47話「シーンジロ王国の腐敗した情勢」
快晴の鈴によって敵愾心を吹き飛ばされた教徒は素っ頓狂になる。
「こんばんは。悪いけど話聞かせてもらっていいかな?」
「……こんなところで立ち話もなんですから、こちらへ」
「夜も遅いですしね」
二人の教徒は穏やかな顔で誘ってくれる。
初対面でこれは普通ありえないが、浄化の鈴はこれさえ可能にする。
「鈴を鳴らせば、全て解決しそうなのです」
アッセーは「う~ん」と悩ましく首を傾げる。
「聖域は想像以上に大人数だ。ちまちま下手に鳴らしたら内ゲバになってしまう恐れがある。ここの連中って極端だろ? 反聖職者ってだけでリンチだぞ?」
「ヒトはめんどくせーのです」
「本当にな」
もし“快晴の鈴”に制約がなかったら鳴らし放題やってたよ。そうじゃないから鳴らすタイミング見極めてる。
まぁ、これは企業秘密って事で。
他と遜色ない建物に着くと、ガチャリとドアを開けてくれる。
「今日はもう遅い。ここで泊まっていきなさい」
「食事がまだならスープを温めておくよ」
「ああ。すまねぇ、いただいておくかな」
ろうそくを灯したテーブルで、暖かいスープを啜って体が温まる。
すると一人の教徒が口を開いた。
「今の王国は……もはや独裁体制です」
「うむ。全てはエッタバドさまが法王になられてから、狂いだしたのです」
もう一人の教徒も席について話しだした。
数十年前、前の法王が病死してからエッタバドという熱心な教徒が法王の聖職についた。
すると豹変したように厳しい戒律を変えてきて、我ら下っ端の教徒は搾取されるようになった。
逆らおうもんなら、アッセーが地雷を踏んだ時のように反聖職者扱いとしてつるし上げて処刑するのだという。
その恐怖により、下っ端の教徒の誰も逆らいようがない。
「おかげで毎日食うのに苦労させられているわけだよ」
「しかも『金は人を狂わせる元凶だから、一定額を没収する』と難癖つけて搾取してくるんだ」
「ひでぇな……」
「えげつないのです」
「うん」
ユミは眠そうだが、置いてかれたくなくて必死に起きているようだった。うつらうつら、眠気と戦っている。
「宿屋もやつらが牛耳っていて、行方不明も多くなってきている」
「他の国が調査に来ても「ここは聖域」だの「反聖職者だったから」だので追い返している」
「やりたい放題だなぞ」
「ええ」
「全くですよ」
睡魔に苦戦しているユミのところまで歩き寄って、頭を撫でて落ち着かせる。
好きな人に撫でられる心地よさに負けて寝入ってしまう。
ユミに代わって席に座り、逆に太ももに乗せて胸に抱いてなだめる。
まるで子どもを寝かせるみたいな感じだ。
「たらしこむのが上手いのです」
「あのさぁ……」
二人の教徒は「ふふっ」と微笑む。
元から悪い人ではなく、押さえ付けられた方の教徒だから仕方ない。
「夕方頃の反聖職者はあなたたちですかな?」
「それは……」
「隠さんとも良い。変装してても、大体は察する。それに強硬派に賛同もできんからな」
「うむ。エッタバド強硬派と我ら穏健派が対立しているのでな」
「とはいえ、強硬派にはなにか強力なバックがあって、我らはひっそり隠れるしかないのだよ」
対立、と口にするが一方的に押されてて勝てない状況っぽい。
「一昨日にもヤサシーさんとシンミさんが捕まって公開処刑されてしもうてな……」
次々と探し出されて狩られている。
もはや穏健派は全滅の一途を辿るしかない状況だった。
「お主を見込んで、ある人に会ってもらいたい」
「明日の集会に連れていく」
「……分かった」
アッセーは神妙に頷く。
使われていない一室、もとい狩られた教徒の部屋だ。
それでアッセーたちは寝転がって夜を明かす。
妖精王に変身したままでは、ヒトの体が機能していなくて眠れないがユミを寝かせて考えに耽っていた。
しかも瞑想をすれば、睡眠を取らずとも器の心身をリフレッシュできていた。
アッセーは我ながら人間をやめてるなと自嘲した。
塔山から光珠が顔を出してきて朝日になっていく。
「おはようございます」
「疲れは取れましたかな?」
「おかげさまで」
アッセーたちは少ない朝食をいただき、昼頃に外を出て二人の教徒に連れられて別の建物へ入っていった。
何らかの連絡が言ってたのか、数十人の教徒がテーブルについていた。
二人の教徒は深く頭を下げる。すると迎えてくれる教徒も「いらっしゃい」と頭を下げてくる。
「こちらはナッセさんとユミ、アルローです」
「悪い人でございません」
するとリーダーらしき神父が微笑む。
「おお! 噂のアッセー殿ではないですか!」
「「「ええっ!?」」」
「ありゃ即バレ!?」
他の教徒もビックリして仰け反る。
もうアルンデス王国で起きたアッセー免罪事件は、この国にも聞き及んでいた。
なんでも天使っぽい上位生命体が収束させたとか。
「……なら隠す意味ねぇな。オレは妖精王アッセーだ」
「私はオダヤッカ王国を治めるサウザン王様の娘である、第六王子アルロー姫なのです」
「わたしはユミです……」
人見知りするユミはアッセーの腕にしがみついている。
「話は早い。こちらへ」
「はい」
なんと白いマントで頭をも隠した教徒が立ち上がった。そしてバサッとフード部分を脱いで頭をあらわにした。
ピンクの姫カット、慎ましい顔、そして胸が大きい。
「私は聖女の娘マトキです……」
俯き加減に名乗ってきた。
まさか本物の聖女がここに!?




