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50話「大司教トッパイヤーの実力!」

 アッセーが処刑されたというデタラメな新聞紙に黙ってられず、リッテとローラルがシーンジロ王国へカチコミしてきたぞ。

 しかし赤髪を逆立てた大男の大司教トッパイヤーがリッテとローラルに立ちはだかったのだ。


 トッパイヤーは床を蹴ってタイルが剥がれるほど爆ぜ、リッテとローラルに襲いかかる。

 まずリッテに火炎纏う拳で殴りつけるが、剣で防がれる。


「おらおらおらああああああ!!!」


 嵐のような拳の乱打を繰り出してきて、リッテとローラルは必死に防いだり回避したりしていった。

 すかさずトッパイヤーの蹴りがリッテの胸板を突く。


「ぐっ!」


 吹き飛びながらも宙返りで着地、屈みながら後ろへザザザッと滑っていく。

 ローラルも後ろへ飛んで間合いをとって、汗を垂らす。

 トッパイヤーは不敵な笑みで「ゴミなりに楽しませろよ?」と拳を鳴らす。




 ラブホみたいな、いかがわしいピンク溢れる寝室で複数の全裸女に囲まれたエッタバドはニヤリと笑む。

 我が家のように大神殿にそんな部屋を作っていたらしい。

 まさに欲望に忠実な男だ。


「ナオナオ……、大司教トッパイヤーは我が誇るアタッカー。彼は類希なる強靭な肉体で火炎のオーラを纏って、いかなる敵も確実に排除するのだ……」

「さすがは法王エッタバドさまの部下ですわ」

「ナオ──ッナオッナオッナオッナオッナオッナオッ!!」


 無理してる高笑いしながら女で囲みながら、再びパコパコーンし始めた。




 リッテは剣を構え「はああああ!!」と全身からオーラを漲らせて、トッパイヤーへ飛びかかる。

 トッパイヤーは腕で剣を防ぎ、ニヤッと笑う。

 相手が素手なのに切り傷すら負わせられない事に、リッテは焦燥。硬い。


「ゴミにしてはいい攻撃だ……」

「ぬかせっ!」


 リッテは無数の軌跡を描くような剣戟を放つが、トッパイヤーは両腕でことごとく防ぎきっていく。

 余裕で捌かれているようでリッテは「くっ!」と呻く。

 トッパイヤーの背後からローラルが扇を振るう。


「失礼しますわっ! 令嬢扇殺法・旋風剛乱刃っ!!」


 踊り舞う事で旋風を巻き起こしてトッパイヤーの背中を斬り刻んでいく。

 その連続攻撃によって、仰け反らされていくトッパイヤー。思ったより攻撃が強くて驚いているようだ。それでも斬撃すら打撃扱いのように切り傷すら負わない。

 その隙を突いて、リッテは渾身のオーラを込めた剣を横薙ぎに振るう。


「秘龍剣・極月蛟龍破ーッ!!」


 回り込むかのような曲線を描く長龍(ナーガ)がトッパイヤーの脇を噛み付く。

 すると強烈な斬撃が炸裂し、トッパイヤーは「がっ!」と僅かな血を吐いた。


「フィナーレでございますわっ!! 令嬢扇殺法・業火龍炎舞ーッ!!」


 上空へ舞ったローラルが扇を振り下ろして、灼熱の火炎渦を放ってトッパイヤーを爆炎で覆い尽くしていった。

 轟々燃え盛る火柱に、教徒たちは「ば……馬鹿な!」とおののく。

 リッテのそばに降り立つローラル。


「やったかしら……?」

「だといいが」




 しかし余裕そうに鼻で笑うエッタバドはワインをすする。

 ニセ聖女も含め、周囲の全裸女は満足そうな顔でグッタリしている。もはや彼の虜なのだ。


「大司教トッパイヤーに多少の攻撃など通用しない。ましてやヤツは炎属性無効スキルを持っているのだろう。自身で炎使ってるし、たぶん?」


 なんとかなるやろ精神で再びパコパコーンに興じていく。




 轟々燃え盛る火炎がようやく引いて、煙幕が流れていく。

 リッテとローラルは警戒して身構える。そして人影がゆっくりと近づいて来る。


「来ますわよ!!」

「くっ! それでもやらなきゃいけねぇッ!!」


 リッテがオーラの尾を引きながら天高く飛んだ。


「秘龍剣・激烈天龍破ーッ!!」


 急降下しながら必死の形相で剣を振り下ろすと、天空から長龍(ナーガ)が唸りを上げて強襲してくる。

 しかし煙幕から抜け出したトッパイヤーは全身火傷を負っていて「ぐああ……助けてくれぇ……」と辛そうによろめいていた。

 そのままリッテの必殺技をモロに喰らい、地面に叩きつけられた。ガガン!


「ゴハッ!」


 ワンバウンドして血を吐いて、うつ伏せで意識を失ってしまった。


「ん、あれ?」

「思いのほか簡単に倒せたみたいね」

「あっ……ああ……?」


 さっきまで強敵感を出してたのに、あっけなく沈んだ。

 特に倒れたふりしてるでもなく……。

 せっかく「やったか?」のフラグまで立っているのに、なんてザマだ。


「ああーっ!! そうかっ!!」

「な、何が分かった?」

「ここんところ数十年もぬるま湯に浸かったような贅沢な生活送ってたから、なまってしまったんだーっ!」

「なにーっ!!」

「そういや、特に訓練もせず偉そうにしてただけだったような……?」

「ああ。国を完全に乗っ取ったからと、楽して暮らしてたよな?」

「こりゃ敵わんやーい!!」


 蜘蛛の子を散らすように教徒は逃げていったぞ。

 リッテとローラルは怪訝に見つめ合った。



「なんだかなぁ……」


 アッセーは汗を垂らして、事の成り行きに呆れていた。

 本来ならトッパイヤーはリッテとローラルも苦戦するような強敵。これまで鍛錬を怠ってなければ相当強かっただろう。

 だが、聖女を追い出して数十年の間、たるんだ生活に浸ったせいで弱体化したのだ。


「あの大男、そんな弱かったんですか?」

「いや……、目測で武力五〇〇〇〇クラスだと思うけどさぁ、なまってて発揮しきれてねぇようだ。むしろ、今こそやつらに強襲かけるタイミングかもしれないな。あいつら数十年も贅沢な生活してて弱ってるみてーだし」

「これはチャンスかもっ!」

「おおお! なんか希望が湧いたです!」


 アッセーが解説し、穏健派の教徒が歓喜していく。


「こういうの見てると、鍛錬は怠らない方がいい例だと思い知らされるなぞ」

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