32話「悪徳貴族が独占するダンジョン!?」
世界最大のダンジョンだけあって、鉱山のように窪みを中心に、いくつもの出入り口があった。
問題なのは、その入口をそれぞれの貴族が管理している事だった。
アッセー、アルロー、ユミは他の冒険者と一緒に並んでダンジョン入場をしようとしてた時、受付場が入口前にあって契約を交わさないと入れないという仕組みだった。
「あー、みなさんの安全を保証すべきドクセー公爵様と契約を交わしてもらいたいのです」
受付場で、兵士を後方に執事が会釈してきた。
白いテーブルクロスの上には契約の紙切れと、腕輪。
「腕輪?」
「さよう、みなさまの安全の為です。これを装着していれば、いざという時にダンジョンを出れるように転移魔法陣がプログラムされています」
聞こえはいいが、こんな親切な腕輪が逆に怪しい。
「じゃあ入場料を払って、と……」
割と高めで元の世界だと五万円くらいか。
連日入場する冒険者は多いから、貴族様ガッポガッポなのは容易に想像できる。
「契約書は……」
一見、権利を奪うというような反感を買う内容ではない。
ただ、万が一行方不明になっても責任は負いません、というのが引っかかる。
それを百も承知で契約を交わし、腕輪を右手首にはめた。
「ダンジョンを出るまでは決して外れませんので、安心を」
……などと言っていたが、怪しいなぁ。
こうしてオレたちはダンジョンへ入場できた。洞窟のような感じだが、出入り口を潜れば、巨大な遺跡のような入場門を前に広大な空洞が広がっていた。
多くの冒険者がワイワイしていた。
「なるほどな……」
「なんなのです?」
「情報交換とパーティー編成の為に、しばらくここで留まる冒険者が多いな」
それだけ、この世界最大のダンジョンは難易度が高いんだろうか?
「よう、見ない顔だな。新米か?」
なんかチビで鼻が大きいオッサンがジュースを二本持ってきてる。
親身に「飲むか?」と手渡される。
「おお、くれるのか? ありがとう」
「ひひひ……! どうぞ」
ゴクゴクと飲み干した。
「バカめ! 全部飲んだなッ! そいつは即効の超強力下剤だー! ウンコまみれになりやがれー! わはははー!!」
しかし何も起きない…………。
悪辣な笑みを浮かべていたチビオッサンは、次第に怪訝になっていく。
アッセーは「あはは、何も起きねぇぞ。入れ忘れてるんじゃねぇか~?」と陽気に笑ってみせた。
怪訝なままチビオッサンはもう一つのジュースを一口飲んだ。グイッ!
ぐーぎゅるるるる……!
腹を抱えて、苦悶に歪んだ真っ青な顔になっていく。
「うっ、うぎゃああああああ────!!」
トイレを求めて必死に走り抜けていって、向こうでブリブリブリブボボボボッとえげつねェ排泄音と共に悪臭が漂った。
間に合わなかったらしい、とアッセーは苦笑い。
ユミは「大丈夫なんですか?」と恐る恐る聞いてくる。
「超強力な下剤か。生まれた時から効かないぜ。種族の事情でね……」
クールに薄ら笑みでカッコつけてみせる。
実際、妖精王に毒とか状態異常系が普通に効かないからな。
知ってて下剤入りジュース飲んだ。
「ほう。それは面白い」
今度は別の冒険者四人組が絡んできたぞ。
リーダーっぽいやつはそこイケメンで黒髪ロング。
「俺はリーダーであるロクックだ」
「おう! 俺様はギンボウだ!!」
筋肉隆々とした大男で金髪ツンツンで毛深い。
「よろしくね。わたしノダークよ」
細身で微ブスだがボディラインは相当なもの。黒服着てる。
「クリランだ……」
大柄な男で手術跡があちこちあるのでフランケンを連想させる。
「……パーティー加入?」
「よければだが、君らは初心者だろうから世話するのもやぶさかではないと思ってな」
リーダーであるロクックは冷静な顔で冷笑する。
オレは考えたふりして間を置く。
「ま、どんなのでもいいか。じゃあよろしくな」
「誰でもいいと言われているようで釈然としないが……、そんなわけでよろしくお願いしよう」
無防備に握手した。
あれだけ堂々と求めてくるのは、結構な器の持ち主だと感じた。
しかも四人とも刺してくるような気配を見せている。オレが危険なやつだったとしても即対応できるように警戒は怠ってないようだ。
かなりのベテランだ。
「俺たちは通称『雲旅団』だ。気ままに世界を旅して、狙った宝を手に入れるパーティーだ」
「なんか、聞いた事あるなぞ」
「えっ!?」
「あるのですか?」
元いた世界で週刊少年雑誌の漫画のキャラと結構似てるなと思った。
「ほう、俺様たちを知ってるか? だったら、そんな不遜な態度を改めた方がいいぜ?」
「いや『雲旅団』そのものは知らねぇ。スパイダー的な方のやつだよ」
「なんだと!?」
ギンボウがカッカする。
しかしロクックは手で制止する。不思議な事に短気そうなギンボウが大人しく引き下がる。
結構統率が取れてるようだ。
「これから知っていけばいいさ」
大胆不敵なロクック。さすがはリーダー張ってるだけある。
「そういや聞きたい事があるんだが、一ついいか?」
「何だ?」
「ロクックさんも『世界天上十傑』か?」
「……違うな。だが俺たちはそいつらには関与しない。できれば関わりたくない」
「そうか~。そうだよな……」
ギンボウはピクッと眉をはねて、殺意が膨れる。
「言っとくけどね『世界天上十傑』は、単騎で国を落とせるらしいわ。下手に手を出せば全滅確定だから」
今度はノダークが教えてくれる。親切な姉御だ。
「じゃあ龍人の長ゲキリンさんは知ってっか?」
「逆鱗??」
「人名? ……知らないわよ」
やっぱこいつら大した事ねぇ。
気配通り、普通に達人な冒険者って感じだ。そう思うと口が緩む。
もし裏切ってきたら、ぶっ倒せばいい。
「よし! 行くか!」
こうして『雲旅団』メンバーに加わって、世界最大のダンジョンへ探索しに行ったぞ。




