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16話「オダヤッカ王族からの堅苦しい接待」

 泊まる宿を探しに散策していたら、オダヤッカ王国の姫さんであるアルローがエルフの代弁者のようにアッセーへ絡んできたのだった。

 金髪ツーサイドアップでロングを揺らすエルフの女の子。黄緑のドレスで花のアクセサリーがちらほら。

 豪勢に着飾る人間の王族と違った清楚な風貌だろう。


「いいから城へ帰れよ。オレたちはこれから泊まる宿探すんだからよ」

「はうっ!」


 アルローは飛び上がった。ブルブル震えだす。


「だ、だ、ダメなのですっ! 妖精王様が、その辺の宿に泊まられるなどと我が国として無礼の極みなのですっ! これは我が城へお招きいただくしかないのですーっ!」

「あ、ちょっ……!」


 アルローがアッセーの手首を握ると、杖を振り上げて床に魔法陣を描いて光の帯を噴き上げて転移していった。

 気づけば城内の大広間に着いていた。

 見渡せば灯るクリスタルがあちこちはめられている神秘的な装飾で、タイルや壁などは人間の城とは違う材質。あちこちで蛍のように光礫がフワフワ舞っている。まるで精霊界の城かと思わせられる。


「ようこそお越しくださり恐縮なのです。ぜひおもてなしを受けて、ゆっくりお泊まりになってくださいなのです」


 アルローが丁重な仕草でドレスを摘んで会釈。周囲の驚いているエルフもササッと会釈してくる。

 一緒に連れてこられたユミは戸惑うばかり。


「ここからまっすぐ階段を登られると、我が父と謁見できるのです。ご同行願いますなのです」


 明日に、と思ったけど不意打ちだなぁ。

 必死に「来て」アピールをし続けるアルローに折れて、一緒に階段へ登っていく。扉を開けて通路へ歩いていく。

 エルフオンリーなのか城内の人はアッセーを見かけるなり次々と会釈していく。

 まるで王族として来ているみたいな気分だ。

 王様への謁見の間の扉が開かれる。


「遥々我が国へお越しいただいた妖精王様と同行して参りましたなのです」


 花王冠をかぶった緑マントをはおる中年エルフ。こちらを見るなり、見開いていく。

 そして王様なのにアッセーへ跪いていく。


「む! おお……! 妖精王様……これは飛んだ無礼を申し訳ございません……。なにぞと」

「いいよ。畏まらなくても堅苦しいだけだぞ。オレは人間がベースで普通の冒険者だし」

「失礼ながらご進言していただきますが、そういう砕けた言い方は直されるがよろしいと思います。自分の立場を自覚なされて欲しい」

「えーめんどい」

「そんなご無体な……」


 なんか王様がギャグ涙で泣き出したんだが、オレは悪くないぞ。


「まだ人間の寿命が尽きていない。天寿を全うするまで、普通のヒトとして過ごしていく。まだ『三途界域(アケロン・エリア)』にも生活圏を移してないんだから自由にやらせてくれよ~。オレはまだ幼少期なんだろ?」

「もう『三途界域(アケロン・エリア)』などについてご理解なされておるのに……」

「第一、オレはクッキーさまの息子だし」

「まさか創世神の娘クッキーさまの!? あの方は型破りで砕けた性格と有名な……」

「もう会ったから帰らせていただきます。宿屋探さないと」

「ダメですぞっ!! 妖精王様、ここで泊まられていただきますぞ!」


 アルローと同様、王様は慌てて引き止めてくる。


「もし我が国がなんも招待もせず、宿に止まられては各国からの知名も地に落ちるもの」

「だからお誘いしてもらったのですっ!」

「失礼な行為とは思うが、アルローよ! よく引き止めてくれた! さもなければ白い目で見られたであろう!」


 サウザン王様は「でかした」とばかりにアルローをよしよし撫でる。


「我が娘アルローがご無礼をして申し訳ございません。ですがなにぞとご理解していただきたい」

「もうしわけないのです!」


 慌てながらも焦りながらも何度も頭を下げてくる。

 アッセーはウザいかなと思いつつ、こういう扱いこそが普通なのだろうかと疑心に駆られる。

 今まで妖精王って変身してパワーアップするみたいな認識してたし。



 晩飯は豪勢な料理でフルーツなどが多い。高級な肉を使っているのかすごく美味い。

 自然に感謝、という感じでエルフたちは丁寧に料理しているのが窺えた。

 妖精王様にもてなしするからに最高級の料理を惜しみなく出しているのかもしれない。


 ユミにも同じように出されてはいるが、周囲のエルフの目が怪訝な気配を窺わせていた。

 妖精王様の同行者として特別扱いしているが、鼻持ちならないって感じだろう。


「ご満足されると光栄でございます。突然な話で申し訳ないのですが、こちらへ」


 なんとササッと二人の美しい姫さまが王様の左右に参上してきた。

 純白のドレスに花飾り。金髪が輝くように艶が走る。そして柔らかい目を見せて美しい顔立ちを更に引き立たせていた。

 ドレスを摘んで会釈。アッセーは「あ、こんばんは」と頭を下げる。


 なんかドヨドヨしてたけど、知らんからな?

 偉そうに「うむ。よいよい苦しゅうないぞ」と言えばいいんだろうが……。


「我が長女である第二王子アルテミユ姫、そして第三王子次女のアルディト姫でございますぞ。第六王子アルロー姫はまだ幼いゆえ粗相させてしまったが……」

「我が妹をすみません。ですが、このアルテミユがご満足させましょう」

「同じくアルディトもご一緒に娶られてよろしいと思っております」


 まるで女神さまのような美しい風貌の姉妹。

 アルテミユは長い金髪ロングで巨乳、アルディトはウェーブがかかった金髪ロングで美乳。文句のつけようがない絶世の美女。ヒトの男なら喉から手が出るほどだろう。


「えー。アルローの方がとっつきやすいかな。面白い性格してるし」

「「「えええええええええっっ!!?」」」


 王様含め姉妹たちは目を丸くして飛び上がった。壁際で並んでいるエルフもビックリして竦んでいる。当のアルローもびっくり仰天。


「ろ、ロリコンだったのですかーっ!?」

「今は関係ないかな」


 だって二人の美女押しつけられても面倒だし。

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