61話「魔王と魔姫の大ケンカ!!」
なんか魔王の娘が飛び入り参加してきて、父である魔王と言い争いを始めたぞ。
「この場にお呼びではない! いいからさっさと自室へ戻れ!」
「なんでじゃ! あの妖精王さまと婚約すれば、魔族勢力も増すというもの!」
「そういう問題ではない!」
「ええい! 我はもういい年じゃ! 可愛い娘を送り出す事ぐらいせよ!」
……正直諦めてマイシと戦った方がいいような気がしてきた。
大体ライバル関係だし。
「この魔姫ルビナスも器量よし! 妖精王さまの嫁にふさわしい以外にあるか!」
「許さん! それだけは許さーん!!」
イライラしてきた魔姫ルビナスは掌から灼熱の光球を生み出し、魔王へ投げつけて大爆発が広がる。
さらに二弾目をルビナスは放って、再度大爆発が広がる。
「ぬう! この父に手を出すとはーっ!!」
火炎を吹き飛ばし、マントを脱ぎ去ると、鎧のような全身が剥き出しにされた。
しかも右腕のガントレットみたいな部位から魔剣が生えてきたぞ。禍々しい装飾を備えた銀色に煌く刀身。
「この魔王ヘルドラーを本気にさせたら、どういう事になるか思い知るかっ!?」
「知るか! なら我も本気モードじゃ!!」
なんと魔姫ルビナスは全身が銀色に染まって反射光が煌く。
魔族とは思えない光のオーラが神々しく吹き荒れた。大地を揺るがすほどの戦闘力がビリビリ肌に伝わって来る。
対してヘルドラーは赤黒いオーラを全身から噴出し「獄炎気ッ!」と吠えたぞ。
「やべぇ!! おっぱじめるぞ!!」
アッセーは念力でローラルたちと、カレン以外の魔嫁ズを浮かせて、魔王城から脱出。
その瞬間、尋常ならざる衝撃波で魔王城の一部が破裂。粉々と破片が四散していく。
なおも魔王と魔姫は白熱した激戦を繰り広げていった。剣の軌跡が幾重も描き、銀の拳が残像を残すほど乱打を見舞う。
「「ぬうおおおおおおおおおおおッ!!」」
激突の連鎖がいくつも繰り出されて、嵐のような烈風が吹き荒れていって破壊が撒き散らされていく。
アッセーは森林を通り抜けて、近くの城下町へ降り立つ。
念力で浮かしてた魔嫁ズを降ろす。
「みんな、さっさと帰ってくれ! オレたちはもう行く!」
「え!? あ? ちょっ!」
「ええええ!?」
「そんなーっ!」
「ワオオオーン!!」
「触手プレイはいいんですか??」
「なの……!?」
「変幻自在のコスプレ変態プレイはーっ!?」
ドサクサ紛れに魔嫁ズを城下町に置いて、ローラル、アルロー、ユミ、マトキを連れて脱兎のごとく逃げ去った。
「待てーァ!!」
なんとカレンが追いかけてきていた!? ちぃ! めんどいやつめっ!
ハンマーを振り回して森林を薙ぎ散らしながら距離を詰めてくる。
戦ってもいいが、ローラルたちを抱えたままじゃやりにくい。ここは逃げの一手しかない。しかし追いつかれるのも時間の問題だ。
妖精王に変身して加速するのも手だが……。
ちょうど、深夜ながら魔族領の森林を突き進んでいた勇者たちがいた。
「明日には魔王城へつく。そして、この雷電勇者スバライが魔王を倒す!」
「そうだな。距離的に二五キロぐらいか。任せろ不屈戦士リーパが守る」
「そうですわね。この妖艶魔女ナマメの魔法が唸るわ」
「うむ。この守護神官タノモシーがいる限り、誰ひとり死なせはさせん!」
聖剣を腰に差している茶髪ロンゲの好青年勇者。
筋肉隆々で三メートル近くの戦士。色っぽい女魔法使い。寡黙なオジサマ神官。
なんか地響きが大きくなってきて警戒態勢を整えていく。
「むっ!?」
「あ! 助けてくれー!! 勇者さま、四天王カレン出たぞーっ!!」
アッセーたちは勇者たちと遭遇し、猛スピードで通り過ぎる。
噂の四天王カレンが狂気の笑みで飛び出してきたので、勇者たちは「四天王だ! 食い止めるぞ!」と勝手に阻んでくれた。
「ハッハーァ!! 勇者なぞ蹴散らしてやるーァ!!」
「四天王カレン覚悟ォォォォ!!」
「単騎できたのが貴様の運の尽きよ!!」
「私の魔法で焼き尽くしてあげるわっ!!」
「油断めされるな! コイツは多くの勇者を蹴散らした猛者である!」
どがーん!! 森林が広範囲で爆ぜるほど、勇者たちとカレンの激戦が開始された。
ふう、オレたち見た目はヒトだから、勇者たちにも疑われずに済んだな。
もし妖精王に変身していたら誤魔化せねーもんな。
ほどよく離れると一息をつく。向こうでドガーンバゴーン戦火が爆ぜているのが見える。
「女神さまに悪いけど、予想外のアクシデントじゃ仕方ないもんな」
「狙ったような気がしなくもないのです」
苦笑いしていると、ジト目のアルローが突っ込む。
「きひひ、助けていただいてありがとうなの」
「気にするな…………、ん?」
なんとダークエルフのチャーアーがいた。
アッセー、ローラル、ユミ、マトキは目を丸くする。
「「「ええええっ!?」」」
「つ、連れてきたのですかーっ!?」
「いやいやいや置いていったぞっ!?」
するとチャーアーはニンマリと笑む。
「さっきあたしを選ぶと言ったなの……。その瞬間、契りの誓約が成立したなの。左手を見るなの」
なんと左手の薬指の根っこに黒い紋様が浮かんでいた。
しかもチャーアーの左手にも同様の紋様があり、まるで見えない鎖に繋がれた感覚がした。
こすっても消えねぇ。
「もし、ウソでもみんなと付き合うとか言ってたら……?」
「同様に紋様が浮かんでてたなの」
「しかし……、追いついてたとはな」
「契りを結んだ者の数メートル範囲に伴侶が時空間転移されるので離れられないの。あたしと一蓮托生なのー」
やっべー! 一人を選んだだけマシか!
複数だったら、逃げてもいっぺんに転移してきて常時ハーレムを強いられてた!
「どうやって外すん?」
「生涯離れない重い誓約が外せると思うなの? ざーこざこ、もう観念するなのー」
きひひ、と小悪魔的な笑いするチャーアー。
一瞬慌てたが、冷静に考えてみると方法が浮かんできた。
アッセーはボッと妖精王に変身する。そんで……。
「ほい」
左手の紋様に指で触れると散り散りと剥がれて空中分解されていった。
転生前の出来事だが、ずっと前にヤマミが奴隷の刻印を剥がしてたのを思い出したので、真似してみたらできました。
「そんななの……」ガーン!
「いえーい!」




