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突然現れて、賊の腕から鮮やかに子供を救出する……紛う事なき…子供。
しかも一瞬少年のように見えるが、間違いなく女の子…。
ラフィラスとレヴァン、そしてヨナスもその光景に唖然とするばかりだ。
その中で護衛を任務としている騎士ヨナスは、流石と言えるだろう。
直ぐに気を取り直し、エリルシアが後ろ手に引き渡そうとしている子供を受け取った。
「……感謝します」
言葉の空白は、後れを取った事に対す不甲斐無さか、それとも他の感情だろうか…。
ヨナスの声が切っ掛けで、ラフィラスも放心状態から立ち直った。
「どうしてこんな場所に…」
「えっと……偶々…?」
何と言うか…ラフィラスは超絶鈍感クンなのか、それとも単に大物だったりするだけなのか……どこからどう見ても緊迫の場面だと言うのに、いつもと変わらぬ様子で口を開きかけている。
だが今は、悠長に喋っている場合ではないので、手で制しておく。
レヴァンの方はと言うと、パニックになっている感じはなく、何処か呆然としているように見えるので、急に動き出したりする心配はなさそうだ。
そこへザザッと砂交じりの地面を乱暴に踏み付ける、複数の靴音が近づいてくる。
エリルシアはヨナスに引き渡した子供から手を放し、先手必勝とばかりにすぐさま臨戦態勢に戻った。
音の方向を確認し、曲がり角に身を顰めるまで一瞬だ。
「なっ!!??」
靴音の主達……覆面男達が慌てて駆け込んできて、愕然と足を止める。
もしかすると子供を盾にした覆面男が、その場に居る事自体が想定外だったのかもしれない。
そんな彼等の後方には、ローブを着込んだ仲間も駆けつけてきていたが、少し距離があるので、此処に到着するのは時間差になりそうだ。
「てめぇ…何してやがんだっ!!!
勝手な事しやがって!!」
一番先頭の覆面男が怒声を上げた。
倒れたままの覆面は、差し詰め、功を焦った小物と言った所だろうか…。
その小物の方は微かに呻きながらも、まだ立ち上がる事さえ出来ないで地面とお友達状態のままである。
そんな無防備とも言える隙を、見逃すエリルシアではなかった。
魔物退治なんて、一瞬の油断が命取りの連続なのだから。
身を潜めていた曲がり角から、男達の足を引っかける。体勢を崩す覆面達の顔めがけて地面の砂を引っ掴み、勢いよく投げつけた。
1回2回と投げつけ、丁度よく転んでくれた者には蹴りを一発。
本当は……剣を拾ったのだし、腕の腱を切るくらいの事はしておきたいのが本音だが、如何せんエリルシアには重すぎた。
折角魔法が使えるようになったのだから、パパッと筋力強化でも出来れば格好がつくのだろうが、残念ながら補助系はさっぱりのままである。
その上、相変わらず魔力が引っ掛かる感じがして、攻撃系でさえ発動まですんなりとはいかない。
酷いと途中で霧散してしまうような状態だ。
王宮滞在中でおおっぴらに練習も検証も出来ないのだから、当然と言えば当然であるが、剣を振るえなかった事は反対に幸いだったかもしれない。
腱を切るだけだとしても、人間に刃を向ける事に変わりはない。
そんな感覚なんて、出来る事なら一生知りたくないモノだ。
そんなこんなで無力化は酷く不完全で不安しかないが、少しでも数を減らすしか手がない。
地面に伏せたアーミュを押さえつけていた覆面男も、微かに届く騒ぎに良くない空気を感じ取ったのか、嗄れ声のローブ男が慌てて掛けて行った方向に顔を向けた。
その瞬間、思わずと言った感じで覆面男が腰を浮かせる。
アーミュの目が、男の方へと向いた。
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