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68話「多重結婚式でござるの巻!!」

 魔界の教会────……。

 これは魔族が『女神エーニスック』を崇拝する為に、魔神官が信者に教典で教えて信心を高めていく場所らしい。

 なので宗派によっては黒か赤のローブで身に包む僧侶が多い。


 禍々しい形状の魔教会で、花吹雪が舞っている。


 なんと複製アッセーズと魔嫁ズと魔姫が整列を組んで奥ゆかしく教会へ入っていく。魔族の黒スーツと赤ウェディングドレスを着て並んでいる彼らは異様だ。

 それを祝福する家族や親戚などの関係者。

 大魔王ブレズアも魔王へルドラーも満面の笑顔で祝福し、魔嫁ズの家族も同様だ。


「うう……ううっ! これで余も満足じゃ! これで娘ミトンも行き遅れせずに済んだ」

「そうですなぁ……。魔王としてこれほど嬉しい日はあるまい」


 もちろんアッセーの家族も例外ではなかった。戸惑う両親。


「な、なんで魔族領の教会に出席してるんでしょうかね」

「知らない内に家族が増えてて、しかも多重結婚式と聞いて、もう驚き疲れてますわ」

「一応説明はしたんだがなぁ……」


 同じくオリジナルアッセーも同席してて、リッテ兄様と八人の兄嫁ズ(増えた)も同席。

 ユミもアルローもローラルもマトキもアッセーの隣で並んで座っている。

 何故かアルンデス王国のリヘーン王子様と王様、オダヤッカ王国のサウザン王様とアルテミユ&アルディト姉妹となんか知らん兄弟、龍人の長ゲキリンまでいる。

 呼ばれていないタマリン王妃や雲旅団(クラウド)もしれっと紛れ込んでいる。


《鏡の我も同席してていいんでしょうか?》

「いいんじゃねぇか? 複製アッセーズ生みの親だし」

《……照れますよ》


 なんと魔鏡までマトキの隣に置かれている。


 複製アッセーズは、アッセーの兄弟で実は隠し子として今日まで秘匿されていた事になっている。

 やはり妖精王アッセーだからと、みんな疑う事もせず納得していた。

 というわけで正式に家族として組み込まれて、めでたく魔族の嫁と結婚できたのである。


 魔神父に「一生を誓いますか」とかお決まりのセリフで、次々と複製アッセーズと魔嫁たちは指輪交換してキスしていく。

 そして夫婦となった二人は腕を組んで退場していく。


「いやぁ、丸く収まってめでたい」


 アッセーは満足した笑顔で拍手する。

 両親は「なんか魔族の親戚できちゃった……」と拍手しながら惑いの顔をしている。


「今度は私たちの出番ですね」

「いつでも結婚バッチこいなのです……」

「ねぇ……、一緒に家庭築きましょう」


 ドキドキ頬を赤らめているユミ、アルロー、マトキが流し目で言ってくる。

 できれば魔鏡さんに頑張ってもらって複製して欲しかったがなぁ。


「婚約する資格がないから引き下がるべきなんでしょうけどね……。私自身もどうしていいか分かりませんわ」


 問題はローラル。()悪徳令嬢。

 なんか最近女々しくなっていて、めんどくせぇ。


「ローラルみたいな美女なら、もっといい男と婚約できるんじゃねぇか?」

「アッセーさまと婚約したくないと言えばウソでしょうけど……、こう胸が締め付けられてどうしていいか分かりませんわ」

「あー……そう」


 なんか悲劇ヒロインみたくなっちゃって、めんどくせぇ。


「それならば、我が婚約致しましょうか?」


 なんと魔族のイケメンがスーツ姿で丁重に跪いて、ローラルの手にキスする。


「きゃっ!?」

「ん? 誰だおめぇ?」

「ああ。お初にお目にかかります。我は大魔王ブレズアさまの長兄、大魔王子コウマツでございます」


 大魔姫ミトンを男にしたかのような風貌だ。サラッと長い銀髪がなびく。


「コウマツさま……」

「ローラル」


 魔族のイケメン王子と悪役令嬢の恋愛劇みたいな感じで絵になるなと、アッセーは感慨深く思った。

 二人がしばし見つめ合う雰囲気で安心だ。


「我と婚約しよう。そして幸せになろう……」


 コウマツは爽やかな微笑みで、ローラルの心を射止めんとしてきたぞ。

 しかしローラルはアッセーへ一瞥するなり目を瞑る。

 キスを欲求してると勘違いして、コウマツは震えながら唇をチューにして徐々に伸ばしていく。そのギャグみたいなチューがローラルの唇に届く前にペチンと叩かれた。


「残念ながらアッセーさまと婚約できるよう、努力を努めたいのです。もう決めました。あなたのおかげで覚悟は決まりました」

「えっ!?」

「コウマツさま、ありがとうございます! 婚約破棄です! さようなら!」

「ガガ────ンッ!!」


 婚約破棄されたコウマツは大きく口を開けて、電撃が迸るほど絶大なショックを受けた。

 ローラルは吹っ切れたか、迷いない引き締まった顔をこちらへ向いて指差してきた。


「絶対諦めませんわ! 必ず貴方のハートを射止めてみせますわ!」

「えー……」


 コウマツは本当に恋していたのかシクシク泣き崩れていく。


「一世一代の婚約申請だったのに……」

「モテそうなのに??」

「そりゃ見た目ではモテたぞ。しかしながらゲームや漫画しか話せない事で、ことごとく婚約破棄されて引きこもるしかなかったんだあああああ!!」

「気持ちは分かるがな……」


 失恋のあまり絶叫する魔王子に、アッセーは同情する。

 すると大魔王ブレズアがズイとやってきた。ツノが生えている大柄なジジイで三つ目。見た目とは裏腹に凄まじい威圧が秘められている。

 すると頭を下げてきた。高圧的な姿とは裏腹に丁重だ。


「済まんな……。この魔王子は大魔姫とは違って武力も高くなく、内気な性格で、ゲームや漫画しか興味を持っていなくてな。なので将来を懸念していたのだ。我ながら子育てが下手だなと思い知っておる」

「それは大変でございますね……。大魔王さま」


 嘆かわしいと思い悩む大魔王に、アッセーは相づちを打つ。

 すると教会の壁が破砕し、一同は振り向く。入ってきたのはなんとカレンだ。

 不敵な笑みで大きなハンマーを肩に乗せている筋肉ムキムキの大女。


「だったらーァ! そのイケメン魔王子と婚約してやるーァ!!」

「えっ!? ちょっ……!」


 明らかに苦手意識を持った魔王子コウマツはドン引きして、後退りしている。

 すると大魔王のみならずアッセーや多数の人も揃って頭を下げて手を差し出す。


「「「「「どうぞ!!!」」」」」


 そのまま引きずられて泣き喚く魔王子は「嫌だあああ!! 助けてくれええええ!!」とカレンと一緒に遠のいていった。

 この後、ギシアン関係を持って婚約したらしいと連絡が来たのでひとまず安心。

 ご幸せに……。


「これにて一件落着でございまーす!」


 アッセーは満足げにお辞儀して、婚約バトルに幕を下ろした。

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