60話「瀬戸際の嫁選び!?」
オーガ族のエアリル、アラクネのエリル、ラミアのロローマ、ウェアウルフのカミカ、アルラウネのバーナッツ、ダークエルフのチャーアー、サキュバスのジョレリア、世界天上十傑カレンが、水着っぽい露出度の高い薄布を着て横に整列していた。
「えっと……、こん中から一体を選べって事か?」
「何を言っておる? 誰も一体だけとは言っておらん。全員でも一体でも好きにいただけるぞ。まぁ女神さまは最低一体はもらっておけって話だがな」
「おいおい……」
まぁ、ズッコンバッコン推奨の女神さまなら言いそうだがよ。
「なぁ、魔族のみなさん。オレはベースがヒトだ。不満だと思う者は遠慮なく手を挙げてくれ。挙げた者は自由に帰っていい。咎めはしねぇ」
恐らく魔王が選りすぐりと引っ張ってきたのだから、不本意な魔族もいるだろう。
なんせ妖精王とはいえ、器はれきっとしたヒト。
……ただ、それでも懸念してはいる。待ってても挙げる人いないんだが?
「挙げるヤツはおらんと思うぞ。ここにいる誰もがアッセーと性交を望んでおるのだからな……」
「ヒトとでも?」
「今更だが、もはやアッセー殿はヒトの枠組みにもう入らぬ。人外と自覚を持て」
「うへぇ……」
チラッとローラル、アルロー、ユミ、マトキへ視線を移す。
「ダークエルフだけはやめるのです!」
アルローはいいんかい。
ユミとマトキはソワソワしてる。
ローラルは未だ感傷しているのか俯いたままだ。期待できない。
「そうそう、女神さまは妙な事を言っていたな。アッセーが拒否したらマイシをブチ込むって言っておったが?」
「げげ……!」
「知ってるのか?」
「世界をメチャメチャに破壊し尽くす激強な転生者で、悪いチート転生者抹殺する為に世界に送り出すイレイザー的な?」
「なんだとっ!?」
魔王は声を荒げる。
並んでいる魔族の嫁候補も竦む。世界が滅ぶか否か、瀬戸際のターニングポイントにされていると知って、一層緊張していく。
カレンは「アイツが来るなら戦ってみたーァ!」と好戦的に笑んでいる。
「尽くしますっ! 過酷なプレイでも、変態プレイでも、なんでも受け入れますからっ!」
「頑張ります! 貴方様が満足できるよう快楽の虜にしてみせます!」
「レープしてくれていいから!」
「ワオーン!! 病みつきになる獣人プレイをとくと味わせてみせましょう!」
「植物特有の触手プレイで、誰にも負けない快楽を約束します!」
「ロリコンって聞いたの! ぜひ選んでくれなのー!」
「私はサキュバスよ! 何度でもイケる快楽夢は、どんなプレイもどんなコスプレも実現ございます! 何度でも絶頂の快楽を味わえるのは他の種族では不可能です!」
「あたしはどっちでもいいーァ。でもまー、ワンナイトでヤるだけでも構わなーァ」
静かに待つだけだった魔族の嫁候補が必死になってくる。カレン以外。
確かに手を挙げる人おらんわな。
チラッとロリのダークエルフを見やる。
「どうせロリを選んで、嫁という名の仲間として連れて行くんだろうがな」
「いやぁ、オレはロリコンなのでチャーアーとエッチエロエロしたいんだぁ~。でへへ」
「初めて会ったばかりでアッセー殿を知らない部分はあるだろうが、これだけは分かる! 貴様はエッチしない! ロリコンだろうが、きっとロリには手を出さない! 貴様はそういうヤツだっ!」
「あ、分かる?」
思わずテヘペロした。
「ばかもーん!! 子作りしないと貴様も我も危ういのだぞ!」
「なんで、こんな下らない事で叱られにゃならんのだ……」
「極レアの転生者が遺伝子配れなかったら、女神さまの大損だからな?」
「妖精王は遺伝しないぞ!」
「知ってるわ。それでなくても才能やセンスが遺伝する。しかも魔眼も生まれる可能性もある」
女神さまとしては遺伝子を配って優秀な人類や魔族を増やして、より良い世界に育てたいのだろう。
しかもその中からアッセーに匹敵する極レアが生まれれば、他の神々にGJと引き換えに転生者として配れるのだ。
まるで競馬でいう種牡馬みたい。
「オオガが優秀な遺伝子配ってるんじゃないか!?」
「大半が殺されている! トラウマとなって自殺したり、中絶したりしてるんだ! オオガの子だからと迫害も絶えない! トータルで見たら完全マイナスになってるからな!?」
「意味ねぇじゃん!!」
「だからだっ! 頼みの綱が貴様しかないっ!」
さすがにアッセーも唸るほど悩む。
いっそ婚約トーナメントでも開いて、優勝したやつを嫁にするとか考えたりする。
「アッセー殿、いい提案がある」
「大体ロクなものじゃないと思うけど、なんだよ……?」
「今晩一人ずつ性交して、相性の良い嫁候補を加えるというのは? 子作りも嫁選びもできて一石二鳥だぞ?」
「却下」
「おまえ、本当に欲がないな」
なんか精力剤をテーブルにたくさん積んであるが、使わないからな?
オーガ族のエアリルは大柄だし目がアレだし嫌だ。
アラクネのエリルは下半身蜘蛛だから嫌だ。
ラミアのロローマは同じく下半身が蛇だから嫌だ。
ウェアウルフのカミカは完全人型狼だし嫌だ。
アルラウネのバーナッツは下半身植物だし嫌だ。
ダークエルフのチャーアーは幼いだけで、まぁマシ。
サキュバスのジョレリアはなんか嫌だ。
世界天上十傑カレンはムキムキで絶対に嫌だ。
……これがオレの感想である。そこまで性癖ねじ曲がってねぇ。
たぶん妖精王になっちまったから、ヒトほど性欲が強くないからかもしれんけど。
「ダークエルフのチャーアーだけいただこう」
「えーイヤなのですっ!」
「我慢してくれ。今晩チャーアーと付き合いたい(エッチするとは言っていない)」
魔王は「消去法で選んだな……」とジト目で見透かしていた。
「ちょっと待つのじゃー!!」
バタンと扉が開かれると、額から小さなツノが伸びていて、ウェーブがかかった赤髪ロング。緑肌で眉毛がない美女顔。背中に黒マント、チューブトップにパンツ、ニーソじみた長靴。
「我は魔王ヘルドラーの娘、魔姫ルビナスじゃ! 喜んで嫁候補に参加するわい!」
「おまえは呼んでいない。去れ」
「おのれ父上────ッ!!」
なんかめんどくさそうなのが追加で来やがったぞ……。帰っていいかな?




