79 夢現想余談 ◆◆◆ 鬼夫人5
人物紹介を兼ねた補足且つ息抜き回なので夢現想余談……余談!です!
書いたものの、公開するかどうかは寸前まで悩んでおりました。
本編の補足にはなるので、おずおずと投下でございます。実際に作中であった出来事かそれともただの妄想か……なんて感じで、さらりと笑い読んで頂ければ幸いです<(_ _)>
時折濁音交じりなのも御愛嬌って事で。
とある日の昼下がり。
場所は王宮の一室…そこに集ったのは学院時代からの友人達。
誰が言い出したか知らないが、その名も『鬼夫人5』
気心知れた面子だからだろうが、皆揃って淑女の仮面は何処かへ置き忘れてきたらしい。
「まったく…相変わらず抜けてると言うか……」
「うぅ……面目もないわ………」
第一声を放ったのは鬼夫人その2、パチュリー・ロージント。
ロージント公爵家のウッカーに、キーファー侯爵家から嫁いだ女性……つまりレヴァンの母親である。
対してちょっぴり呆れられているのは、鬼夫人その3、フィミリー王太子妃。
彼女の生家はキゾット伯爵家で、ラフィラスの母親である。
「まぁまぁ、フィミリーがアドリブに弱いのは今に始まった事じゃないし」
「否定は出来ないわね…」
宥めているのは鬼夫人その4、ミリア・ギアルギナ小公爵夫人。
夫はマーセル――ティルナスの同僚だ。
そして冷静に同意しているのは鬼夫人その5、ソフォナ・ゴゾム子爵夫人。
ワギヅ伯爵家から、ゴゾム子爵家に嫁いでいる。
ゴゾム子爵家は商会を所有しており、かなり裕福なので働く必要はないのだが、ソフォナはフィミリー付きの侍女として王宮に勤めていた。
「べネティが居たら、絶対反省文50枚の刑だったわ……」
ぶつぶつと零すパチュリーの言葉の中に出てきた『ベネティ』……彼女のフルネームはベネティ・ザッタニフ。
マグノリア公爵家の令嬢として生まれ、隣国ネデルミスのザッタニフ公爵家に嫁いでいる為、現在ここにはいない。
いないが……この鬼夫人達の不動の大ボスで、永遠の鬼夫人その1である。
「ほんと…どうして逃がすかなぁ……ティリエラ様の御孫様なんでしょう?
会いたかったわ。私達の太陽、憧れのティリエラ様!! その御孫様よ!!
その上うちのレヴァンが初めて気に入った令嬢みたいなのよねぇ……ねぇ、うちで貰っても良い?」
「そ、それは……」
パチュリーの勢いに、フィミリーはたじたじである。
「まぁまぁ、パチュリーも落ち着いて、ねぇ?
うちの旦那様が言ってたけど、とっても素敵なレディらしいわぁ。うふふ。
でもぉ、パチュリーの所にしても、フィミリーの所にしても、説得が大変じゃぁないのぉ?
傷跡に後遺症…だものねぇ…」
ミリアが萎れつつ口にした言葉に、パチュリーはふんすと鼻息を荒くした。
「うちは大丈夫!
お義父様は静観の構えに見えるけど、あれはかなり気に入ってると踏んでるのよね。ウッカーには口出しさせる気なんて欠片もないし、問題なんてなっしんぐよ!
お義母様が動かないのが気になるけど、何よりレヴァンが気に入った令嬢なのよ!
傷や軽い後遺症程度で騒ぐなんて古臭いわ~。
ネデルミスでの事は学校経由で聞いてはいたんだけど、女性不信……って男子もだったかしら。まー不信になるわよねーって感じだったし、実を言うとあの子に結婚は無理かもって思ってたのよ。しかも最悪の相手みたいだったし…。
それなのに!! キャーキャー♪ ロマンスよ!」
実の息子の話でここまで盛り上がれるのは一種の才能か……。
「その野次馬根性、ひっこめないと息子君に嫌われるよ」
「う……」
どうやら一番冷静なのは侍女服に身を包んでいるソフォナのようだ。
「でもぉ…なんでそんな中途半端な聞き方しちゃったのぉ?」
今にも泣きそうになっているフィミリーに、ミリアが優しく訊ねる。
「緊張するとフィミリーは顔がすんごく怖くなるし…。
なにより自分が想定したパターン以外の事態になると、途端にポンコツになるから、変に想定して臨まないように、って…一応は注意しといたんだけどね…。
でも出た言葉が『婚約を望みますか?』だけだったって聞いた時は、思わず天を仰いでしまったわよ」
「沢山端折っちゃったのねぇ」
訊ねられたフィミリーに代わって話し出したのはソフォナ。
そしてミリアの言葉は何の慰めにもならず、フィミリーはおいおいと泣き出した。
「だって~~~。
だって……王子に公子が揃って熱望してるのよ?
女の子なら喜んでくれるって思うじゃない!?
なのに『望まない』って言われた上に、丁重且つ早々に部屋からも追い出されて…………更にはトンズラされるだなんて……うわぁぁぁぁん」
「幼い令嬢に気遣われてんじゃん……情けない…。
で、実際どうなのよ?」
パチュリーが、泣き出してしまったフィミリーに肩を竦め、ソフォナの方へ顔を向けた。
「どうって?」
「だ~か~ら~、王は置いといて、フィス君本人と王太子殿下はどう考えてんのよ?
ま、うちとしては王家が手放してくれるってんなら、時期を待って直ぐにでも掻っ攫いに動くけど」
パチュリーの明け透けな問いに、ソフォナは溜息を一つ落とした。
「ん~……私から見た印象で良いの?」
うんうんと頷くパチュリーとミリア。
「そうねぇ…王子クンは完堕ちかなぁ」
どこからともなく『おおぅ』と重低音が響く。
「けれど王太子は……昔っから真面目な石頭だし、難しいかも…。
正直言って、医師の話では後遺症と言っても、日常の軽い動作なら何とかなるだろうって聞いたし、傷跡なんてドレスで隠れちゃうんだから問題ないと思う。
王子クンにしろ公子クンにしろ、やっぱり中身が伴う人物って言うのは一番重要な条件でしょ?
その上本人達も希望してるってんなら、反対する要素はないと思うんだけどねぇ」
そこへパチュリーが突っ込む。
「でもよ? 王子君、あのアッパラパーピンクにぞっこんだったんじゃなかった?」
「あぁ、あれね。
まぁある意味『男爵令嬢の下剋上』だから、下級使用人達が面白おかしく囃し立ててたってのもあるんだけど、なんというか……王がフィミリーも王太子も近付けないようにしてたから、私から見ると一種の刷り込みというか…代替だった…の、かも?」
「あ~……なるほど、ね…」
今度はソフォナの方が問いかける。
「とりあえず、ウィスティリス嬢争奪戦は、パチュリーん所に軍配?」
「ま、まっでぇぇぇぇ~~~」
涙声でフィミリーが待ったをかけた。
「ヒグ…う、うちのフィス…だって、望んで…んの!
ぅぅ、スン…やっと…やっとピンクがいなぐなっだのに”………うわぁぁぁん」
「「「………」」…あ~……そーねー……」
そんな鬼夫人達の集いがあったとかなかったとか……。
ここまでお読みいただき本当にありがとうございます。
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