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56話「あの時のリベンジ! オオガと対決!」

 アッセーは振り向かず「アルロー、マトキ、全力で防御結界を張って離れてくれ」と命令する。

 慌てて「はい」と結界がユミとローラル含めて丸く覆い、浮遊して離れていった。


「……ここからは大地が荒れるぞ」


 アッセーが背中を見せてオオガへと歩むアッセーに、アルローは息を呑む。

 殺意を漲らせる魔獣カッパであるオオガは不敵な笑みで、子猫を見下ろすかのように小柄のナッセを上から睨む。

 そしてナッセもまた太陽の剣(サンライトセイバー)を携えて向き合う。


「秋季大会『仮想対戦(バーチャルサバイバル)明治魔導聖域(メイジサンクチュアリ)』予選準決勝戦以来の戦いとなるな……!」

「ああ」

「だがな、ワシは今日まで忘れておらんぞ……!」


 恨みがましくビキビキ皮膚に血管が浮かび、血眼でナッセに歯軋りする。


「チーム戦とはいえ、妹のチササに手を出した挙句、大爆裂魔法で押し負けた事は屈辱ッ! ついに女神さまがこの因縁の戦いを用意してくれたッ! これで……遠慮なく貴様を叩き潰し、完全勝利に酔わせてもらうぞッ!!」

「悪いが、こっちは別件の理由で叩き伏せる」

「む……?」


 オオガにとっての因縁など気にせず、アッセーは闘志を燃やしている。


「準決勝戦前のお試しタイマンで感じられた脅威が、今のおまえから感じられない。……相当、この世界で好き勝手やってたそうだな」

「フッ!」


 アッセーを鼻で笑い、ジロリと遥か後方のローラル、アルロー、マトキ、ユミ女性陣を見やる。

 ニタリと醜悪な笑みを浮かべて舌でクチバシを舐めずる。


「まず貴様を血祭りにあげてから、後ろの女どもを陵辱して敗戦の溜飲を下げてやる!」

「そうやって多くの女性を地獄に突き落としたんだな。遠慮なく、この剣で裁かせてもらうぞ!」

「やってみろおおおおッ!!」


 そう吠えたオオガは大きく後ろへ跳躍し、着地と同時に大地を噴火させるかのように蹴ってマッハの突進。

 アッセーへ、肘の穴から水鉄砲を噴かせて超加速した張り手を放つ。


「ぬううおおおおおッ!! ストライク撃嵐ッ!!!」


 頭を大きな手で掴む勢いで突き出すが、アッセーは素早く真上へ飛ぶ。

 そのままオオガの張り手が大地を穿ち、大きなクレーターに穿って轟音とともに土砂と破片が巻き上げられていく。しかも広範囲に亀裂が四方八方と走って魔族領全域を震わせた。


「サンライト・フォ────ル!!」


 剣を振り下ろして流星の軌跡を描きながら、オオガの頭上へ一撃をかます。

 しかしオオガは左腕で防いでいた。

 それでも威力が強くてミシメシ食い込んでいく。


「グ……、ぬうんッ!!」


 大きな右手で小柄なアッセーを掴もうとするが、空中手裏剣を足場に素早くサイドステップで退かれてしまう。

 捕まれば終わりだと察しているからこその動き。


「チッ! 相変わらず、すばしっこい奴め!」


 アッセーは足裏から光の手裏剣を浮かせて、それを足場がわりに空中で跳べる。

 手裏剣は跳ねる際に砕かれる為、じっと留まれない。それでも空中で動き回れるアドバンテージは強い。小回りが利くアッセーに合ったスキルだ。


「サンライト・スラッシュ!!」


 間合いを離れた後、横薙ぎの遠距離斬撃をオオガの胴に炸裂。

 それに留まらず、アッセーは空中で跳ね踊り舞いながら連続でスラッシュを三発放ち、オオガの腰と腕と頭に直撃。

 それでも頑強な体で多少のダメージも構わずアッセーへと突撃し始めた。


「そんなもの効かぬわッ! サウザンド・ラッシュ乱嵐ッ!!」


 両肘の銃口からロケットのように水鉄砲を連射する事で、その超加速された張り手の超絶乱射が繰り出された。

 その数百発もの超高速張り手は、その余波だけで周囲の森林を粉々に散らしていく。

 しかしアッセーは太陽の剣(サンライトセイバー)を正眼に構えたまま、カッと気合いを漲らせる。


流星進撃(メテオラン)!! 四〇連星──ッ!!」


 大地を蹴って爆発を起こし、超加速してオオガへと一瞬連撃を繰り出す。

 その際にアッセーの背後に天の川が横切る夜景が浮かび上がり、剣戟が流星群のように流れる。

 互い強撃連撃が幾重に激突し、連鎖される衝撃波が周囲に撒き散らされて、地盤が捲れ上がり森林が薙ぎ散らされ、絶え間なく震撼が響いていく。


「おおおおッ!! 六〇連星────ッ!!」

「ぬおおおおお──ッ!!」


 マッハを超える連撃による激突が激しさを増す。


「一〇〇連星────────ッ!!」

「ぬおおおおおおおおおおおおおおおッ!!」


 大陸全域に振動が響き渡るほど、壮絶な大噴火が魔族領で噴き上げられて土砂が上空へ舞う。

 巻き上げられた大量の塵によって層の厚い暗雲となって、光珠の光を遮ってしまう。

 土砂混じりの雨が降り注ぎ始めた。



「……ほう、あの頃より腕を上げたか!」

「そっちこそ」


 森林地帯だったのが無残な荒野に変えられた地で、土砂降りの最中、オオガとアッセーは睨み合い。

 オオガは無傷なのに対し、アッセーは額からふた筋の血が垂れていた。


 そして先ほどの激突で、アッセーは瞬時にオオガの力量を推し量っていた。

 ……武力にして五〇万。

 以前は二〇万そこそこだったのに、相当腕を上げてる。こっちの三〇万じゃあ敵わないように見えっけどな。


「フッ! そろそろ妖精王に変身したらどうだ?」

「その必要はねぇかな」


 アッセーは不敵に笑む。オオガは怪訝に「なに……?」と唸る。


「以前のおまえは武の心を持っていて脅威だった。だが、やっぱりそれが感じられねぇ……。今やただの暴漢に成り下がった以上、変身するまでもないって事さ」


 剣の切っ先を突きつけた。

 逆鱗に触れたのか、オオガは更に魔獣オーラを全身から噴き上げて尋常ならざる威圧を漲らせた。

 それは大地を震撼させ続け、空の暗雲が唸りを上げる。


「前から思ってたが、テメーはイチイチ気に食わねぇ野郎だあああッ!!」


 大地を爆発させ、巨躯が猛スピードでアッセーへ圧し掛かるように肉薄した。

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