはそれぞれの魔嫁とギシギシアンアンしていた。

 大魔姫ミトン、魔姫ルビナス、オーガ族のエアリル、アラクネのエリル、ラミアのロローマ、ウェアウルフのカミカ、アルラウネのバーナッツ、サキュバスのジョレリア、ダークエルフのチャーアーは複製アッセーズと濃密に絡んで色っぽく喘ぎ声を発している。

 そんなハートの嵐が飛び散るラブラブな様子を、水晶玉で女神エーニスックは淡々と鑑賞していた。


《確かにナッセさまは約束守りましたね》


 変態イルカは新婚初夜シーンに夢中してハァハァしている。


《なーんか釈然しない》

《魔鏡を増やせば、もっと増殖できますぜ》

《そういう問題じゃないでしょーが! 大体、魔鏡はそんなホイホイ作れんわ! こっちもプロレスごっこじゃー!》

《バッチこーい! 朝まで寝かせないぜ!》


 しかし女神は変態イルカの背中に乗って、その顎を両手で引っ張り上げて背中を反らしていく。

 そのままイルカの上半身をもぎ取ろうとする勢いだ。ぐぎぎ!


《そ、そのガチプロレスじゃない方で……。グホハッ!》


 今度は女神が垂直に立って、変態イルカを自分の延髄を支点に抱え、両手で頭と尾びれを下に引っ張っていく。タワーブ○ッジ!

 これも背中から真っ二つに折る勢いだ。ギリギリ……!


《確かに複製したアッセーの遺伝子ばらまいているのはいいけど、これじゃ妖精王ナッセの影響が及ばない。故に魔眼とか特殊能力が生まれたりはできなーい!》

《死ぬ死ぬ……グブボッ!》

《ただのヒトであるアッセーは他の貴族と変わらぬ素質。妖精王ナッセだからこそ底上げされて世界天上十傑クラスに到達し得た! だからこそ、その状態で繁殖する事に意味があんのよ────!!》


 変態イルカは泡を吹いて白目ひん向いている。

 しかし女神は心配するどころか、高く跳躍して逆さまに体勢を変えてイルカを下に激烈落下。

 確実に息の根を止める気概である。


《幸い、魔鏡も複製に限りがあるからいいとして》


 虫の息で痙攣する変態イルカを尻目に、うーんと思い悩む。

 問題は妖精王ナッセ。上位生命体へ成長しているせいか性欲が弱くなっている。他の転生者のように積極的にズッコンバッコンしないだろう。

 おまけに転生前のヤマミとの結婚を意識して自粛しているのだろう。

 せめてユミ、アルロー、マトキ、ローラルとズッコンバッコンして極レアを生み出して欲しい。

 そうすれば他の神々もGJ(ゴッドジェム)を差し出してくるだろう。


(ジェム)くれえええええええ!!!》


 女神は渇望のあまり空に向かって絶叫する。




 そんな折、薄暗い神殿のどこか広大な部屋で死神風の魔族キンルとロリ魔族ロッピが跪いている。

 その先には段差と階段の向こうのヴェールで覆われた意味深な黒幕の座。


《そうか……。魔王どもの娘が結婚したか……》

「ンフフッ! 魔鏡で魔族婚約をキレイに解決しちゃいましたねぇ」

「キャハハッ! 結婚バーゲンセールだーい!」


 ヴェールに覆われてて黒幕らしいシルエットが両目を輝かせている。


《これは厄介だ……》

「どうします? こうチョンと?」


 キンルは自分の首を手刀で斬る仕草をする。


《いや、その必要はない……。こちらで地上界を制圧する準備を整えておこう》

「それって魔族がかな~り弱体化するであろう七〇〇年後の予定でしたよね?」

《複製とはいえ、あのアッセーの遺伝子で魔族軍勢はそれなりに強化されるであろう。それでは人類が天下を取れない》

「そんなにですかね?」

「きゃはっ! さすが徹底とした人類至上主義者ですね~!」


 するとヴェールに映る黒幕のシルエットから六つの天使の翼を広げた。

 キンルは目を細めて「天使族の中でも最高階級である“熾天使(セラフ)”……」と呟く。


《人類だけが世界を支配する事こそが、私の悲願だ!》


 ヴェール越しから凄まじい威圧が圧してくる。

 周囲の神殿が軋むほどに強大なものと、キンルとロッピは汗をかく。


《その為にも魔族や獣人など亜人やモンスターを根絶せねばならぬ!!》

「人類だけの世界……」

「うひゃあ、なんて排他的な計画なんだ……」


 黒幕の六枚の羽がザワザワ不穏に揺らいでいる。まるで殺意に反応しているかのようだ。


《この女神エーニスック率いる“ジャスティスメシア”の使命!》


 女神の名を耳にして、キンルは怖気が走った。

 滅多に口にするものではない創造主の名前。まさか本人がそこにいるとは夢にも思わなかった。

 黒幕の正体がポロッと判明して戦慄を感じすにおれられない。




 大魔王ブレズアの前で、死神キンルとロッピはいろいろ報告していた。

 いわゆる二重スパイである。


「む……! 女神がそのような事を!?」

「はい。まさか世界の創造主さまが、そのような事を企んでいたとはね~」

「報告ご苦労。余も目を光らせておこう」


 王座で佇む大魔王ブレズアはあさっての方向へ視線を向ける。


「八〇〇年前が懐かしいな。余と世界を二分した世界大戦が今日のように思い出せるわ」

「大昔にそんな事があったんですねぇ」


 大勢の天使軍勢が地上制圧に向けて、上空から押し寄せる光景。

 それを前に若い大魔王ブレズアが大仰に構えて、世界を左右する決戦が始まった事が脳裏に蘇る。

 天使と魔族の絶えない大戦争は何十年にも及んだ。

 ……しかし、それでさえ天使勢の黒幕は一切姿を見せていなかった。


「ふっふっふ……! 本当に女神かはさておき、久々に面白くなってきそうだわ!」


 血が滾る思いで大魔王は不敵に笑んだ。

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