55話「世界天上十傑オオガの襲撃!」
ソコマンデ共和国内を横切る交易路には、検閲が済んだ運送商団が通り抜けている。
向こう側には魔族領へ続く大きな境界門がある。
やはり門番は魔族が担当しているようだ。馬車の商人に確認を取って通行許可を出している。
アッセーたちも門を潜る際に確認を取られた。
「ようこそいらっしゃいました妖精王さま。魔王城へ向かうにあたって、説明をさせていただきます」
魔族兵はヒトとは風貌が違い、肌が青かったり褐色だったりで耳が尖っていて鋭い目をしていてツノが生えている。体格も個体や種族ごとに大きく異なる。
ヒト種と比べて容姿に差異が大きい。しかし同種には寛容か、差別がヒト以上にあまりない。
「ヒトが奴隷か仲間か拘らず、モンスターは臭いや感知などで無差別に襲う場合があります。特に高レベルのモンスターはあなた様が同行していてもヒトを襲う可能性が高いです」
「そうか……」
追放パーティー視察の時のダンジョンで、自分が先頭にいたらモンスターが寄って来なかったりしてたが、その理由か。
ミノタウロスやブルードラゴンは魔族がよこしたと思うけど、レベル高いから普通に襲ってきてたな。
「それと魔族の中でも礼儀がなってない者も絡んでくると思いますが、モンスター同様倒して構いません。この場合は各々の責任という事になっております」
「ああ。分かった」
「ああ、それから警告はしておきます」
神妙な顔で魔族は深刻な雰囲気を匂わせてくる。
「世界天上十傑のオオガは、女と見れば無差別に襲ってきますので我々も手を焼いています。もしも遭遇したならば逃亡か防衛か可能な限り自分で対処をお願いします」
「女神さまはオオガを転生させたってたけど、問題になってんのか」
「はい」
なんかオオガの指名手配写真を見せてきた。
平常で魔獣カッパの姿のまま、魔王の命令も聞かず好き勝手やってるそう。
ヒトと魔族区別なく女であれば容赦なく強引な生殖行為をする。割と被害が大きく、できれば倒せるなら倒して欲しいと魔族内でも広がっている。
「繁殖するのにちょうどいいと女神さま仰ってたけどなぁ……」
「それが本当だとしたら女神さまを恨みます」
疲れた顔で魔族はそう言ってきた。
許可をもらうと「お気をつけてください」と丁寧に頭を下げてくれた。
門番を担当するにあたって、多くの種族と関わるから礼儀正しいのかもしれない。
「転生前じゃ、オオガはシスコンで妹やカレンにぶちのめされてたが、この異世界じゃ止めるやついないから乱暴者になってんか」
「知ってるのですか?」
「どういう関係なんですか?」
アルローとユミに聞かれたので、簡単な説明はした。
転生前の世界で創作士学校の大会で対戦した事があり、オオガの事を知ったのはその時、と。
門を潜ると、これまでの森林とは雰囲気が違うって分かる。
禍々しい植物がグネグネ生えている。まるで未開のジャングルへ入り込んだかのようだ。
ドクロ模様のキノコや、ヒトの顔にも見える木の幹が不気味に感じる。蠢く植物も余計拍車をかけている。
「な、なんなんですの……」
「ローラル引き返すなら今の内だぞ」
「ああ言っておいて退くなんて、貴族の名折れですわ」
交易路なら広いから安心できようが、魔王城を目指すので細々とした獣道へ行かなければならない。
あちこちで獣の声が響いてくる。
ユミは顔面真っ青でアッセーに張り付きながら歩いている。
「来る」
「来ます!」
アッセーと同時にマトキも警告した。感知できるようだ。
ガサガサと茂みが動きながら迫って来る。ミノタウロスが斧を振りかざして「ウガアアア!!」と襲いかかってきた。
同時に巨大なイノシシがサイのようなツノで突進しに来る。
「洗礼ってわけね。お臨むところでして!」
ローラルは踊り舞って扇を振るって、烈風の渦を巻いてミノタウロスを斬り刻む。
アルローが「水珠爆なのです!」と、無数の水玉を撃ちだしてトドメを刺した。
巨大なイノシシが急旋回して再び突進してくると、マトキは「光輝矢!!」を唱えて光の矢でグサグサ顔面に刺して頓挫させる。
「令嬢扇殺法・月光円輪舞!」
ローラルが扇を振り下ろして円を描くような斬撃がイノシシの体を通り抜けた。
イノシシが左右に分割して、爆散。
アッセーは「へー」と、意外に強い事に感心した。
処刑の時は素人っぽくボウガンで撃ってきてたけど、こんなにアタッカーなら普通に冒険者やっていけるな。
つーか、後付けで強くした感ががが。メタァ!
その後も、モンスターの襲撃が続いたがローラルの白兵戦、アルローとマトキの攻撃魔法で撃退していった。
特にマトキは聖女だけあって感知能力も優れていて、なおかつ瘴気や毒や虫などを遮断するバリアを張れている。
魔法において攻撃ならアルローで、防御ならマトキといった感じだ。
「とはいえ──……」
森林を吹き飛ばしながら、猛スピードでこちらへ襲撃しに来る。
巨大な威圧が席巻してきてローラル、ユミ、マトキ、アルローを竦み上がらせる。
「女あああああああああああ!!!!」
ローラルへとカッパの手が伸ばされると、アッセーは太陽を模した剣で弾く。
そしてギンと強く睨み返す。
その襲撃者は飛沫を上げながら足を止めて、こちらを見下ろす。
「オオガ、久しぶりだな」
「む……!? その剣! その顔つき! まさかナッセの転生者か……!?」
アッセーが睨み据える先に、大きな体格のカッパが仁王立ちしている。
捕まえられそうだったローラルは腰を抜かしてへたりこむ。
天と地ほどの力の差を感じさせるほど、圧倒的で攻撃的な威圧が圧迫してくるのだ。
「こいつはオレがやらなきゃな!」




