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19話「龍族の長ゲキリンの怒り!」

 アッセーはオダヤッカ王城を出る時、ユミを始め、二人の姉妹とアルローまで続いた。


「なんでついていくんだよ? 王族だろ?」

「このアルテミユ、殿方と一生を添い遂げたい為に覚悟を決めた次第」

「同じくアルディトも殿方と生涯を共にする覚悟」

「アルローも行くのですっ!」


 深いため息をついてアッセーは王様へ見やる。


「言っても聞かんのだ」

「っても重婚はダメなんじゃねぇのか?」


 すると王様も姉妹も首を傾げて「え? なんで?」と不思議がられた。


「身分の高い者は重婚が許されているのです。むしろオッケーですね」


 王様が微笑む。二人の姉妹もニッコリ。アルローは「なのです!」と手を振る。

 アッセーは「あ、そう……」とゲンナリ。

 ならば、と鋭く見据えて掌を突き出す。


「だが、お前らは婚約破棄だっ!!」

「「なんの! 婚約申請ですっ!!」」


 なにぃ! 必殺婚約破棄が通じないだと!?

 まさかの返し技!?


「……まぁいい。それから姉妹さん、防御魔法使えるのか?」

「アルテミユと呼び捨てて構いません。使えます」

「アルディトも同じく呼び捨て希望です。同じく使えます」

「え、アルローも使えるのですっ!」


 使えんかったらお払い箱にしようと思ってたのだが、姉妹さんはエルフの王族だけあって魔力は群を抜いて高い。

 まだレベルが低いユミが懸念だったが、任せてもいいだろう。


「連れてって行ってもいい」

「「おお!!」」


 明るい笑顔を見せる姉妹とアルロー。


「ただし条件がある」

「「なんと?」」

「ですかっ?」

「ああ。ユミはオレの副官。人間と蔑むべからず。オレだと思って守るように誓ってもらう。仲間に入ってもらう以上、オレがリーダーだからな。言う事は聞いてもらう」

「「もちろん!!」」

「当然なのですっ!」


 姉妹もアルローも二つ返事で受け入れてくれた。

 たぶん今は遠足する気分なのかもしれない。これからヤバい事になるかもしれないので、危険だが思い知ってもらおう。


「オレはコードネームとしてナッセを名乗る。だから様をつけるな。ナッセさんと呼べ」

「「なんと! 様と呼んではならないのですかっ!?」」

「そそそそそんなことできないのですっ!!!」


 アッセーは額に手を当ててため息。


「言ったろ? オレは冒険者。そしてパーティーを率いるリーダーだ。聞けなければ置いていく」

「「あああ!! ナッセさあああああん!! 置いてかないでえええ!!!」」

「ナッセさん置いてけぼりして欲しくないのですっ!」


 すがりつく姉妹とアルローうっとおしい。


「更にユミさん、とも呼べ。オレの副官だからな」

「「はいいい!」」

「なのです……」


 これでもかと厳しい条件を突きつけても、ついていきたい姉妹とアルロー。

 せっかく慣れぬ口調を使ってさえ、怖気ついてくれないのだ。


「……これよりナッセ隊、出発する!」

「「おおー!」」

「なのですっ!」


 アッセーはユミと手を繋いで、三姉妹を引き連れていった。




 モリンフェン森林地帯を抜けると、一層『塔山(タワー)』が大きく広がって見える。

 勇者たちは見上げた。

 上ほど雲が覆いかぶさっていって、頂上が知れない。


「登頂した人はいないらしいな」

「知るか。行くぞビッグボン」


 ぶっきらぼうに勇者は鉱山地帯へ踏み入れ、ビッグボン、フォレス、ブッチギが続く。

 森林地帯とは打って変わって草木が少なくなっており、無数の岩山と切り立った崖が多く見られる地帯。

 通れる通路は雑なものになっていく。あまり人通りがないせいか。


「こんな所に何用だ」


 起伏の激しい荒野で、厳かな長身の男が立ちはだかっていた。

 肌が青く、紋様が走っている。額から角が伸びている。耳が竜の翼のように見える。明らかに人間とは違う風貌。

 どこかゾクッと背筋が凍る雰囲気だ。


「貴様こそ何者だ? 俺は勇者キラギランだ」

「この地帯を守護している龍人の長ゲキリン。ここは貴様らヒトが来ていい所ではない」

「なんだと!?」


 龍人ゲキリンは拒絶する意向。勇者キラギランは一歩踏み出して一触即発だ。


「待て! ……勇者が済まない。しかし、ヤンバイ王国からの調査団が行方不明になったらしくて魔族かどうか確認しに来たんだ」

「調査団は我らの忠告を聞かず、鉱山を寄越せと強請ったから皆殺しさせてもらった。魔族はいない。気が済んだら帰れ」

「何様だ!!」


 勇者キラギランは聖剣を引き抜いた。


「皆殺しと聞いて見過ごせぬ! ビッグボン、フォレス、ブッチギ、行くぞ!!」

「失礼ながら外させていただく」


 なんとフォレスが離脱して、ゲキリンの方へ進んで振り向く。


「貴様! 裏切る気か!?」

「裏切るもなにも、ここはオダヤッカ王国の領地。その鉱山地帯を奪おうとしたヤンバイ王国が悪い。それに魔族ではなく龍人。それに『世界天上十傑』の一人であるゲキリンさまへ歯向かうなど私にはできない!」

「なんだと!?」


 憤るキラギラン、戸惑うビッグボン、少なからず理解するブッチギ。


「世界天上十傑だかなんだか知らねぇが、貴様を魔族として討伐してやる!!」

「ヒトは分をわきまえんな……」


 ゲキリンは怒りを漲らせ、瞬時にキラギランへ間合いを詰めオーラこもる拳を振るう。

 その尋常ならざる殺気が脳裏に叩きつけられる。

 反応する間もなく、キラギランの胸板に風穴があいた。ボッ!

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